スズキ アルトの稀少車でレトロを味わうネオクラシックカーライフ

Romiさんは80年代末から90年代前半に販売されていたクルマ“ネオクラシックカー”を愛してやまないクルマ好き。そんな彼女が念願叶って手に入れたのがスズキ アルトスライドスリム。

現在の中古車市場ではなかなか見られないクルマだからこそ、現代のクルマとはまた違った良さがあります。「このクルマは私が最後のオーナーになりたい」と語る、Romiさん×アルトのお話です。

――現在のRomiさんはアルトスライドスリムに乗られていますが、これまではどんなクルマに乗ってきましたか?

最初はスズキ セルボですね。その後にアルトハッスル、3台目に今のアルトスライドスリムにしました。

――ネオクラシックカーがお好きということですが、興味を持ったキッカケは?

小さいころからクルマが好きだったんですよね。多分、父や父方のおじさんの影響かな?とも思うんですが、夏休みに祖父母の家へ帰省すると、本棚に大量のカーグラフィックが置いてある家だったんですよ。

それを何気なく見ていたんですが、私の小さいころだと90年代初頭くらいのが多くて、その中に掲載されているクルマの広告が印象的でした。

浅香唯さんや当時のアイドルがクルマの広告に出ているのを見て「クルマっていいな、カッコイイな」みたいな憧れが芽生えたのかな?って思います。

――最初のセルボもそうですが、ネオクラシックカーは結構昔のクルマなので手に入れるのは大変だったのでは?

そうですね。壊れたらどうしよう、という不安はあったんですが、セルボの時は自宅から行ける範囲の中古車屋さんで販売されていました。実車を見て一度は保留にしたものの、「私がここで乗らなかったら、また同じクルマに乗れるとは限らない」と思って、次にお店に行った時に「買います」と決めました。

――そういう感じでアルト スライドスリムも購入されたのでしょうか?

通勤にセルボを愛用していたんですが、現状のまま購入したこともあって故障や不具合が続いていて。その頃からアルトスライドスリムを狙っていたので、セルボを買ったお店に探してもらいました。ただ、台数が多いクルマではないので、探すのはかなり困難だったんですよね。

でも通勤用にクルマは必要だったので、お店にあったアルトハッスルを2台目に選びました。それから2年経ったときに、もう一度アルトスライドスリムを探してもらったら、運良く見つかって。

この時も迷ったんですが、セルボの時みたいに「ここで乗らなかったら後悔する」と思って購入しました。

――2年越しで出会えたのですね。そこまでアルトスライドスリムにこだわった理由は?

このクルマを好きになったキッカケは正直、はっきりとは覚えていないんですよ。

ただ子供のころ、ミニカーでこのクルマのモデルを見た時にすごい衝撃を受けたんですよね。それで親に買ってもらって今でも大切に持っています。ドアの開き方が面白くて印象に残っていたんでしょうね。

だんだん大人になっていくにつれて、アルトスライドスリムのコンセプトが「女性がスカートを履いていても運転しやすいクルマ」というコンセプトがあったことを知って、ぜひ乗ってみたいなと。そういう気持ちがずっと残っていたというのが理由だと思います。

――中古車として見た時にアルトスライドスリムの状態はどうでしたか?

正直、あまりいい状態ではなかったと思います。ただ、古いクルマなのであちこち手を入れないとダメということはわかっていたし、塗装が劣化したところもあるからオールペンしてということは考えていました。

台数そのものがないクルマだから、手に入れることが先決という感じでしたね。

――もともとリペアしてから乗るという考えだったとは思いますが……修理が必要となると途中で嫌気がさすということはなかったですか?

古いクルマに乗るからそれは仕方ないかなって思いました。セルボやアルトハッスルの時も、走行中に止まってしまって大変でしたが、私はこういうクルマが好きで乗っているので修理がつきものだ、と慣れてしまったところがあるんだと思います。

こういう感覚はセルボやアルトハッスルに鍛えてもらったのかもしれませんね(笑)。

――念願叶って2年越しに手に入れたと思いますが、納車の日に何を感じましたか?

感無量でしたね。もともとバックヤードで10年くらい放置されたクルマだったので、リペアする前のベースの状態を見せてもらったんですが、そこでもう嬉しかったし、納車されて自分でエンジンかけた時は「絶対手放したくないな」と思いました。

最初のクルマのセルボもいいクルマだったので、「私で乗り潰すのではなく、私の後には大事にしてくれる人に乗ってほしいな」と思ったのですが、このクルマに関しては「私が最後のオーナーになりたい」と思ったし、このクルマを維持するためなら仕事とかお金の面とかあらゆることを頑張ろうと思えました。

――早速運転されたと思いますが、走ってみての第一印象はどうでしたか?

