31歳のオーナーが「理想形の愛車」と熱く語る、2008年式レクサス IS F(USE20型)
多様なカーライフがあるなかで、「自分にとって理想形の1台と出会いたい」というクルマ好きは多いだろう。今回の主人公である男性オーナーもそんな一人かもしれない。
今回の愛車のオーナーは現在31歳。クルマ好きな両親の影響で、オーナー自身も幼少期の頃からGT-Rやフェラーリなどの大排気量スポーツカーを好み、学生時代はスーパーカーのディーラーや輸入車販売店にも通ったという。それが縁で、現在も自動車関連業にもたずさわっているそうだ。そんなオーナーの愛車は、プレミアムセダンでありながらサーキット走行を想定して開発された「本気のスポーツモデル」だ。
「このクルマは、2008年式レクサス IS F(USE20型/以下、IS F)です。手に入れてから約9ヶ月です。納車当時の走行距離は2.2万キロでしたが、現在は4.5万キロに伸びました」
IS Fは、トヨタが展開するプレミアムブランド「レクサス」の「IS」シリーズとして開発されたスポーツセダンだ。生産期間は2007年から2014年まで。ボディサイズは全長×全幅×全高:4660×1815×1415mm。駆動方式はFR。「2UR-GSE型」と呼ばれる排気量4968cc、V型8気筒直噴DOHCエンジンが搭載され、最高出力は423馬力を誇る。このエンジンはトヨタとヤマハ発動機が共同開発しており、同ブランドのフラッグシップモデルLS600hをベースにチューニングされている。
IS Fといえば、サーキット走行を想定した装備にも注目したい。ブレンボ社と共同開発したブレーキシステムをはじめ、コーナリング時の強烈なGによるオイルの偏りを防ぐ、新開発の潤滑システムも備えられている。また、トランスミッションは8速ATと8速MTを併せ持つ多段AT「8-Speed SPDS」が採用されており、わずか0.1秒での変速が可能。シフトダウン時にはブリッピングコントロールが作動し、3ペダルMTでヒール&トゥをしているかのような連続したシフトダウンも鮮やかにこなす。
そんなIS Fとカーライフを送るオーナー。普段はどのように接しているのだろうか。
「日常の足でもあるので、買いものからドライブまで気兼ねなく出掛けます。その代わり、洗車はこまめにしていますね。燃費は街乗りで6km/Lと決して良いとはいえませんが、高速道路では12km/Lくらい走ります。大排気量のエンジンであることを承知のうえで手に入れたので、デメリットに感じることはありません。そういえば、IS Fに乗っていると、海外からの観光客にカメラやスマホを向けられることが増えましたね。あちらでは珍しいのでしょうか(笑)」
IS Fでもっとも気に入っているポイントは?
「やはり音が好きです。大排気量NAならではの官能的なサウンドも魅力だと思うんですが、IS Fは吸気音が気持ちいいですね。あとは、エンジン始動のセルの音と“初爆”音。この音を聴くたびに“IS Fを所有しているんだ”という実感とともに、満たされた気持ちになれるんです」
オーナーの話からは、IS Fに自然体で接している日常が伺える。これまでの愛車遍歴やカーライフについてお聞きした。
「初めての愛車は、祖父から譲ってもらったトヨタ マークXに乗っていました。その後、母親が買ったヴィッツ G’zに乗り、日産 NOTE NISMOのMTモデルに乗り替えて5年間乗っていました」
憧れのクルマや人生観を変えた1台はあるのだろうか?
