24歳のオーナーが選んだ初の愛車は、父親と同じ車種だった。1995年式日産・スカイライン GTS25t(R33型)

「子どもは親の背中を見て育つ」などといわれるが、親の存在が、自分自身のクルマ選びに影響を及ぼしている(または及ぼしてきた)人は案外多いのではないかと思う。

自身が幼少期の頃、父親はクルマを所有していただろうか?所有していたとしたら、車種やボディカラー、走った景色など、当時のことを鮮明に、あるいは断片的にでも記憶している場面があるかもしれない。運転中の父親から、愛車の自慢話を何度も聞かされた人もいることだろう(笑)。そのときは「うっとうしいなあ」と思ったかもしれないが、大人になるにつれ、不思議と自分も同じ体験をしてみたいと思うようだ。今回、紹介する若者も、かつて父親が乗っていたクルマの後継モデルを人生初の愛車に選んだのだという。

「このクルマは、R33型と呼ばれている1995年式日産・スカイライン GTS25t(以下、スカイライン)です。オドメーターの距離は11万キロあたりを刻んでいます。現在、私は24歳になりますが、運転免許を取得してから最初の愛車がこのクルマです。手に入れてから5年、これまで5万キロくらい乗りました」

R33型スカイラインは、歴代9代目にあたるモデルとして1993年にデビューを果たした。先代にあたるR32型よりもホイールベースが延長され、3ナンバー化されたボディをはじめとして、居住性が重視された設計となっている。なお、GT-Rのデビューは2年後の1995年だった。ニューモデル発表の場として定番であった東京モーターショーではなく、敢えて東京オートサロンを選んだことも話題となった。

オーナーが所有するスカイライン(R33型/クーペボディ)のボディサイズは、全長×全幅×全高:4640×1720×1340mm。駆動方式はFRとなる。「RB25DET型」と呼ばれる、排気量2498cc、直列6気筒DOHCエンジンが搭載され、最高出力は250馬力を誇る。

今から23年前・1995年に造られたスカイラインと、現在24歳になるというオーナー。ほぼ同時期に誕生した者同士ということになるのだが、このクルマを最初の愛車に選んだ理由を伺ってみた。

「父親が若いときにR30型とR31型のスカイライン、それもクーペに乗っていたんです。私は、高校生くらいまではそれほどクルマに興味はなかったのですが、運転免許を取得して運転の楽しさを知るようになるにつれ、私も父親と同じスカイラインに乗りたいと思うようになりました。本心ではR32型のGT-Rが欲しかったのですが、父親からは『いきなりGT-Rなんて生意気だ!』といわれてしまい、たまたま近所のクルマ屋さんに格安のスカイラインが売りに出ているのを見つけ、手に入れたのが今の愛車です」

もし、父親が若いときにスカイラインに乗っていなかったら、息子であるオーナーが最初の愛車にこのクルマを選ぶことはなかったはずだ。では、このスカイラインはどのような乗り方をしているのだろうか?

「ドライブが好きなのでよくこのクルマで出掛けますね。おかげでガソリン代が月に2万円を超えます。今は学生なので、アルバイトを掛け持ちしつつ何とか維持費を捻出しているような状況です。購入当初はフルノーマルでしたが、痛んでいる箇所などをできるだけ自分で直しつつ、モディファイを加えたりして楽しんでいます」

若いときには自分好みに愛車をモディファイしたことがある人も多いだろう。このオーナーの場合はどうなのだろうか?

