現役看護師でコースオフィシャル デキる女子は無類のクルマ好き!
今回は、現役の看護師でありながら、レースウィークにサーキットのコースサイドで、コースオフィシャルのお仕事をしている素敵な女性をご紹介しましょう。クルマ好きが高じて、公認審判員のライセンスを取得しパワフルに2つの仕事をこなす、彼女の日常とは?
プロフィール
井川由香里(いがわゆかり)
北海道出身、救命セクションで働くバリバリの現役看護師。JAF公認審判員のA1ライセンスを持つ上級審判員。富士スピードウェイをメインにコースオフィシャルの仕事に就いている。
――コースオフィシャルのお仕事について教えてください
(コースサイドのポストでお仕事中)
公認審判員という仕事で、ライセンスの取得が必要となります。公認審判員の業務は、サーキットのコース、技術、計時のセクションに分かれていて、私はコースサイドにあるポストから車両の監視をする、コースオフィシャルをメインにやっていて、接触、クラッシュの時間を管制に報告したり、現場でジャッジをしています。
1つのポストには3~5人が入り、2人の監視員がそのポストから見える前方、後方の監視をしています。そして、ポスト主任がレース中に無線やホットラインで、管制に報告をあげていきます。
審判員の資格は、B3、B2、B1、A2、A1とランクが分かれていて、一番上がA1です。講習だけで取得できるものもあります。A1という一番上の資格を取ると、全ての競技を開催できたり競技長ができたりします。
私は、基本的に富士スピードウェイのコースオフィシャルをやっています。富士スピードウェイでは、最初はメディカルとしてF1のレースでデビューしました。あの時、中でモニターをずっと見ていましたが、私の場合、クルマを見ていたいのでコースオフィシャルの方が好きですね。
――サーキットへは、どれくらいの割合で行かれるのでしょうか
昨年までは、月に2~3回行っていました。スーパーGTなどのビッグレースにはほぼ行きます。今年は、仕事が忙しく月1回に減りました。他には、スポーツランド菅生(宮城県)へも、スーパーGTのレースの際に行きましたね。
――コースオフィシャルの仕事に就かれた経緯を教えてください
(クルマ好きが高じて、コースオフィシャルに)
きっかけは、サーキットにありました。若い頃ゼロヨンが好きで、クルマを自由に走らせるにはどうしたら良いかと考えました。誰にも咎められずに楽しく走るにはどうしたら良いのだろう?と。そこで、サーキットを走れば良いのかと…と思いつき、十勝スピードウェイに通いライセンスを取りました。当時は、看護学校に通っていたのですが、アルバイトをしながら走っていました。楽しいのとは裏腹に、タイヤ代、部品代、ガソリン代の負担が大きいので、もう来られないです…と十勝スピードウェイの職員の方に話したところ「だったらコースオフィシャルになればいいのでは?」と、ご提案いただきました。
好きなクルマを誰よりも間近で見ることができるので、すぐにやりたい!と言って、この仕事に就きました。それまで、サーキットを走るA級ライセンスは持っていたのですが、公認審判員の資格は持っていませんでしたので、チャレンジしました。
以前は、年に一回、十勝スピードウェイで国際格式の十勝24時間レースが開催されていました。だいぶ前の事ですが、A2の審判員は沢山いるけれども、A1の審判員がおらずポスト主任がいないという事で、A2の仲間みんなで試験を受けました。今思えば、最初の審判員デビューも十勝24時間のレースでしたね。時間が長いから、あれこれ覚えられると言われました(笑)。結果的に、5年かけて、26歳の時にA1の資格を取りました。
――やりがいは何でしょうか?また、印象に残っているエピソードをお聞かせください
(咄嗟の判断が必要とされ、生死に関わる重要な仕事は、本業と一緒)
誰よりも一番前でクルマを見ることができるのが、うれしいです。不謹慎ですが、クラッシュしたり接触したり、オイルが漏れた時のにおい、異音、など誰よりも先に気づけることがやりがいです。
誰よりも先に…で、以前こんな事がありました。富士スピードウェイの1コーナーの2番ポストに入っていた時に、カートのレースで後方監視をしていました。5台くらい走行していたと思うのですが、接触をしたんです。1台がガードレールに激突、その際にクビが折れたのでは?と思うほど、頭が横にうなだれていた選手がいました。まず管制に報告をあげ赤旗中断になりました。そのタイミングで私は選手の元へと走りました。
審判員は、選手に対してファーストタッチができません。火災の際は、消火作業などはできますが、レスキューに関わることはやってはいけないことになっています。すぐシートから引き出してあげたいのですが、頸椎を損傷している場合もあるので、触れてはいけません。
