90年代の激レア車 スズキ・X-90は癖になる愛車



この記事を読んで下さっているみなさんの中に、1995年10月に小型SUVとして発売された “スズキ・X-90”を実際に見たという人は何人いらっしゃるでしょうか?Tバールーフや3ボックスボディの2シーターという超個性的なキャラクターは、当時色々な意味で注目を集めたものの……人気は振るわず、わずか3年ほどでその幕を閉じてしまったというクルマです。

今回は、そんなX-90 × オーナーのkimuさんのお話をお届けします。

―――生まれてこの方、一回も実車を見たことがありません。

それ、よく言われます。まぁ、オーナーがこんなこと言うのもアレですが……。何でこれを、世の中に出してしまったんや?と思ってますから。

―――そんな!オーナーさんがそんなこと言っちゃ、X-90が可哀想ですよ!

いやいや、オーナーやからこそ言えるんですよ(笑)。

セリカにも乗ってるんですけど、街中を走っとったら「懐かしいクルマやね!」と声をかけられたり、憧れの眼差しを向けられることが多いのに、X-90に乗っている時は“目線の種類”が違うんです。

そうやね〜、どっちかというと「うわっ!なにあれ!」みたいな感じですね(笑)。そういえば、ずっと昔に全くクルマに興味のない友人をX-90で迎えに行ったら、「それ、クルマなん?」って言われたこともありましたねぇ(笑)。

というか、ここまできたら笑ってあげて!ネタにせんと、逆に可哀想やから(笑)!
だって、ぶっちゃけどうですか?カッコいいと思います?

―――好みの問題なので人それぞれですが、個性的で素敵だなと思います。

う〜ん。うまいこと逃げましたね(笑)。

―――もう!そこら辺で勘弁して下さい(笑)!

あはは(笑)、遠慮せんでいいのに!
僕が初めて見たのは高校生の時で、雑誌に載っていたんです。その時は、ほんまに変な形してるな〜というのと、発売されたはずやのに、街中で全く見いひんなと思っていました。

それもそのはず、なんと1300台ちょっとしか売れていなかったんですよ。死ぬまでに拝めたらラッキーやなくらいに思っていたら、なんと その数年後に友人が乗っていて、暫くすると使い勝手が悪いから乗り換えるということで、気付けば僕が乗ることになっていました。

―――愛車として迎え入れたら、また違う感情が芽生えたのでは?

いや、やっぱり思っていた通り、変なデザインしてるな〜というのが率直な感想です。というか、デザインが破綻してますよね。

ベースがエスクードやから腰高で、キャビンが異常に突き出していて野暮ったい。横から見たらとんがり帽子で、何となくUFOみたいやなと思います。

ちなみに、乗ってもあかんのですよ。速くない、良い音もせえへん、もさっとしとるんです。

―――あの……、何で乗っていらっしゃるのですか?

それはですね、何かよく分からないんですけど、乗っとったらめっちゃ楽しいからです。
駐車場に停まってるだけでおもろい、走っても特に特徴がある訳じゃなくてニヤッとしてまう、イベントでは「カルトカーやな」なんて言ってみんながネタにしてくれる。

そんなクルマって、なかなかないじゃないですか。

―――確かに、そんなクルマってなかなか無いですよね。

でしょう?友人から2016年に譲り受けて9年になりますが、正直なところ、もうそろそろええかな?と思うことが何度もありました。

だけど、いやいや、こんな癖のあるクルマ滅多にないぞと愛着が湧いて、ズルズル乗ってる感じなんです。呪いにかかってしまっているんですよ、僕は(笑)。

このね、ボディーカラーが赤色でマニュアルという、あまり見ない組み合わせも好きなんですよ。売り物はオートマが多いから、X-90のマニュアルは現在どれくらい残っているのかなぁ?

―――となると、維持が大変なのでは?

予想通り純正部品はどんどん廃盤になっていっているんですけど、どんどん経年劣化はしていってます。なので、他車部品の流用等々で乗り切っているのが現状です。

エアコン関係の修理はエスクードの部品等を流用しましたが、抜け抜けでガタガタだった足回りはモンローショック+純正バネにして、タイヤはマッドタイヤからミニバンタイヤに。白内障だったヘッドライトは、ハセプロのマジカルアートで復元しています。

これからも、経年劣化との戦いが続くでしょうけど、取り敢えず何も良い所を見いだせない残念極まりない車ですが、引き続き維持を楽しんでいきたいと思います。

だって、こんなにもおもろいクルマって、後にも先にもX-90だけじゃないかと思っていますから。

いつかは綺麗にオールペンしたいと話してくれたkimuさん。散々な言われようだった?X-90ですが、このクルマはkimuさんにとって、初めての珍車で2シーターで……と色々と思い入れがあるそうです。

今回取材を受けたことで、より愛着が湧き、やはり最高の相棒と再確認したと電話を切る直前に教えてくれました。
家の前に止められたX-90が、ニヤッとする光景が筆者の頭に浮かびます……。

【みんカラ】
kimuさん

(文:矢田部明子 写真:kimuさん提供)

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