世界限定3000台のロードスター30周年記念車に当選! 貴重な1台を手に入れて起きたカーライフの変化とは……?

希少な記念モデルや限定車になると、ほしくても購入権利が抽選ということが多い。そんな価値ある1台に惚れ込み、諦めずに応募し、見事当選して購入する権利を勝ち取った幸運な人がいる。そのひとりが埼玉県行田市在住の山本博美さん(61歳)だ。

山本さんは、2019年に発売された世界限定3000台「ロードスター30周年記念車」の予約受付に応募し、見事当選。現在は、美しいレーシングオレンンジのカラーが目を惹く、この特別仕様のロードスターを相棒に、新たにできたロードスター仲間と充実したカーライフを送っている。そんな幸運を手にした山本さんに、このクルマを手にしたことでどのように変化したのか、お話しを伺った。

「僕がクルマ好きになったきっかけは、小学校のころ読んだ『サーキットの狼』という漫画です。免許を取ってからは中古のシビックにツインカム搭載のカローラ、そして新車でクレスタ、2.0GTターボなどのレガシィ2台と、比較的スポーティな仕様のクルマに乗ってきたんですが、定年したら本格的にマニュアルのスポーツカーに乗りたいと思っていたんです。ただ、新車で買えるマニュアルのスポーツカーは限られていますよね。そのなかで気になっていたのがロードスターです。そこで、この特別仕様車が出ると知って応募してみたんですよ」

このロードスター30周年記念車は、ソフトトップモデルとリトラクタブルハードトップモデル(RF)の2種が設定される。世界限定3000台だが、そのうち日本の販売割り当ては、ソフトトップが110台、RFが40台(のちに139台に増車)とかなりの狭き門だった。購入希望者は、専用のWebサイトから商談予約を申し込むスタイルで、まずはソフトトップから予約を開始。受付期間はわずか10日間で、しかも110台限定だけに、本気で買いたい人は迷う暇などなかったに違いなく、当然予約が殺到した。

実際に山本さんもソフトトップに申し込むも、あえなく落選……。それでもあきらめきれず、ソフトトップの締め切りから40日後に行われたハードトップモデルのRFへ再び応募する。こちらはもともとの40台から139台へと増車されたが、それでもソフトトップ以上に応募が殺到した。そんな高倍率の抽選だったが、山本さんは奇跡的に当選し、30周年記念車のRFを購入する権利を得たのだ。

「本当にびっくりしましたね。ディーラーさんと交渉して、もしも買わないなら権利を破棄することになっていたんですけど、どうしてもほしかったので借金まではしませんでしたが無理してお金を集めて買いました」

山本さんが購入した30周年記念車のロードスターRFの6速MT仕様の車両価格は430万3800円。たしかに権利を得られたからといって、一般のサラリーマンが「はい買います」と二つ返事で踏み切れる金額ではないだろう。その点からも山本さんの覚悟と、このRFロードスターへの期待が垣間見える。

「当選の知らせが届いたのは6月です。8月末くらいにラインオフ予定日の連絡がきて、9月はじめにラインオフして広島から関東に届きました。9月27日に納車だったので、当選から3カ月ほど待ちましたね。ちょうど消費税が上がるタイミングだったので、その前に納車できるように頑張ってもらいました。メーカーさんやディーラーさんに感謝ですね」

こうして2年前に晴れて山本さんのもとにやってきたRFロードスターは、特別仕様だけあり、さまざまな点でほかのNDロードスターとは一線を画す存在感を放つ。その一番の象徴は、やはりこの鮮やかで深い輝きを放つレーシングオレンジのボディカラーだろう。当然、山本さんもその美しさを長持ちさせるための対策を施した。

「納車してすぐ、ボディにはガラスコーティングを、ガラスにもコーティングを施しました。それと屋根付きの車庫なんですけど、結構ホコリがたまるので、そこは気にしてマメに洗車するようにしています。まあ、コーティングのおかげで水洗いだけでも汚れが落ちるので楽ですよ!」

また、所有欲を満たしてくれるのが、何と言っても世界に1台のクルマであることを証明するシリアルナンバーの刻印だ。山本さんのシリアルナンバーは「2302」。つまり3000台中2302台目となる。当然ながらシリアルナンバーは、一番のお気に入りポイントだ。クルマのナンバープレートもシリアルナンバーに合わせて「2302」をセレクトしているところからも、その喜びが伝わってくる。そして山本さんお気に入りの特別装備はほかにもある。

「外装だと30周年記念のホイールと、オレンジで塗装されたブレーキキャリパーも気に入っていますよ。それにオレンジのパイピングが入ったアルカンターラの限定内装のシートもいいですよね」

レーシーな雰囲気にマッチするレイズ製の鍛造アルミホイールには「30TH ANNIIVERSARY」の白い刻印が施され、ブレンボ製ブレーキキャリパーはボディと同じレーシングオレンジを採用するなど、随所に記念モデルらしいこだわりがちりばめられている。こういったプレミアム感が強いクルマを所有する場合は、一切いじらないという方も多いが、山本さんの場合は少し違う。ご自身で気に入ったパーツを取り入れながら、自身が運転を楽しめるように少しずつ、チューニングやドレスアップを施しているのだ。

