見せてもらおうか!愛車への想い入れの強さとやらを。2013年式 トヨタ シャア専用オーリス(MS-186H-CA型)
「○○○専用」。
この「専用」という響きには、特定の人物や対象のみが扱うことを許される特別感がある。今回、取材が実現したクルマも、数ある限定車や特別仕様車とは異なる「専用」モデルだ。2013年にこの専用モデルを新車で購入し、現在も大切に所有するオーナーとその愛車にまつわるストーリーを紐解いてみた。
「私の愛車は2013年式 トヨタ シャア専用オーリス(MS-186H-CA 型。※本来の型式はDBA-NZE181H型/以下、シャア専用オーリス)です。新車で手に入れて11年、現在の走行距離は約5.2万キロ(いずれも取材時)です。当時、発売されていた2代目オーリスをベースにカスタマイズすることができたんですが、私は“150X Sパッケージ”をベースにシャア専用オーリスに仕立てています」
1979年に「機動戦士ガンダム」が放映されて以来、今日にいたるまでおよそ半世紀。「ガンダム」の名を冠した数多くの作品が生み出され、世代や国境を超えて熱狂的に支持されているロボットアニメの名作だ。
そのガンダムシリーズの原点である「機動戦士ガンダム」の劇中で、主人公であるアムロ・レイの宿命のライバルとして高い人気を誇るのが「シャア・アズナブル」だ。そのシャアが劇中で搭乗するモビルスーツ(いわゆる人型ロボット兵器)は、彼のパーソナルカラーである「赤」にペイントされ、非常に目立つ。そのため敵の標的になりやすい。
しかし、シャアは「通常の3倍」といわれるスピードで戦場を駆け抜けることで数々の功績をあげ、彼の所属するジオン軍きってのエースパイロットとなった。シャアの通り名でもある「ジオンの赤い彗星」は、敵を恐怖に陥れた圧倒的なスピードと、卓越した操縦テクニックに由来するものだ。
2013年8月26日、トヨタマーケティングジャパンより、「ジオンの赤い彗星」ことシャア・アズナブルの専用機をイメージしたカスタマイズカー「シャア専用オーリス」が同年10月1日より発売するとアナウンスされた。
その前年、2012年8月に「シャア専用オーリスCONCEPT」が発表され、大きな反響を得た。そして2013年1月からはバーチャルカンパニー「ジオニックトヨタ」がWeb上で設立された。なんと2万6千人もの社員が登録し、シャアの名言である「チャンスは最大限に生かす、それが私の主義だ」とばかりに、市販化に際してさまざまなアイデアが生み出された。
その結果、シャアがドライブするにふさわしい仕様に仕立てるべく、隊長機を示すブレードアンテナや、シャアを演じる池田秀一氏の声で案内する専用のカーナビなど、さまざまなこだわりが製品に反映されたのだ。ガンダムとトヨタのコラボレーション作品であると同時に、可能な限りユーザー(ガンダムファン)のアイデアが盛り込まれた意欲作といえるクルマだろう。
さて、オーナーが「シャア専用オーリス」を所有するくらいだから、ガンダムファンであることはいうまでもない。ガンダムファンであると同時に、熱狂的なシャアのファンなのだろうか。・・・というわけで、見せてもらおうか!愛車への想い入れの強さとやらを。
「住まいは東京なのですが、単身赴任で名古屋に住んでいた時期があったんですね。取引先の若い子でガンダム好きがいて『ここのディーラーにシャア専用オーリスのコンセプトカーが展示されているみたいですよ』と連絡をくれて、連れていってもらったんです。どうやら本当に発売されるようだと聞き、妻にシャア専用オーリスを撮影した画像を送ったんです。“戦いとはいつも二手三手先を考えて行うもの”ですからね(笑)。私としては単に『すごいね』くらいのリアクションを想像していたんですが、妻は『出たらどうせ買うんでしょ?』と返してきたんです。これは買ってもいいということだろうと解釈して(笑)、購入することにしました」
オーナーが所有するシャア専用オーリス(初代)は台数限定ではない(2代目のシャア専用オーリスは300台限定だった)。それならば急いで契約する必要はないかと思いきや・・・純正オプションが数量限定だったのだ。しかも、シャア専用オーリスを手に入れたいと思う人であればマストアイテムともいえる商品である。事実上の早い者勝ち。戦いは非情だ。
