冬の備え…安東弘樹連載コラム
2022年が始まりました。皆様、今年もなにとぞ、よろしくお願い申し上げます!
さて新年早々、1月6日、首都圏は大雪に見舞われました。当日、私は宇都宮での仕事から足を伸ばし福島県郡山市に行っており、そこから千葉県にある自宅に向かっていました。
事前の予報は、福島県南部から北関東はおおむね晴れで、首都圏の降雪は1センチ程の積雪でした。
しかし実際は東京23区に4年ぶりの大雪警報が発令されるという事態になったのです。
私は軽のオフロード車(SUZUKI ジムニー)に乗って福島まで行っていたのですが、タイヤはオールテレーンと言われる、オンロードもオフロードも走れる全地形型の物で、少しだけオフロード専用タイヤに近いタイプのものです。
ちなみにM+S(マッドアンドスノー・泥や少しの雪には対応しているという意味)マークが付いています。もちろん4輪駆動ですし雪道の運転には多少、慣れていることもある上、天気予報によると行程の中で本格的な雪に見舞われることはないようなので、安心して郡山に向かいました。
予報通り宇都宮も郡山も降雪はなく、所々に残雪が見られる程度です。
郡山の、とある無料の広大な駐車場にだけ10センチ程、雪が積もっており、隅の方にトラックが1台停まっているだけでしたので、タイヤと車の対雪性能を確かめるために、ある程度のスピードから急ブレーキをかけてみたり、急発進をしてみたところ、走るときはキチッとグリップしてくれて、止まるときに、ほんの少しだけ滑るものの、問題はなさそうでした。
もちろん、油断は禁物です。慎重に所々、雪が残っている道を走り、南下する分には規制はない東北自動車道路に乗りました。
路面には全く雪はありません。順調に走行していると栃木県の那須高原辺りから雪が舞いはじめました。しかし、まだ規制はありません。
ところが埼玉県に入った辺りから雪が本格的に降り始め、首都圏に入り、東北自動車道から外環道に入る頃には路面にうっすらと雪が積もっている状態でした。今回も天気予報では都心での積雪が過少に伝えられていましたが、東北自動車道を通行してきた周りの車はさすがにノーマルタイヤで走行してきてはいませんし。その後も、少なくとも東北自動車道から外環道経由で千葉市の自宅に着くまで、立ち往生している車に遭遇する事はありませんでした(首都高では立ち往生が散見されたようです)。
しかし驚いたのは、帰宅するまで高速道路、一般道ともに規制が一切なかったことです。
外環道からさらに京葉道路経由で帰宅したのですが、京葉道路を通行している時間には路面の雪は数センチ積もっていました。しかしありがたいことに周囲の車もスタッドレスタイヤなどの冬用タイヤを装着しているようで、問題なく走行しています。
これまで首都圏で雪が降ると、ノーマルタイヤのまま走行している車の影響で大惨事になっていましたが、最近は意識がかなり高くなってきたようで、これは嬉しい限りです。
私の車も問題なく走行し、無事に帰宅することができました。近所のショッピングセンターの駐車場にはほとんど車は停まっておらず、そこで買い物をする際に安全を確認して、走行チェックをしてみましたが、やはり新雪でも危なげなくグリップしてくれることが確認できました。
しかし急制動を試みると、少しだけ滑ることも確認できましたので、やはりスタッドレスタイヤとは違う、ということを実感しました。
さて、ここで、高速道路の規制についてお話しておきましょう。
私も含めて意外に正確に把握している人は少ないかもしれません。
雪が降りはじめると、まずは速度規制がかかります。
制限速度100km/hの区間の場合、これが80km/hになったり50km/hに変わることが一般的です。
その次に「冬用タイヤ規制」なのですが、これが少し複雑なのです。
これはスタッドレスタイヤなどの冬用タイヤかチェーンを巻いている車以外は通行できなくなるのですが、高速道路上の表示には、「冬用タイヤ・チェーン規制」など標示される場合が多くなります。この場合、もちろん、スタッドレスタイヤでの通行は問題ありません。