セルボもアルトハッスルもAT車だったんですが、このアルトスライドスリムはMT車なんです。もともとはAT車でしたが、MT車に乗りたいからミッションを載せ替えてもらいました。

だから最初はMT車の運転に慣れるのが大変でしたね(笑)。半クラの感覚とか思い出すとか合流の時にシフトダウンするとか、なかなか慣れなくて…最初のころはかなり練習していました。

――運転に慣れてからはお出かけの頻度って増えました?

増えましたね。前は「壊れたらどうしよう」という不安の方が強くてなかなか遠出しなかったんですが、今はあちこち出かけています。

というのも、インスタグラムを始めたことが大きかったかもしれません。それでフォロワーさんからイベントに誘ってもらったり、ツーリングに行ったりすることが増えました。

――ご自身もイベントに参加されるのって初めてかなと思いますが、かなり緊張したのでは?

当日に会場にいければOK、という感じのイベントでしたが、最初行った時は刺激を受けましたね。

私のクルマは周りではあまり見かけないと思うんですが、見た目はフツーのアルトと同じだから街中であまり声をかけられることはないんです。でもオフ会に行くと「アルトスライドスリムの実車を初めて見た」みたいな感じで反響がありました。

クルマ好きな人たちからそういうリアクションをもらえると嬉しいですね。これを機にインスタグラムで仲良くなった人やスライドスリムオーナー同士で繋がった人もいます。クルマ好きの女性とはなかなか出会えなかったからうれしかったです。

――そうした方々と出かけるドライブが一番印象深いですか?

ドライブでいうと、年に1回、私の友人がやっている町家を改装したカフェに行くんですが、それが印象深いですね。

友人にも会いに行けるし、店舗をバックにクルマと写真も撮れて、本当に楽しいドライブになっています。

――それだけ気に入っているアルトスライドスリムですが、特に気に入っているポイントは?

スライドドアと回転ドライバーズシートですね。このクルマならではのオンリーワンなものですし、女性がより乗り降りしやすいというクルマは後にも先にもこのクルマにしかないことだと思うんですよ。

多分回転シートって今だと福祉車両が多いですよね? これにスライドドアが付いているという個性が魅力です。

――ネオクラシックカーが好きだからこその見どころですが、Romiさんが思うネオクラシックカーの魅力とは?

もともと古いクルマが好きで、最初はスバル360やキャロル360に乗りたいと思っていましたが、今の時代だとさすがに普段使いはしづらいクルマで。ある程度普段使いできるクルマでこうしたレトロなものを求めると、私はネオクラシックにたどり着いたんです。

あと、ネオクラシックカーってクルマが近代化している過渡期のクルマなので、当時の景気を反映する挑戦的な装備やデザインが見られるのでそれが魅力に映ります。

ちょうど時代的に男女雇用機会均等法が制定されたこともあってか、女性向けになったクルマが増えてきた時期で、よりこのクルマに惹かれたというところがあります。

――かなり手を加えられていますが、今後はここをリペアしたい、などの予定は?

10年置きっぱなしにされていたクルマだから、見た目はきれいでも劣化が進んでいるところが多いので、そこはしっかり直していきたいです。例えばスライドドアにイージークローザーが付いているのですが、それも壊れたままだから直したいですね。

カスタムとは関係ないですが、このクルマでもっと大きめのイベントに参加したいという思いはあります。

――では、そんなアルトスライドスリムってRomiさんにとってどんな存在ですか?

一言でいうのは難しいですが、家族でもあり相棒でもあり恋人でもあり……その時その時で私の想いというかクルマの表情が変わるんですよね。

いつもそばにいてくれるし、愛おしくも思う時があるし……それをひっくるめると「大切なモノ」というんですかね? だからこそ最後までこのクルマとは添い遂げたいですね。

今ではなかなか手に入らないアルトスライドスリムを所有し、オールペンまでして新品同様に仕上げて乗っているRomiさん。このクルマに乗っていると当時の雰囲気や女性をメインにしたコンセプトが感じられるなど、ネオクラシックカーならではの奥深さを味わえるそうです。

今後もこのクルマを手放したくないということで、いつまでも楽しいカーライフを過ごせるようお祈りします!

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Romiさん

(文:福嶌弘)

MORIZO on the Road