「10代の頃に憧れていた日産スカイラインGT-R(R34型)です。ブルーのボディカラーにこだわるのも、R34 GT-Rのイメージカラーであるベイサイドブルーが原点にあると思います。もちろん今も憧れていますが、もはや雲の上の存在というか……文化遺産のようになりつつありますよね。そんなことが重なるにつれて、いつしか自分が『GT-Rを所有したら…』といった想像をしなくなりました。
あらためて考えてみると“走らせて楽しく、気軽にどこでも行ける大排気量のスポーツカー”が、自分の理想形かもしれません」
IS Fに乗っている現在の姿が、かつてGT-Rで想像した「理想のカーライフ」のイメージなのかもしれない。では、NOTE NISMOからIS Fに乗り替えた当時の心境の変化を振り返ってもらった。
「NOTE NISMOは、5年間で19.6万キロ走りました。当時、月に一度のペースで勤務先の中国地方から関東まで帰省していたこともあり、あっという間に距離が伸びましたね。そのうちクラッチがブローしたりオイル上がりがひどくなったりして、乗り替えを検討するようになったとき、次は300馬力以上のハイパワーなクルマに乗ってみたい気持ちが強くなっていったんです。NOTE NISMOのリフレッシュやエンジンのオーバーホールも検討しましたが、修理費用を次のクルマの購入費用に充てたほうが現実的だったこともあり、乗り替えを決めました」
300馬力以上だと車種は限られてくるが、当時はどんな候補が挙がっていたのだろうか。
「BMW M3(F80・E90・E92・E46型)や、アウディ RS 4、メルセデス AMG C63、日産スカイライン400R、そしてレクサスIS Fでした。父親がレクサスのGS 350Fスポーツに乗っていたこともあって、セダン好きは父親譲りなのかもしれません(笑)。2ドアって見た目はかっこいいですけど、3人以上乗せられるクルマでないと、やはり不便だと思ってしまうんです」
そんな気持ちの変化の中で愛車と出会ったオーナー。手に入れるまでの経緯を伺った。
「IS Fは仕事で一度だけ乗ったことがあって、いいなと感じた1台でした。最終的にBMW M3とIS Fが候補として残ったある日、希望通りの個体を見つけたんです。ボディカラーは絶対にブルーが良かったので、“エクシードブルーメタリック”一択でした。サンルーフはなし、走行距離は少なく、できるなら後期型。それが理想の条件でした。この個体は前期型だったのですが、それ以外の条件はクリアしていたので、すぐさま中古車販売店に足を運んで即決しました」
一度決めたら行動が早い。やはり職業柄、現車確認にこだわっているのだろうか?
「性格的なものもあると思いますが、実車を見てから判断するようにしています。画像もチェックしますが、あくまでも参考程度です(笑)」
こうしてオーナーの元にやってきたIS Fは、前オーナーによってかなりモディファイされた個体だった。
「今もほぼ、前オーナーさんの仕様のままです。まず、ボンネットとリアディフューザーはドライカーボン製で、TRDの『Circuit Club Sport Parts』シリーズです。そして、グリルと前後のナンバーフレーム、フロントスポイラーは、トヨタ系チューニングショップ『LEMS』のカーボンパーツ。トランクのスポイラーもカーボンになっています。前後タワーバー、CPMのフロア補強パーツ、牽引フックも装着してありました。シートはRECAROのPRO RACER RMSに交換されています」
タイヤに視線を落とすと、RAYSのVOLK RACING TE37ULTRA から覗く大型のブレーキローター。強化された足回りの仕様は?
「ホイールを新調した以外は、足回りも前オーナーさんの仕様です。車高調はエナペタル、TRDのパフォーマンスダンパー、Rddのブレーキローター。OS技研のデフも入っています。費用もかなり掛かっているでしょうし、相当なこだわりを感じました」
おそらく、前オーナーがこの記事を目にしたときに元愛車だと気づくはずだ。そこで、もしかしたらこの記事を読んでくれるかもしれない前オーナーに向けて伝えたいことを伺った。
「いい機会なので“大事に乗っています”とお伝えしたいです。最近、ホイールはBBSからRAYS製のものに交換してしまったんですが、それ以外は以前のまま。どんな感覚でこのように仕上げたのかを、詳しく教えてもらいたいと思っています。
ちなみに、この先手を加えていきたい部分はあるのだろうか。
「現在の仕様がとても気に入っているので、外装など大きな変更はしない予定です。ただ、せっかくのV8サウンドなので、少しだけ自分好みにしたいかなという気持ちがあり、このクルマにしっくりくるスポーツマフラーを探しているところです。あとは小径ステアリングに交換したいですね」
最後に、このIS Fと今後どう接していきたいかを伺った。
「このIS Fは手放したくないですね。これからもしっかり走ってあげたいです。IS Fの攻めた仕様に惚れています。特に、このコンパクトボディに5リッターエンジンが載っていることが“刺さり”ますね。レクサスがV8の生産を終えるという話もあるようですし、こんなクルマは二度と出てこないと思うので、もしこの先新たにクルマを迎えるときは、増車したいと考えています」
IS Fに乗ったことで、心の中で描いていた「理想の愛車」がカタチになった。少なくとも、30代を迎えたタイミングでIS Fの魅力を存分に味わっているオーナーにとって、年齢を重ねるにつれて得がたい経験であったと思えるときが訪れるはずだ。
ひょっとするとこの先、IS Fの隣に、新たなハイパフォーマンスモデルが肩を並べて停まっている光景も夢物語ではないかもしれない。そう思えてならないのだ。
(取材・文: 松村透<株式会社キズナノート> / 編集: vehiclenaviMAGAZINE編集部 / 撮影: 古宮こうき)
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