「外装は、フロントバンパーおよびフェンダー・グリル・サイドステップ・リアウイング&バンパーを交換しました。フロントバンパーはNISMO400R仕様のものを、フロントフェンダーはD-MAX製のD1-SPECのオーバーフェンダーを、フロントグリルは純正オプションを、リアにはR33型GT-R仕様のスポイラーを装着しています。本当はフロントインタークーラーを装着してみたいのですが、高価なので断念しました。ホイールはRAYS製のHOMURAを選びました。R33型で9Jサイズを履いている人はなかなかいないので、ちょっとした自慢です(ほとんどは8.5Jだとか)。マフラーはGP SPORTS製のエグザス エボチューンを装着しています。内装は、ステアリングをMOMO製のDRIFTING に、メーターが壊れてしまったので、R33GT-R用のメーターを移植しています。あと、インパネが劣化していたので、自分で赤くペイントしました。分野にもよりますが、できる限り自分でメンテナンスするようにしています」

決して派手さはないのだが、オーナーならではのこだわりが感じられるモディファイだ。そしてリアには「GT-R」のエンブレムが装着されているようだが…。

「GT-Rへの未練もあり、エンブレムチューンしています。GT-R仕様のリアスポイラーをはじめとする全体的な雰囲気と相まって、クルマにそれほど詳しくない人だと、本物のGT-Rだと見間違えてしまうようです。先日も、外国人の方が本物のGT-Rと勘違いされていましたよ(苦笑)」

確かに、リアフェンダーの膨らみ具合などの相違はあるが、クルマに詳しい人でない限りはGT-Rだと思ってしまうかもしれない。こうやって試行錯誤しながら自分なりのスタイルを模索していくのは楽しい作業だ。しかし、そんなR33型スカイラインも、生産を終了してから今年で20年という年月が流れてしまった。気になるのは純正部品の確保、そしてトラブルだ。

「メーター類などの純正部品はすでに欠品のようです。多くの部品の入手は現在でも可能なんですが、新品は高いですね。ヘッドライトは片側だけで6万円もしますし…。今後も、部品価格の高騰は避けられないのではないかと予想しています。維持費については、もしかしたら輸入車の方が安いのでは…?と、思えてくるほど高い印象です。そこで、インターネットオークションなどを駆使して中古部品を安く仕入れています。20年以上前に造られたクルマですし、故障が心配なのです。そのため、予防整備を常に心掛けています」

もうひとつ気になることがある。オーナーと同世代の、周囲のクルマ好きについてだ。

「クルマが好きな人もいますが、ハイブリッドカーやSUVが人気ですね。クルマを日常の足として捉えている人が多いです。私のように、古い2ドアクーペに乗っている人はいません。私のように、クルマに対してそれほど詳しくなかった時代にスバル・アルシオーネSVXに興味を抱いたなんてケースは皆無だと思います。これからは、電気自動車や自動運転の普及が加速していくと思われますが、何とかMT車はこれからも残して欲しいというのが、いちユーザーとしての願いですね」

最後に、このクルマと今後どう接していきたいかオーナーに伺ってみた。

「実は、訳あってこのスカイラインとはもうすぐお別れなんです。初めての愛車ですし、本音ではまだまだ乗り続けたいのですが…。次のクルマはまだ未定です。『男は成功するとセダンに乗る』というエピソードを聞いたことがあるので、いつかは4ドアセダン、個人的には先代のマセラティ・クアトロポルテに乗ってみたいですね」

出会いがあれば別れもある。それは、人もクルマも同じだ。例え「一生モノ」と心に決めても、本当に所有できる人はホンのわずかだ。まして、人生初の愛車を生涯所有できる人など皆無だろう。金銭的に余裕があったとしても、途中で心が離れてしまうこともあるからだ。

父親が若いときに乗っていたスカイラインのエピソードを聞き、結果として同じ道を辿った若きオーナー。人生初の愛車を所有できた喜びと苦しみ、そして思い出が詰まったクルマとの別れが迫る寂しさ…。どれも身銭を切って体験したからこそ分かることであり、自らの経験や今後の糧となったことだろう。

24歳の若きオーナーがやがて父親となり、新たな愛車を手に入れたとき、子どもにも愛車自慢をするのだろうか?そのことが、今から楽しみでならないのだ。

(編集: vehiclenaviMAGAZINE編集部 / 撮影: 古宮こうき)

[ガズー編集部]

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