しかし、あの時私は看護師でもあるので生死に関わると判断し走りました。レスキューよりも早く到着し、わかりますか?とまずその選手へ声がけをしました。ぐったりしていて、息をしているのかを確認していると、まもなくレスキューが到着しました。その時の救命士さんが、たまたま私の知り合いでした。私は、外傷のインストラクターの仕事もしていて対処法はわかっていたので、手伝って欲しいとその救命士の方に言われました。
審判員としてヘルメットを被り、皮の手袋で旗を振っていたので、救助作業には不向きです。すぐさま、救急車にゴム手袋を取りに走りました。格好は、オレンジのつなぎを着たコースオフィシャル。しかし、生死に関わる問題だと咄嗟に判断し、後で怒られるだろうとは思いましたが、そこは迷いなく救助作業を手伝いました。
救命士さんと二人でカートから引き出し、救急車に乗せるバックボード(担架)に固定する作業までを手伝いました。頭を強く打ち、脳震とうを起こされていたようですね。あの時は、本当に危険だと思いました。
もし、私が看護師ではなくても、一番に駆けつけたなら、意識があるか息をしているかどうかは確認できるので、その対応だけでは問題がないと思いますが、あとでコース委員長の元へ報告をしに行きました。しかし、咎められる事はありませんでした。看護師であることと、救命士さんから、手伝ってくださいと私のスキルを分った上で指名してくれたからだと思います。医師の指示の下で、医療行為をすることはできます。なんでもかんでもやって良いというわけではありません。けれど、何もしないで後悔するよりは、できることをして命を助けたいと思いました。
――本業との兼務は大変ではないですか?
看護師の仕事の夜勤明けの次の日のお休みを調整して、サーキットに来ていますが、看護師になる前からレースに関わっていたので、レース中心のスケジュールには慣れています。ただ、サーキットに来る際、朝早く起きるのがちょっとだけツライですね。
――今後の目標はありますか
(気軽にオフィシャル体験会に参加して欲しい、この楽しさをもっと女性に体験して欲しいと語る)
今、コーチングのスクールに通っていて、職場をより良くするためにと頑張っているのですが、そのスキルがどの環境でも流用できるので、コースオフィシャルの仕事でも生かして、富士スピードウェイのコースオフィシャルはすごいよね!と言われるようにしたいですね。それと、女性のオフィシャルを増やしたいですね。実際やってみたら、オフィシャルおもしろいよ!と伝えたいです。半日くらいのスケジュールでオフィシャル体験会があるので、若い女子にどんどん来て欲しいです。よくわからないけど、取りあえず行ってみましょうか!やってみたら楽しいね!という感じで。
――プライベートでは、休日はどのようにお過ごしですか?
休日は、今まではセミナーに行くのが好きで、興味のあるセミナーには、ジャンル問わず参加しています。その他に、今は「釣り」が趣味ですね。家にいることはほとんどなくて、イカが食べたいからイカを釣りに行こうとか、美味しいものが食べたいと、遠出したりしています。
――愛車は何ですか?
(休日は、ご主人とFJクルーザーでドライブ)
トヨタ・FJクルーザーが愛車です。その前が2台持ちで、日産・テラノレグラススターファイアと日産・スカイラインGTSターボ。GTRが買えなかったんです。日産・スカイラインは、車高を下げていたので、冬になるとよく除雪をしていました(笑)。改造も趣味で、どうしたらクルマが速くなるのかと考え、オプション2という雑誌を見ていじっていました。海を走るのが好きで、20代のギャルだった頃は、よくぬかるみにハマりトランクからマイ牽引ロープを出して、砂に埋まったクルマを出してもらったりしていました。砂に埋まったり、雪に突っ込んだりしていましたね(笑)。
どうにか冬用のセカンドカーが欲しくて、分厚い中古車のクルマ雑誌の中から、エアロがしっかり組まれた日産・テラノレグラススターファイアを見つけました。なんだかわからないけどかっこいい!と購入しました。なぜ、そんな燃費の悪いクルマに乗るのかと言われましたが、趣味だから趣味にお金をかけるのは当たり前でしょ?というつもりで、乗っていましたね。今のトヨタ・FJクルーザーは、除雪もしなくて良いですね。
こんなにクルマ愛が強いお話しを聞くことができるとは、当初予想もせずにお話を伺っていました。ご結婚されて2年という素敵な旦那さまと出会ったのもサーキット。同じく、本業のかたわらオフィシャルのお仕事もされています。これはもうオフィシャルになるしかない!(笑)。クルマ好き女子よサーキットに集まれ!頼もしい井川さんが待っていますよ!
[ガズー編集部]
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