「止まれば渡れる人がいる、信号のない横断歩道」。14年の愛車・ホンダ CR-Z ととも広げる“安全の輪”
ホンダ CR-Zのオーナー・とまるんさんは、とあるきっかけでXをはじめとしたSNSを使い、2012年から「信号のない横断歩道における歩行者優先」の啓発をメインに、交通安全に関連する情報を発信してきました。
SNSで発信するだけでなく、2015年には「内閣府交通安全基本計画」「栃木県の交通安全計画」の中間案に関するパブリックコメントで「横断歩道での歩行者優先の追記を要望する」意見を提出しました。
そうすると、内閣府、栃木県からパブリックコメントに対して「横断歩道における歩行者優先」についての記述を追加した旨の返答があったり、実際に翌年2016年からの「第10次交通安全基本計画」に「横断歩道における歩行者の優先」が追記されていたそうです。
今回は、そうした活動を行っているとまるんさんに、ホンダ CR-Zとのカーライフ、そしてライフワーク「信号のない横断歩道における歩行者優先」の啓発についてお聞きしました。
――最初お見かけしたとき、交通安全を呼びかける専用アカウントだと思っていたんです
基本的にはそうですね。2012年から自分のドライブレコーダーで撮影した動画を使いつつ、信号のない横断歩道で歩行者を優先させる「道路交通法第38条第1項」の遵守を呼びかけたり、交通安全イベント情報などを発信したりしています。普段は交通安全の啓発がメインですが、愛車のCR-Zについても触れています。
――ご自身でも実践していらっしゃるのがすごいです。どんなきっかけで発信を始めたんですか?
今から約20年前に二輪車安全運転競技大会(栃木県)に参加し、「歩行者優先」という義務をすっかり忘れていることに気がつきました。当時は大型二輪に乗っていて、安全運転をしっかり意識しているつもりでしたが、周囲を見ると、あまり守られていないことがわかりショックを受けました。
そこで、信号のない横断歩道で「どのような場合にどのように減速をするのか」「適切な減速方法を理解して実践すれば、誰でも安全に止まることができる」といった発信を始めました。
映像により横断歩道で止まる運転のイメージを感じてもらい、止まるルールを認識してもらおうと、ドラレコ動画とSNSなどを使い始めました。理解してもらえれば止まれるようになるはずという思いがありました。
――愛車のホンダ CR-Zにも「歩行者優先」のステッカーが貼ってありますね
栃木県マスコットキャラクター「とちまるくん」をデザインしたステッカーです。印刷屋さんに発注して、耐水性耐候性の仕様で制作してもらったオリジナルステッカーです。熊本県に「くまモン」のステッカーがあるのを知って、栃木県バージョンもあっていいのではと思い、キャラクターの利用申請許可を取って作ってみました。
――遠くからでも見やすくかわいらしいデザインです。あらためて愛車についてお聞きしますが、乗り始めてからどのくらいですか?
新車で乗り始めて14年になりました。走行距離は現在、約16万キロです。2010年の前期型で「α(アルファ)」と呼ばれるグレードです。CR-Zが発売されたばかりの頃、ネットの情報で存在は知っていました。しかしながら購入予定はなかったので、デザインのかっこよさに「いいな」と思ったくらいでしたね。
――このクルマを選んだ経緯を教えていただけますか?
大型二輪に乗っていましたが、諸事情によりクルマに乗り替えることになったんです。そこで候補になったのが、当時ホンダの新車で「スタイリッシュなクーペ」で「マニュアル車(6MT)」のCR-Zでした。運転席後方からテールにかけての優雅なラインにグッときましたね。
同社の初代インサイトや、現行のシビックにも見られるデザインで、このように流れるように下がっているフォルムが好きです。また、当時のホンダのハイブリッドシステム「IMA(Integrated Motor Assist)」に仕事で縁があったことも選んだ理由のひとつです。
――6MTを選ぶということは、運転がお好きなんですね
大学4年になり、マイカーを持ったことでクルマが好きになりました。 16歳から50ccのバイク「Honda CRM50」に。大学2年からは「Honda XR BAJA」に乗っていて、運転はもともと好きなんですよ。特に自分の意思でギアを選択して「走らせる」というMT車が好きですね。
楽しいからこそ安全運転も一層意識します。CR-Zは久しぶりのMT車で、納車日にワクワクしながら乗って帰ったことを今でも覚えています。
――2010年にCR-Zで四輪のカーライフになってから、気づいたことや変化したことってありましたか?
運転にゆとりができました。 信号のない横断歩道に歩行者が待っていた際の一時停止も、一層余裕をもって止まれるようになりました。
――信号のない横断歩道で止まるといえば「きちんと止まるコツ」ってありますか?
