つなぎで買ったはずのホンダ・ビート(PP1)が楽しすぎて気付けばメインカーに!

  • ホンダ・ビート

小型で軽量なコンパクトスポーツカーを語る上で、1991年に発売されたホンダビート(PP1)は欠かすことのできない1台だろう。
自然吸気で鋭いレスポンスを実現するエンジンをミッドシップに搭載した後輪駆動で、ギアも5速MTのみ設定されたオープン2シーターの軽自動車だ。

残念ながら1996年には生産終了となってしまったが、今でもコアなファンが多く、メンテナンスやレストアを手がける専門店も存在する。

千葉県船橋市在住の近藤大輔さん(52才)も、2年前にビートを買ってからすっかりその魅力にはまってしまったひとり。

当時ビートを買った動機は「次のクルマへのつなぎとして」だったという。そんな近藤さんが、なぜビートを“つなぎ"から“本命"へと変えていったのか?

  • ホンダ・ビートのHロゴ
  • ホンダ・ビートに左サイド

「キッカケは2年前にそれまで乗っていたアルファロメオ147が事故に遭ったことです。次もアルファロメオを買おうと思っていましたが、そのつなぎとして前から一度乗ってみたいと思っていたビートに乗ってみたら、想像以上におもしろかったんですよね」

そう話してくれる近藤さんは子供のころからクルマが大好きで、若い頃はフォルクスワーゲンのゴルフなどを所有していたという。

家族を持ってからしばらくはファミリーカーに乗っていたものの、子供が大きくなってからアルファロメオ147を購入し、いろんなところへドライブに出かけるようになったという。

  • ホンダ・ビートの上からのフロント

「アルファロメオ147はハッチバックでボディもそんなに大きくないんです。独特な回り方をするツインスパークエンジンと音が気持ちよくて、走って楽しいクルマでした。

なので、できれば次もアルファロメオをと思っていましたが、せっかくだからとルポGTIやトゥインゴRS、ルーテシアのような小さくてスポーティーなクルマもいろいろチェックしていたんです。その中でビート専門店にも行ったところで、たまたまこの赤いビートが目に入り、気に入ったので購入することにしました」

  • ホンダ・ビートの右サイド

こうして2020年10月、近藤さんは1991年式のビートを購入。

「この年代のクルマは塗装がダメになりやすいので、全塗装してあるほうがいいなと思いました」と、ボディカラーが全塗装済みの車両だったことも購入動機のひとつだったそうだ。

「ビートってNAなのでパワーはないんですけど、エンジン特性がおもしろくて今時のクルマにはないくらいレスポンスがいいんですよ。それにパワステとかも付いていないので乗り心地がダイレクトなのもいいですね。

重ステをしんどいと感じたことはまったくありません。あまりの楽しさに毎週あちこち走りに行っていますよ!」

  • ホンダ・ビートの運転席
  • ホンダ・ビートのメーター

本命のつもりではなく“とりあえず”乗ってみたビートだったが、想像以上のおもしろさにすっかりハマってしまったという近藤さん。

そうなると、その楽しさを維持し続けるために必要なのが疲弊してくる消耗パーツだ。そこで、この2年間で、お金をかけて気になる部分のパーツ交換やオーバーホールを次々と敢行。

「10何万キロも走っている車両で、足まわりはいつ変えたものだか分からないので交換しました。ブレーキキャリパーも交換しています。それとギアの引っかかりが気になっていたミッションも昨年オーバーホールしたんですよ。

ただ、30年経っているクルマなので部品も手に入りにくいですしメンテナンスはビート専門店でお願いしています。パーツがなかったら作ったりもしてくれて、このミッションも中身のギアがもうなかったので違う車種のギアを流用してくれているそうです」

こうして2年間でしっかりコンディションを保つためのメンテナンスを行ったこともあり、近藤さんのビートは今ではカーライフに欠かすことのできないメインカーとなったわけだ。

  • ホンダ・ビートのお気に入りのタイヤハウスからエアインテーク

そんな近藤さんに性能面以外でのビートのお気に入りポイントを伺ってみた。

「見た目だと特にタイヤハウスからエアインテークのラインが気に入っています。ホイールはネットオークションで買ったスパルコのホイールです。ビート用ってちょっと特殊で、純正はフロントが13インチでリヤが14インチと異なるんですよね。

本当はワタナベホイールが欲しかったんですけど、現在発売されているものの中から似合いそうなものをセレクトしました」

  • ホンダ・ビートの赤を基調としたインテリア
  • ホンダ・ビートのステアリング
  • ホンダ・ビートの収納スペース

また、ボディカラーと同じ赤を基調としたアイテムでまとめられた内装も、スタイリッシュでとても美しい仕上がりだ。

「純正のプラスチックパーツが紫外線で白っちゃけていたので、赤いレザー系のカバーなどを探して装着しています。ウッドステアリングは実家で発掘した当時モノです」

さらにユニークなのが、ボンネット内にあるスペアタイヤ用のスペースにホームセンターで購入したストッカーを載せて収納スペースとして活用しているところ。

「これはビートオーナーの定番カスタムなんです(笑)。ここと後ろの小さなトランクに荷物を積む感じですね」

  • ホンダ・ビートのオーナーの近藤さんご夫妻

「もともとはアルファロメオ1台で生活できていたんですけど、より小型なビートにしたのでもう1台と、去年コペンを買いました。今は土曜日にふたりでコペンに乗って買い物に出かけ、日曜日の朝はビートで首都高にドライブに行くというかんじで過ごしていますよ」と素敵なカーライフを送っているようす。

取材に同行してくださった奥様の美有希さんもまたクルマ好きだそうで、「私の場合、父親の影響で運転というよりかは一緒にいろんなクルマを見に行ったりするのが好きなんです」とのこと。

「荷物も人もあまり乗れないクルマにこんなにお金をたくさんかけているのに…(苦笑)。ホントにありがたいです」と笑顔で奥様に感謝を表している近藤さんが印象的だった。

  • ホンダ・ビートの右前タイヤ
  • ホンダ・ビートの上部からのリア

「走行距離も18万kmに達するのですが、このビートにしばらく乗っていくつもりなので、少しずつオーバーホールしていずれ完全な形に戻したいと思っています。

僕の中で、ちゃんとしないと次のクルマにいけないんですよ。例えば還暦くらいになったときには次のクルマに…ということはあるかもしれませんが、それまでには完全に調子のいい状態にまでしておきたい。誰かに手放すとしてもそれからですね」

  • ホンダ・ビートのリア

つなぎのクルマから近藤さんのカーライフを楽しく彩る相棒となった真っ赤なビート。これからは、彼の手によって走行距離を重ねながらも、さらにベストなパフォーマンスを発揮できる最高の状態に仕上がっていくことだろう。

そんな極上ビートにいずれ乗ることになる次のオーナーは、とても幸運なのではないだろうか。

取材協力:フェスティバルウォーク蘇我

(文:西本尚恵/撮影:古宮こうき)

[GAZOO編集部]

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