「鍵を指す穴、キーホールのこのマグネットは後付けです。ネットオークションで購入した専用パーツで、ボディと同色にしてみました。小さい部品ですけど3500円と意外とするんです(笑)。それとマフラーは、見た目のドレスアップ効果を狙ってカバーだけつけています。本当はマフラーも変えたいんですけど、それはもう少ししてからかな。あと、車内に乗り込むときの保護として、ガレージベリーのスカッフプレートを追加しました。これは昨年のこのイベント(軽井沢ミーティング)のとき、ブースで見つけて買ったんですよ」

また、ドレスアップパーツ以外にも山本さんが運転を楽しむために追加したのが、ロードスターパーツ専門店ニーレックスのナックルサポートと、吊り下げ式アクセルペダルだ。

「ナックルサポートは、このクルマを買って知り合いになった方とはじめてツーリングに行ったとき、高速道路で揺れると話したら、その方がこのパーツを勧めてくれたんです。ロードスターオーナーの中では評判がよく、実際に装着した帰りに高速道路に乗ったら随分変わったのが体感できましたね」

そして、吊り下げ式アクセルペダルは、このイベント当日にブースで購入。取材時は、ちょうどショップ代表の手によってアクセルペダルの交換作業が行われていた最中だった。メーカーやショップ、そしてオーナーに関わらず、同じロードスターに乗る人が集まる「軽井沢ミーティング」らしい風景だ。

ちょうど交換作業中ということもあり、吊り下げ式アクセルペダルについては、作業中だったニーレックス代表の小林さんが説明をしてくれた。

「NDロードスター純正のオルガン式アクセルペダルは、踏み替えの少ない高速道路のような長距離移動に向いているんです。ただ、この吊り下げ式にすることで、街中でのストップアンドゴーやワインディングでのシフトチェンジなどはやりやすくなります。コーナーを楽しく駆け抜け、運転自体を楽しみたい方にはおすすめですよ!」と、交換するメリットを教えてくれた。

マニュアル車で存分に走りを堪能したくて、ツーリングにも出かける山本さんが、その場で購入するのも頷けるパーツというわけだ。

そしてそんな交換作業を行う山本さんの愛車を見守っていたのは、ミーティングを通して仲良くなったロードスター仲間の方々。

「普段は仕事をしているので、僕がこのクルマを運転するのは土日だけなんです。ちょっとした買い物と、ロードスターのお友達とのツーリングがメインですね。僕は埼玉県なので、毎月第2日曜日に埼玉県深谷市でロードスターの集まりがあるので、そこに行ったり、毎月最終日曜日に奥多摩で行われるミーティングにもたまに顔を出したりします。ロードスターの集まりに行くと友達が増えるし、情報交換もできるので、それが何より楽しみです」

山本さんがそう話すと、「仲間ができる集まりはいいよね。年齢が離れていたり、女性オーナーさんもたまにいらっしゃったり、年齢や世代を超えたオーナーさんと出会えます」と、みなさんがそのオフ会の良さに同意していた。

そしてニーレックス小林さんは、「ロードスターの一番いいところは、最強のコミュニケーションツールという点です。こういうミーティングに参加している人の8割は、じつはクルマなんてどうでもいいんです(笑)。共有する話題が大事という人達がとても多い。クルマに群がるより、人に群がるんです。その共有する話題がロードスターなんですよね。今日取り付けた吊り下げ式ペダルは、これがきっと次のオフ会の話題になる(笑)。うちは鍋の具を出しているんですよ」と、大小さまざまなミーティングが日本各地で開催されるロードスターならではの現象についてわかりやすく(?)解説してくれた。

集まる理由であったり、話のネタであったり、共通の話題になれるクルマ、それがロードスターの魅力。そのためにマツダはクルマを作り続け、そのネタとしてアフターパーツメーカーやショップがパーツを提供する。すると、自然とユーザーたちが集まり、会話や笑顔が生まれる——。そんなイメージだろう。これは、ロードスター独特の世界観かもしれない。

「もしこの特別仕様車が当たらなかったら、1500ccのロードスターのソフトトップを買おうと思っていました。でもこれじゃなかったら、みなさんとお知り合いになれることもなかったと思うので……。このクルマは確かに目立つんですが、だからといって街中で人が寄ってくるわけではないんですよね。ロードスターを好きな方が集まるミーティングだからこそ、このクルマでそこに行けば友達が増える。そっちが大事だと思っています」

山本さんが奇跡を起こし、さらにチャンスを逃さず手に入れた世界限定3000台の特別仕様車。それはずっと乗りたかったMTスポーツカーで運転を楽しむ夢を叶えただけでなく、同じロードスターを愛する大切な仲間との出会いをもたらした。ロードスターを愛するオーナーの注目を集めやすいこの特別な愛車は、きっとこれからも山本さんの世界を広げる大切な相棒となるだろう。

(文:西本尚恵/撮影:三木宏章)

[ガズー編集部]

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