信号のない横断歩道手前での「減速義務」を意識・実践していれば、止まるのは難しくありません。大切なのは気持ちです。横断歩道で止まる気持ちが常にあること。横断歩道に気づき、減速をすれば、誰でも止まることができると思います。
まずは「横断しようとする歩行者がないことが明らか」かどうかを確認します。「明らか」でなければ減速していき、一時停止できるような速度で進みます。もし渡ろうする歩行者がいたときは、そのまま減速を続けて一時停止するだけでいいのです。
――横断歩道の前にある「◇」型のマークの確認も大事ですよね?
路面の「◇」マークは、信号のない横断歩道に気づく助けになりますが、マークがないこともあります。その場合は、横断歩道の標識があるので意識してみてください。「◇」マークと横断歩道の標識を意識しましょう。
――なるほど!気をつけます。そして歩行者に優しいスポーツカーって、かっこよさマシマシです
CR-Zはかっこいいですよね。かっこいいクルマに見合うかっこいい運転、その一つでもある安全運転をこれからも心がけたいです。
――クルマに止まってもらうと、恐縮そうに小走りで渡る方もいますよね
どうか横断歩道はあわてず走らず、普通に歩いて渡ってほしいですね。以前、Xで「栃木県警察交通企画課(公式)」さんがおっしゃっていました。
「歩行者の意見として“車の流れを止めてしまう”、“待たせてしまって申し訳ない”という意見を聞きますが、横断歩道の歩行者優先は道交法に定められたルールです。栃木県は車社会で、歩行者も車中心の考え方をしてしまいがちですが、これからは歩行者保護の考え方に改めていきましょう」と。
まさにその通りだと思います。
――そのとおりですね。歩行者のときは決して走らない。ドライバーのときは、ゆとりをもって歩行者が渡りきるまで待ちたいと思います
クルマは身体の一部のようであり、身体の機能を拡張するもの。うまく使えば便利で役に立つ一方で、使い方を間違えると人を殺める凶器にもなるものですよね。 だからこそ、ちゃんと自分自身とクルマをコントロールして、上手につきあっていきたいなと思います。
CR-Zも然りです。ちょうど良いサイズ感で、まるで手足のように感じ、クルマとの一体感を味わえます。特別感や所有する喜びも感じられるからこそ、安全運転しながら長く付き合っていきたいです。
――素敵な安全運転の姿勢です。とまるんさんのカーライフのお話に戻りますが、CR-Zでカスタムしている部分があれば教えてください
ドライブレコーダーを前後に付けました。前方は2012年、後方は2013年に。現在は純正オプションでも主流になりましたが、取り付けた頃はまだそんなに普及していなかったと思います。 また、細かいところではナンバー灯をLED化したり、フロアカーペットを黒にしたりして自分好みにしていますね。
――今後のカスタム予定はありますか?
デイライトを装着したいですね。見た目もかっこいいですし、視認性も高まります。ドラレコにウインカーやブレーキランプの点灯状態が分かるインジケータをつけたい気持ちもありますが、これはもう少し時間ができてからになりそうです。
――これまでで印象深いエピソードがあれば教えてください
2019年の8月頃だったと思います。CR-Zで出かけたときにコインパーキングで「止まっていますか?『横断歩道』」というステッカーをつけたクルマを見つけました。
栃木県警からモデル事業所として認められた公用車がこのステッカーをつけているのは知っていましたが、個人のクルマでつけているのは初めて見たので、どうやって入手したのか思わずオーナーさんに尋ねてしまいました(笑)。
なんとその方は、栃木県警交通企画課の方でした。後日、そのマグネットステッカーをいただくことができ、とてもうれしかったです。CR-Zに乗るときはつけて走ることも多いんですよ。
――交通安全を通じた出会いですね。Xでは、オフ会に参加されたエピソードも拝見しました
今年の7月に、全国オフ会へ初めて参加しました。同じCR-Zでも色んな楽しみ方があるのだなと刺激を受けましたし、すごく楽しかったです。新鮮な体験でしたよ。
――カーライフもエンジョイされていますね。最後に、カーライフの今後についてお願いします
日常点検をきちんとして乗りたいですね。特にタイヤと灯火類には不備がないように日頃から気をつけています。ランプが切れたクルマは、純粋にかっこ悪いですからね(笑)CR-Zと「止まれば渡れる人がいる 信号のない横断歩道」を合言葉に、これからも実践と発信を続けていきます。少しでも信号のない横断歩道で歩行者を優先させるドライバーが増えることを願いながら。
自ら実践しながら発信を続けるとまるんさん。Xでの投稿は粛々と情報を発信する印象ですが、実際にお話しさせていただくと、穏やかで優しい口調が印象的でした。きっと運転にもその人柄が表れているのだろうと感じました。
とまるんさんが発信している情報は、信号のない横断歩道での歩行者優先に関するものはもちろん、交通イベントや愛車CR-Zに関する話題まで幅広いです。ぜひ一度アカウントへ訪れてみてくださいね。
【X】
とまるん@信号のない横断歩道(交通安全)さん
(取材・野鶴美和)
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