「フロアマットと専用のナビは各900台限定なんです。結局フロアマットは買わなかったんですが、シャアの声を担当する池田秀一さんが喋ってくるカーナビは欲しい。G-BOOK Mx Proモデルだと税込みで25万円オーバーは正直いって高いなぁと思いましたが、シャアの声でナビしてくれるのってやっぱり魅力ですよね。注文しようとしたときにカーナビは完売してしまったんですが、セールスの方から『キャンセルが出ました!』と連絡があり、手に入れることができたんです」
シャア専用オーリスは19のオリジナルパーツが用意され(セット販売および純正品を含む)、コンプリートカーだけでなく、オーナーの好みに応じてカスタマイズすることができた。そして、今回のオーナーは各部品を厳選して後者を選んだ。まさに「専用機」というわけだ。
ちなみに、シャア専用オーリスは大きく分けると「モデリスタパーツ」と「トヨタ純正用品」で構成される。さらに「モデリスタパーツ(シャア専用カスタマイズ)」と「モデリスタパーツ(ジオニックトヨタカスタマイズ)」に分けられる。内訳はこうだ。
※モデリスタパーツ(シャア専用カスタマイズ):シャア専用エアロキット・フロントスポイラー・サイドスカート・テールエンドユニット(リアスラスタータイプ)・シャア専用SIIDコクピットパネル
※モデリスタパーツ(ジオニックトヨタカスタマイズ):ZT指揮官用ブレードアンテナ・ZTグリルガーニッシュ[ブラックアウト&LED]・ZTコーションラベル&マーキングデカールセット・ZTエンブレム・ローダウンスプリング・ZT18インチアルミホイール&タイヤセット・ZTセンターキャップセット(トヨタ純正ホイール専用)・ZTステアリング(パーフォレーションレザー)・ZTエンジンスタータースイッチ・ZTキーケース・ZT車検証ケース
※シャア専用コクピット:シャア専用オーリスナビ「NSZT-W62G(G-BOOK mXモデル/G-BOOK mX Proモデル)」900台限定・シャア専用オーリスフロアマット/900セット限定
「私はというと、ZT18インチアルミホイール&タイヤセット、ZT指揮官用ブレードアンテナ、それとフロアマット以外のアイテムを装着しました。ブレードアンテナは現物を確認する方法がなくて、製品の耐久性や、機械洗車したときに壊れてしまうのではないかと思い、選びませんでした。むしろ妻の方が気に掛けてくれて、最後まで『ホントにつけなくていいの?』と聞いてきましたね(苦笑)」
ベース車両となるグレードにもよるが、19アイテムをすべて装着するとトータルで80万円〜100万円を超える。オプション代としてはなかなかの金額だ。こうして、無事に900台限定のシャア専用オーリスナビをはじめとするこだわりのオプションを装着したシャア専用オーリスが納車された。しかし、当時オーナーは単身赴任中だった。
「シャア専用オーリスは東京のディーラーで購入しました。名古屋から戻ってこられるのは月に2回くらい。当初はあまり乗れませんでしたが、その後、割とすぐに東京勤務に戻れたのでよかったです。その後、出張絡みで名古屋勤務時代にお世話になった人たちのところに乗って行ってお披露目することができました。じっくり実車を見る機会がなかったらしく、皆さん興味津々でしたね(笑)」
出張の絡みとはいえ、元赴任先でお世話になった人たちにお披露目するオーナーの義理堅い一面が垣間見える。そういえばひとつ気になることがある。「シャア専用の」オーリスだから手に入れたのだろうか。それとも?これまでの愛車遍歴について伺った。
「最初に手に入れたのが、フォルクスワーゲン ゴルフIでした。それから「赤のファミリア」を経て、マツダ コスモに。その後、日産村山工場で生産されていた時代のマーチ(K11型)に乗り換えました。このマーチに7~8年乗って、そろそろ買い替え・・・というタイミングで妻とトヨタディーラーに行ったとき、目に留まったのがアレックスだったんです。妻が『アレックスのお尻が気に入った』というので(笑)買い替えを決めました。