ただし、多くのオフロード車が履いているオフロードタイヤの中にもM+Sマークだけ付いているタイヤと、さらに山と雪の結晶を模した「スノーフレーク」マークが付いているタイヤが有り、実はスノーフレークマークが付いていないと冬用タイヤ規制の時には通行は出来ないのです。ただ、PA等でタイヤチェックをしているスタッフの方が、この二つを判別できるのか少し疑問です。
実際に私が20代のころ、スキーに行く時はオフロード車に付いているM+Sマーク付きのタイヤで雪の高速道路を走行し、油断さえしなければ問題はありませんでしたし、規制のチェックの際にも問題なく通してくれました。実はスノーフレークマークの制定は1999年で、それ以前のタイヤには、このマーク自体がなかったことから、私も最近、認識するに至りました。今思えばM+Sマークだけ付いたオフロードタイヤで雪の高速道路を走行していたのは危険だったのかもしれません。
ちなみに1999年以降、スタッドレスタイヤには自動的に、このマークが付けられており、ここ20年以上、私は本格的なオフロード車から離れていたため、4輪駆動の車でも12月になると必ずスタッドレスタイヤに変えていたので気にする必要がなく、このスノーフレークマークの事を意識することがなかったのです。
皆さんは、ぜひ、お気をつけください。
ちなみに先月(12月)17日から18日にかけての寒波到来の際にスタッドレスタイヤを履いた車で長岡に赴いた際には高速道路の掲示板に「冬用タイヤ・チェーン規制」という標示が出て、さらに強制的に、あるPAに入らなければならず、その際には「チェーンのチェック」と標示があったので、私はスタッドレスタイヤにさらにチェーンを巻かなければならないのかと覚悟を決めたのですが、実際にPAでチェックされた時には、スタッドレスタイヤでも通行可能な「冬タイヤ規制」の意味だと、チェックスタッフに言われ混乱したものです。
そう、わたしたちが普段、何気なく言う「チェーン規制」とは正確には「冬用タイヤ規制」のことなのですが、次に説明する本物の「チェーン規制」を明確に区別して確認しておきましょう。
本物の「チェーン規制」ですが、これは2018年施行された「新しい規制」で、ここ数年高速道路等で多数の車が身動きがとれなくなる、いわゆる立ち往生が多発したことを受けて制定されたもので、文字通り、チェーンを巻いていなければ冬用のタイヤを履いていても通行できない規制です。
「大雪に対する緊急発表や大雪特別警報が出た場合など異例の降雪がある場合に実施する規制」で、規制区間の手前でチェーン装着の有無をチェックされ、装着車のみが、その区間を通行できる、という規制です。
新しい規制だけに各所の電光掲示板等には「今で言う」冬用タイヤ規制時にも「チェーン規制」という文字が出てしまうというのが混乱の原因だと思われます。
しかも冬用タイヤ規制時でもノーマルタイヤにタイヤチェーンをつけた車は走行できるのも確かなので、「チェーン規制」という表示でも間違いではないのが「くせ者」と言えるでしょう…。
現在は一般国道、高速道路あわせて13カ所が「本物の」チェーン規制の対象になっているので、それ以外の場所で「チェーン規制」という表示が出た場合、「冬用タイヤ規制」という事になるのですが、全てのドライバーがその場所を全て覚えておくのは難しいと思いますので、できれば「明確に」規制の名前の区別をしてほしいと思うのは私だけでしょうか。
お互いに気をつけましょう。
基本的に、冬に車を運転する機会がある場合、沖縄県以外の方は必ずスタッドレスタイヤを装着し、雪国に赴く機会がある方はチェーンを携行しておけば、あらゆる規制に対応できます。
しかし一番気をつけなければならないのは何より、過信や無理をしない、という事ですね。
お互いに、安全に冬を乗り越えましょう。
安東 弘樹
(写真:安東 弘樹、日本グッドイヤー株式会社)
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