まるで「片思いの相手」。心酔するマセラティの内装の意匠や管楽器のような音色を五感で楽しむ
「乗っていることで苦労したり、お金がかかったりすることによって、喜びを得ているのかもしれないです。そういった意味では、片思いの相手、もしくは崇拝の対象という表現がしっくりくる気がします」と話すのはマセラティ・ギブリ ディーゼル(MG30D)に乗る前野さん。
決して自分の思い通りにはならない、そんな愛車にベタ惚れだという前野さんが “マセラティ”にここまでハマってしまったのは、5代目クアトロポルテと出会い、その美しさに魅了されてしまったのがキッカケだったという。
「一般的にクルマの内装は大部分がプラスチックですが、クアトロポルテは一部を除いて革と木と金属が使われていたんです。天井やピラーがレザー素材なのは当然のこと、アシストグリップさえも革製でした。
知人が輸入中古車の売買業者だったので、自分もメルセデス、BMW、オペル、アルファロメオ、プジョー、フィアットなど色々な輸入車に乗る機会があって、もちろんそれぞれに良さがありましたが、なかでもクアトロポルテは細部にわたる拘りを感じて衝撃を受けました」
前野さんが衝撃を受けた内装の美しさは、自身の愛車であるギブリにも共通するという。歴史のあるホテルや旅館のような、どこか伝統的な雰囲気を感じられる車内からは、クアトロポルテとおなじ何かを感じるのだそうだ。
「ドアレバーや、シフトレバーに付いている間接照明、センターコンソール部分にあるアナログ時計など、すでに所有してから何年か経っているのに、目に入るとそのたびに胸がドキリとし、ときめいてしまうんです」
その胸の高鳴りは、内装だけではなく、外装を見たときにも感じるという。
リアにかけて空気を流すような、いかにもスポーツカーらしい疾走感のあるラインは、ギブリという名前の由来でもある“風”を感じさせてくれる。
サイドミラーから見えるリアフェンダーのふくらみ、フロントサイドの排熱ダクトなど、どの角度から見ても工業的な機械っぽさはなく、芸術品と呼びたくなるくらい綺麗なのだと熱く語ってくれた。
そう話しながら愛車に向けられる眼差しは、まさに片思いの相手を見つめているかのようだ。
「主張強めだけど野暮ったくないエンブレムのデザインや、リアに堂々と書かれる『maserati』の1文字1文字も、なんだかよく分からないけどカッコいいんです。不思議とクルマっていうよりも、調度品や楽器を見たときのような気持ちになるんですよ」
ここまで聞くと“非の打ち所がないクルマ"のように思えるが「そうでもないのがギブリ、もといマセラティの面白いところ」だと頷く前野さん。
「工業的じゃないと感じるもう1つの理由としては、シフトノブに干渉して操作しにくいCDプレーヤー、視界の邪魔になるレベルで大きいルームミラー、びっくりするくらいせまい足元など、他にも『えっ?これマジ?』というところが色々あるからかもしれません」と、いたずらそうな笑いが湧いていた。
しかしそう話した後に、足元が狭いと感じるのは、足が長く胴が短いイタリア人仕様になっていて、自分は胴長短足だからギブリは悪くないのだと付け加えていた。
「え?マジ?って言っても、別にダメなところという訳ではないんですよ。むしろ、使い勝手よりもデザインを優先する潔さに萌えるくらいです。機能性よりも、僕の心の満足度が高いのでよし!とすら思います」
“惚れたら負け”という言葉があるが、前野さんとギブリの関係性はまさにその表現がぴったり当てはまる。
そんな前野さんが、このギブリを選んだ理由がもう1つある。それは、エンジン音だ。スポーツカーブランドであるマセラティとしては珍しいディーゼルエンジンを搭載しているということが、購入の大きな決め手になったというのだ。
「友人がギブリディーゼルに乗っていたんです。当時、マセラティといえば、甲高いフェラーリのようなサウンドがすると思っていたのですが、そのギブリの音は少し違っていたので友人に聞くと、ディーゼルだからだよと言われ、『えっ!?マセラティにディーゼルエンジンなんてあるんだ!』と驚きましたね。
でも、これは僕だけではなく、フルサービスのガソリンスタンドに行ったときに、軽油でお願いしますと伝えると『ハイオクではなくて軽油なんですね?』と確認されることがあります」
「僕も気になって調べていくと、マセラティのディーゼルエンジンは、環境志向と電動化のはざまで生まれた1世代限りのものであることが分かったんです。マセラティ社がVMモトーリ社と共に開発した、マセラティのためのエンジンというところにも興味をそそられました。
F1好きの僕としては、元フェラーリF1のエンジンデザイナーがマセラティ社のパワートレーンディレクターとして監修したという情報などもどんどん乗ってみたいと思うようになった一因でしたね。その結果、結局購入してしまいました」
こうして前野さんが手に入れたギブリは、良い意味で“ディーゼル車らしからぬ"味わいだったという。走り出しの力強さや、気持ち良い加速やブレーキングには、数々のスポーツカーを生み出してきたマセラティの血をしっかりと感じられたそうだ。
それは、“通常モード"と“スポーツモード"の乗り味の違いに顕著に現れているという。通常モード時は紳士的で余裕のある加速をするが、スポーツモード時にアクセルを踏むと、レスポンスが急速にあがり、腰がシートに押し付けられるほどの加速力を発揮してくれるという。
「エンジン音もまったく違うんですよ。通常モードの時は、テノールのようなサウンドで、伸びを感じさせる音を響かせてくれます。なのに、スポーツモードでは、ドリュリュリュというサウンドになるんです。
モードを変えただけなのに、自分は違うクルマに乗っているのでは無いかと錯覚してしまうくらい別物なんです。例えるなら、ハードロックやメタルも歌えるテノール歌手といった感じですかね」
ギブリの奏でるその音色は、世界一綺麗だと思っていると照れくさそうに肩をすくめた。響きの伸びが良く、どこか管楽器を思わせる音だという。
「僕は吹奏楽部で、ずっとトランペットを吹いていたんです。だから、管楽器らしいあの音に惹かれてしまうのかもしれないです。いい音を出すクルマって、日本車も輸入車もたくさんあるけど、僕好みの音を奏でてくれるクルマは、やっぱりマセラティだけなんですよね」
前野さんは、ギブリに五感を揺さぶられ、魅了されているのだ。
取材協力:フェスティバルウォーク蘇我
(⽂: 矢田部明子 / 撮影: 平野 陽)
[GAZOO編集部]
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