いつでも気軽に走れるトゥデイはまるで「自分にピッタリの運動靴」
ホイールキャップを4WD式のモノに変え、窓枠はブラックに塗装。ほとんどフルノーマルの95年式ホンダ トゥデイ(JW3)に乗っているのは、高野さんは27歳。
マイカーとして迎えてから半年が経ち、走行距離は早くも1万キロを突破したという。
幼少期から大のクルマ好きで、気付くとネオクラシックカーが好きだったという彼が、トゥデイを選んだ理由は何だったのでしょうか。
今回は高野さん×ホンダ トゥデイのお話です。
――高野さんはこれまで、どういうクルマに乗られてきたんですか?
大学生だった頃、97年式のスズキのセルボ モードという軽自動車に3年くらい乗っていました。その後事故に遭ってしまい、日産のマイクラC+Cというイギリス生まれのクルマに乗り換え、その次が今のトゥデイになります。
――コンパクトカーサイズのクルマがお好きという印象を受けますが、どうですか?
昔からハッチバックのコンパクトカーが好きで…。というのも、まだ小さかった頃、親の仕事の関係でミラノに行く機会が何度もあり、その時に街中で停まっていたクルマが、ハッチバックの小さいクルマばかりだったんですよ。子供ながらにすごく素敵だなって感じて、今も尚好きなんですよね。
――マイクラからトゥデイに乗り換えるきっかけは何だったんでしょうか?
元々、美術大学に通っていたんですけど、4年生の時に病気になり、やむを得ず中退しなくてはいけなくなってしまって。その後、やっぱり大学に戻りたいと思うようになると同時に、そのために学費の確保をしないといけなくなったんです。それで、軽自動車に乗り換えようと思ったのですが、なかなか良いクルマに出会えずで…。
当時の予算は25万円くらいで探していたのですが、トゥデイは50万円くらい出さないと買えないだろうなって、半分諦めていたんですよ。そんな中、何となくネットで中古車を調べていたところ、たまたま綺麗なトゥデイが25万円で売られていたんです。「これは良いものを見つけた!」と思い、すぐにそのオーナーさんへメッセージを送りました。
――その後すぐにオーナーさんの所へ見に行ったんですか?
見つけた次の日くらいに、実物を見せてもらえることになって、見た瞬間に即決しました(笑)。試乗もさせてもらったんですが、トゥデイが初めてのMT車だったので「運転の練習用としてもすごく良いな」と思ったんです。
――そもそも、高野さんがトゥデイを知ったきっかけというか、乗りたいと思ったきっかけって何だったんですか?
初めてトゥデイを見たのが小学生の時でした。初恋の人の家のクルマが丸目のトゥデイだったんです。それを見て小学生ながらに、小さくて素敵なクルマだなってずっと思っていました。多分その時から、潜在意識の中にずっとトゥデイがあったのかなと思います。
――トゥデイをマイカー候補として意識し出したのはいつ頃ですか?
CCG(カーシティガイド)っていう、美大出身の人が運営するカーメディアがあるんですが、メンバーが乗っていたホンダのシティがTSUTAYAで展示されているのを見たんです。その時、とても魅力的に見えたんですよね。「だったらトゥデイもイケてるに違いない」って思って(笑)。
あと、当時友人がトゥデイに乗っていたのを見て「やっぱり可愛いらしいクルマだな」と思っていたんです。今のこの時代にトゥデイに乗るのってめちゃくちゃ良いなっていう、憧れを少し抱き始めたきっかけでもありました。
――高野さんはトゥデイのどこに1番惹かれたんですか?
ワンボックスなのかツーボックスなのか、絶妙なシルエットがなかなか他のクルマにはなくて、そこに愛おしさを感じたんですよね。あと、4ナンバーなので維持費も安いんですよ。タイヤが12インチで、オイルの量も少なくて済むという点もまた良いなと思って。
マイクラに乗っていた時、維持費が少し高いなと思っていたのもあって、トゥデイは軽商用車で荷物もたくさん入るし、可愛らしいフォルムで、経済的にも良いっていう。まさに自分にとってパーフェクトなクルマだったんです。というか当時は、まさか自分がトゥデイに乗れるとは思ってなかったです。
――半ば諦めていた中、トゥデイを見つけられたんですね!納車された時のことは、覚えてますか?お聞きしたいです!
納車された時は「うわっ!」って言葉にならない感じでした(笑)。白く輝いて見えたというか、思っていたより本当に綺麗だったんですよね。同時に、今後巡り会えないだろうなと思い「もうこの子しかない」と自分の中で気分が高まっていました。
――初めてトゥデイに乗った時はどう感じましたか?