その後、家庭の事情で父の介護が必要になり、アレックスだと乗り込むときに頭をぶつけてしまうことが判明。それが当時デビューしたオーリス(初代)だと全高が5cm高いということで買い替えました。それでも父は頭をぶつけていましたけど・・・。その後、程なくして父は他界してしまったのですが、初代オーリスの足まわりがしっくりきていたのでしばらく乗っていたんです。そしてシャア専用オーリスが発売されて乗り換え、現在に至る・・・という流れです。私はいま57歳ですが、気づけばハッチバックタイプのクルマばかり乗り継いできましたね」
オーナーは「シャア専用」だから、という理由だけでオーリスを手に入れたわけではない。ゴルフIを原体験として、先代オーリスを含め、さまざまなハッチバックタイプのクルマを乗り継いで現在に至っている。ハッチバックタイプのクルマが好みで、しかもガンダムが好きなオーナーにとって、シャア専用オーリスはまさに「出会うべくして出会った1台」だといえる。ちなみに、歴代の愛車のなかで印象に残っているモデルはというと・・・?
「ゴルフIですね。高校のときの先生がこのクルマに乗っていて、助手席に乗る機会があったんです。今までのどのクルマよりも安心感があるように思いました。このときすでにゴルフIIが発売されていましたが、最初に買うのはゴルフIにしようと決めていましたね。ハッチバックタイプのクルマが好きになったのもゴルフIの影響が大きいです。若かったこともあり、ゴルフIで走りまわっていたら、3年間で7万キロ走破しました」
ちなみに、このゴルフIは高校時代の先生にも購入したことを報告したのだという。さて、ここからはオーナーとガンダムとの出会いについて伺ってみよう。
「ガンダムの存在を知ったのは中学生の頃でした。実はこのとき寮生活でテレビをあまり観ていなかったんです。夏休みに実家に帰省したとき、たまたまテレビで観たのが最初だったと思います。実は・・・映像としてのインパクトは、シャアよりもランバ・ラルの方が上なんです(笑)。ガンダムに撃破されてコクピットから脱出するときに放った『見事だな!しかし小僧、自分の力で勝ったのではないぞ!そのモビルスーツの性能のお陰だということを忘れるな!』というセリフにも痺れましたね。劇中の設定は確か35歳だったと思うんですが、いつの間にか自分の方が年上になっていました。でも、いまだにランバ・ラルの方が年上に感じますね。35歳とは思えない貫禄ですし(笑)」
機動戦士ガンダム(ファーストガンダム)を観たことがある読者なら思わずニヤリとしてしまうかもしれない。ちなみに、シャアの好きなセリフについても伺ってみた。
「シャアのキャラクターそのものは好きなんですけど、嫌いなセリフならあります。『逆襲のシャア』の劇中で、アムロに向かって『ララァ・スンは私の母になってくれるかもしれなかった女性だ!そのララァを殺したお前にいえたことか!』といい放つんです。シャアが戦争を起こした本当の目的は、終生のライバルであるアムロ・レイとの決着をつけるためだと分かったときは反感を覚えましたね」
すでにお気づきだと思うが、オーナーは盲目的なシャア・アズナブルのファンではない。幼少期に観て感じたガンダムと、大人になって改めて見返したガンダムでは同じ作品でも受け止め方がまったく異なる。それだけガンダムという作品が大人の鑑賞にも耐えうるだけの壮大な世界感を持っているという、何よりの証かもしれない。
これまでの愛車遍歴のなかでもっとも長い付き合いとなったシャア専用オーリス、気に入っているポイントを挙げていただいた。
「やはりこのスタイリングでしょうね。朝、出勤するときに自宅の駐車場に停めてあるシャア専用オーリスの横を通って出掛けます。そして仕事から帰ってきたとき、家に入る前に右斜め前を通って、たまにポンポンって叩くんです。普段、キーを持ち歩いているので、ウェルカムライトが反応するんです。お帰りっていってくれているみたいです」
これまで所有してきて、こだわってきたことは?
