新車から20年。わずか100台の限定車、1999年式トヨタ・アルテッツァ 280Tは家族同然の存在(SXE10型)
今回登場するオーナーは、トヨタのオフィシャルチューナーであるTOM’Sがチューニングしたコンプリートカーを所有する、53歳の男性オーナー。愛車である1999年式のトヨタ・アルテッツァ280T(SXE10型、以下280T)は、限定のターボモデルだ。搭載される1998ccの直列4気筒DOHCエンジンは最高出力280馬力を叩き出す。
280Tの生産台数は、AT車および MT車を合わせてもわずか100台のみという“激レア”なモデルだ。タービン・エキマニ・インタークーラー、インテークパイプは280T専用設計。その他、TOM’S製ECUやAdvox車高調、パワーアップに対応したインジェクター変更…等々、変更点は多岐に及ぶ。ちなみに、外観の特徴として「TEAM Netz」のエアロが装着されているが、オーナーの個体ではフロントリップスポイラーが取り外された状態となっており、現在は大切に保管しているという。
ベースとなっているトヨタ・アルテッツァは、1998年から2005年にかけて生産されていたFRのスポーツセダンだ。ボディサイズは、4400×1720×1410mm。パワーユニットは1998ccの直列4気筒DOHCエンジン「3S-GE型」と、直列6気筒DOHCエンジン「1G-FE型」を搭載したモデルをラインナップしていた。3S-GE型エンジンの最高出力は、NAながらMT車で210馬力、AT車は200馬力、1G-FE型エンジンは160馬力を発生する。なお、車名の「アルテッツァ(Altezza)」は、イタリア語で「高貴」という意味を持つ。
オーナーの個体は1999年式。新車で購入してから20年が経過しようとしている。実走行距離は約4万5000キロで、運転するのはおもに休日が多いという。
「大人が4人乗れて、しかも速く、貴重な4ドアスポーツなところが気に入っていますね。これまで一度も洗車機にかけたことはありません。必ず、手洗いにしています」
と、手に入れてから20年経っても変わらぬ愛情を注いでいるオーナー。これまでの愛車遍歴を伺った。
「今まで乗ってきたクルマは、メインと通勤で並行して所有しています。メインは20歳で買ったトヨタ・カローラFX GTをはじめ、トヨタ・マークⅡグランデ ツインカム、日産・プリメーラ、そして今の280Tになります。通勤用は、ホンダ・トゥデイ、ビート、ライフですね。中でもライフは3台乗り継いでいます」
オーナーのクルマ好きは何が原点だったのだろうか?
「やはり、年齢的にスーパーカーブーム抜きでは語れないですね。実車の展示は都心ばかりで、地方ではごくたまにしか催されませんでした。だから、珍しく近隣でスーパーカーの展示があると、カメラを持って出かけたものです。今、欲しいと思うスーパーカーは、フェラーリ・458。スーパーカーブームの世代としては12気筒エンジンを搭載したフェラーリが王道なんだと思いますが、V8エンジンを搭載した458も音が最高ですね。それに何といってもスタイルが好きです」
少年時代にスーパーカーブームの洗礼を受けたオーナーは、立派なクルマ好きの大人になった。余談だが、今年23歳になる娘さんも、父親の背中を見て育ったせいか、クルマが好きな女性に育っているという。特に、物心ついたときから一緒に過ごしてきたこの280Tが大好きだそうだ。そんな「家族同然」の280Tとの馴れ初めは?
「実は最初、日産・ステージアが候補だったんです。『260RS』という、RB26(GT-Rのエンジン)を積んだモデルが欲しくて、中古車も何度か見に行ったんですけど、クラッチの重さに買うのが億劫になってしまいました。そうした時期にタイミングよく280Tの存在を知りました。当時は、全国のネッツ店(全10店舗)に10台ずつ割り振られたうちの1台が、抽選で販売されるというので、すぐに申し込みました。30歳以上という年齢制限付きにもかかわらず、即完売でした」
果たして、抽選の結果はどうだったのだろうか?
「一度は抽選にははずれてしまいましたが、ディーラーのスタッフに、『キャンセルが出れば買う!』と伝えておいたんです。そうしたら本当にキャンセルが出まして(笑)。こうして、この280Tを購入することができました。このクルマはクラッチミートが独特で、納車した日は帰宅するまで何度もエンストしましたよ(苦笑)。パワーアップに対応したOS技研製のツインプレートクラッチが組み込まれているので、これは慣れが必要かもしれません。
主な乗り方は、週末の温泉旅行やワインディングを走るドライブです。群馬県の伊香保温泉から榛名湖方面…。あとは、草津温泉から軽井沢へ、そして碓氷峠のダウンヒルなども…。いずれも、漫画『頭文字D』の舞台となった場所ですね(笑)」
こうして、晴れて280Tのオーナーになることができたことが本当に嬉しかったという思いがひしひしと伝わってくる。取材中、改修前の富士スピードウェイを一緒に走ったという写真も見せてくれた。
このクルマはいわゆる「コンプリートカー」だが、自身でモディファイを施した部分はあるのだろうか?
「購入時に純正オプションはつけていないんですけど、部分的には手を入れていますね。まずはホイールを交換しました。リムの光っているタイプが欲しくて、RAYS製のボルクレーシングGT-Nを履いています。インチアップもしたいですけど、長く乗っていきたかったので、敢えてノーマルサイズを維持しています。それから、ボルトオンターボなのでAPEX(現A'PEXi)製のブースト計を追加しました。スピードメーターもフルスケールメーターに交換しています。それと、2脚のフロントシートはBRIDE製のセミバケットシートに交換しています」
生産から20年経つが、今まで大きなトラブルはなかったのだろうか?
「アクセルのレスポンスが悪くなったことがあって、スロットルボディを修理したことがあります。それ以外は、チューニングカーなのに不思議と壊れないですね」
ここで、少し意地悪な質問も投げかけてみたい。この280Tを手放してでも欲しい1台は存在するのだろうか?
「最近発表されたばかりのマツダ・ロードスターの30周年記念限定モデルが気になっています。オレンジ色のボディカラーがいいですね。結局は『限定車』に弱いのかもしれないです(笑)。でも、280Tは手放すつもりはなく、増車を考えるかもしれません。このクルマには、できるかぎり乗っていたいと思っていますから」
と穏やかに語るオーナー。実は今回の取材には、オーナーの奥さんにもご同席いただいた。モータースポーツ好きで、レーシングドライバー・本山哲のファンだという。オーナーにインタビューしている間も、相槌を打ちながらオーナーを優しく見守る姿が印象的だった。そんな「クルマ好き家族」のもとで大切にされてきた280Tからは、幸せなオーラが溢れ出ている気がしてならないのだ。
(編集: vehiclenaviMAGAZINE編集部 / 撮影: 古宮こうき)
[ガズー編集部]
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