まず、セルボ モードに比べてアイポイントが低いなっていう印象でしたね。
あとは、初めてのMT車だったのもあり、少し不安な部分もあったので、とりあえず練習しようと思って、その日の内に千葉県から長野県まで走っちゃったんですよ(笑)。
――えぇ!?すごい距離を走られたんですね(笑)。操縦感は今まで乗られてきたクルマと違いましたか?
購入前の試乗時は、セルボ モードに似ているなって思っていたんですけど、いざ長距離を運転してみると、振動やロードノイズ、車体が華奢な感じも伝わってきて、やっぱりセルボ モードとは思想が違うんだなというのを感じました。
セルボ モードは軽ですが、乗用車ライクな感じというか…。バブル真っ只中に出たクルマだったので、仕様がおごられていたんじゃないかなってこの時に気付きましたね。トゥデイは、エンジン音もロードノイズも聞こえてくるし、操縦感がとにかくリニアだなと感じました。
――じゃあ長野県までの道中は、その新鮮な感覚に夢中だったんじゃないですか?(笑)
確かに、疲れに気付いたのは到着後でしたね(笑)。
トゥデイの華奢な感じとかうるさい感じっていうのは、全て僕にとって“良い意味で”だったんですよ。全部が五感の一部になって体に伝わってくる感じが、これまで乗ってきたクルマたちにはない楽しさがありました。だから夢中になったのかもしれないですね。
――他にトゥデイに乗って、気付いたことはありますか?
自分が乗っているトゥデイは商用車ですけど、どちらかというと乗用車ベースで開発されたんじゃないかなって感じることが多々あります。
自分が乗っているのはハミングというグレードで、初代トゥデイの商用モデルに快適装備をつけて、女性向けのセカンドカーとして売り出されていたみたいなんですけど。ホンダの狙い通りの快適性を感じることができましたし、ホンダ独自のM・M思想(Man-Maximum、Mecha-Minimum)を受け継いだ、この独特なフォルムがすごく気に入っています。
――ところで、高野さんは元々、旧車には興味があったんですか?
今、ネオクラシックカーと呼ばれている80年代〜90年代くらいのクルマは幼少期から好きでしたね。現実的なクルマというか、自分も大人になったら乗れそうな雰囲気が好きでした。当時はよくダンボールを使って、自分が中に入れるサイズのクルマを作ったりしていましたよ。
――今までで1番印象的だったトゥデイとの思い出はありますか?
1番の思い出は、鹿児島県まで行って桜島を見に行ったことですね。山の上からもくもく煙が出ていて、ついにトゥデイでこんなところにまで来てしまったという実感がありました(笑)。往復で3000kmくらいでしたが、ハプニングが全くなくて、なんだかトゥデイが頼もしくもある存在に、この時変わりましたね。
6日間くらいの旅でしたが、最終日以外はサービスエリアや道の駅に停めて、車中泊をしました。ああ見えて、車内は結構広くて普通に車中泊ができちゃうんですよ!
――トゥデイで車中泊の旅、聞いたことはないですがめっちゃ最高ですね!(笑)内装で高野さんのお気に入りの部分ってどこなんですか?
実は、シートの形状が85年式の時から全く変わっていなくて、この完成された形が気に入っています。あと、スピードメーターのライトをつけた時、文字だけが光ると思っていたんですけど、上から緑の光が全体的に照らされて、あぁなんか古き良きエモさがあって良いなと思いましたね(笑)。
――高野さんはクルマに限らず、年代を感じる物が好きなんですか?
そうかもしれないです。例えば、何十年も前の物が、今でも残っているのを見ると惹かれますね。どんな商品でも、古いものから捨てられてしまうサイクルが普通はあるじゃないですか。そんな中でも大事にしてくれる人がいて、今でも大切に残されている物を見つけると、グッと心にきますね。
――トゥデイに乗り換えて半年経った今、トゥデイはどんな存在になっていますか?
なんて表現したら良いんですかね…。今の自分が乗るに相応しいクルマというか、身の丈に合っているとも思っていますし、そこにとても満足してます。自分のトゥデイを初めてみたあの日、運動靴みたいだなと思ったんですよ。中学生とか高校生の時に履くような運動靴があるじゃないですか?
気軽に履けるみたいな感覚。その気軽さが大好きです。
高野さんにとってのクルマとは、自分を表現するもの、言わば分身なのではないだろうか。
トゥデイの穏やかな佇まいや雰囲気、触り心地、直接的な感覚、その全てが彼のサイズに重なり合ったのだと、お話をお聞きしていて強く感じた。
長距離も軽やかに走る、そんなトゥデイに自分を重ねながら、この先も一緒に歩んでいくのではないかと、誠に勝手ながら筆者は思うのであった。
【Instagram】
高野さん
(文:秦 悠陽)
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