「維持していくうえで強いこだわりがあったわけではないのですが、しいていえばすべてディーラーでメンテナンスしていることでしょうか。街の整備工場の方が安く仕上げられるのは分かっていますが、安心してお任せできるのは大きいですよね。これまで消耗品を交換したくらいで、大きなトラブルはありませんし」
先述したようにオーナーが所有するシャア専用オーリス発売から2年後、300台限定で「シャア専用オーリスII」が発売されている。失礼ながら「さらにできるようになった」であろう、シャア専用オーリスIIには惹かれなかったのだろうか。
「まだ支払いの最中だったというのが一番の理由ではありますが、いまの愛車を手放してまで乗り換えようとは思わなかったんです。ファーストモデルの方がいいかもって思いました。でも、ファーストモデルを買い逃していたらシャア専用オーリスIIを手に入れていたでしょうね。ただ、先日販売が終了したダイハツ コペンに乗り換えようかと迷ったことはありました。例によって妻からは『いいんじゃないの?』とOKをもらってディーラーで見積もりも出してもらいました。しかし、見積もりを見せた妻から『分かったけど、でもシャア専用オーリスを手放してまで欲しい?』と再度問われて自問自答してみて・・・やっぱり手元に置いておきたいという気持ちが勝ったんです」
一般論として、見積もりを出すほどのテンションであればそのまま買い替える確率が高いだろう。しかし、オーナーは踏みとどまった。そんなオーナーにとって、このシャア専用オーリスはどのような存在なのだろうか。
「“手放す理由が見つかっていない、乗り換える理由が見つけられずにいる”というのが正直なところです。いまだに代わりになるクルマがないんです。もしいいなと思うクルマが見つかったら乗り換えるかもしれないし、見つからなければこのまま乗りつづけると思うんです」
これまで多くのオーナーを取材してきて、これくらいの温度感の持ち主の方が大切に長く所有する傾向が強いように思う。むしろ「一生乗ります!」と宣言して、あっさりと乗り換えてしまうオーナーも少なくない。要は力みすぎず、自然体の方が長続きするのだ。
最後に、この日は仕事で取材に同行できなかったという奥さまへ感謝のメッセージがあるという。
「私はディズニーも好きで、旅行を兼ねて世界中のディズニーテーマパークに何度も行っています。妻も嫌いじゃないから付き合ってくれているとは思うんですが、何回も行けば人によってはもうさすがに……ってなるはずです。クルマだけではなく、大体の私のわがままにつきあってもらっていることに感謝しています」
プライバシーの関係で隠してはいるが、シャア専用オーリスのナンバーにも愛妻家の一面が垣間見える。取材中も奥さまのことを慮る場面がしばしば見られた。今回は「見せてもらった!愛車への想い入れの強さとやらを」だけでなく、奥さまへの感謝の想いがひしひしと伝わる心温まる取材となった。
※この日のためにさまざまなコレクションを持参し、服装までコーディネートしてくれたオーナーに改めて感謝の気持ちを伝えたい。本当にありがとうございました。
これからも、シャア専用オーリス、そして奥さまとの幸せな日々が続くことを心から願うばかりだ。勝利の栄光を、君に!
(取材・文: 松村透<株式会社キズナノート> / 編集: vehiclenaviMAGAZINE編集部 / 撮影: 古宮こうき)
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