食事もMaaSでOK!! 日本の先を行く、シンガポールのフードデリバリー事情

MaaS(Mobility-as-a-Service、ITを活用した統合された交通サービスのこと)の一部という訳ではないが、MaaSと切っても切り離せないサービスとしてはフードデリバリー・サービスがある。というのもフードデリバリー・サービスは、ライドシェア・サービスを展開する事業者が運営していることが多い。例えば米国のライドシェア・サービス事業者のUberは、米国と日本でUber Eatsと呼ばれるフードデリバリー・サービスを展開していて、米国ではUberとライドシェア・サービス契約を結んでいるドライバーがフードデリバリーも行なうという仕組みになっている。1つのプラットフォームで両方をカバーすることができるため高効率に事業を展開することができているのだ。

ここシンガポールでもそれは同じで、ライドシェア大手のGrabがGrab Foodのブランドでフードデリバリー・サービスを展開している。デリバリーそのものは二輪車などで行なうためライドシェアの車両を必ずしも利用している訳ではないが、ITのインフラは共用しており効率よくサービスの提供ができている。

出前が21世紀風に進化したフードデリバリー・サービス、出前の外注化で効率化

フードデリバリー・サービスとは、平たく言えば出前のこと。出前と言えば、日本でも「そば屋の出前」という言葉がよくもわるくも使われるように、電話注文を受けて蕎麦をゆで、おかもちを持った店員が届けに行く…… そういうシーンが思い浮かぶだろう。

しかし、この出前制度は、デリバリーにかかるリソースをお店が個々で用意する必要がある。電話を受けて注文を管理することも必要だし、そして何より届けに行く店員の人件費、そして自動車や二輪車を使うならその導入コストや管理コストが必要になる。だが、実際出前注文が多いのは昼だったり、夜だったりとある特定の時間帯だけで、それ以外の時間帯はこれらのリソースはただ遊んでいるだけで、あまり効率がよいとは言えない。

そこで、考えられたのがフードデリバリー・サービスだ。言ってみれば出前のアウトソース(外注)化だ。フードデリバリー・サービスを提供する事業者が、フードデリバリーを行なうドライバーやライダーと契約して、お店から利用者まで料理を届ける仕組みになっている。これによりお店は料理を作ることだけに集中できるので、より低コストで出前を利用者に提供できるという仕組みだ。

シンガポール最大のライドシェア事業者GrabはGrab Foodでフードデリバリーを提供

Grab Foodのアプリ画面、自分の現在地の近くで注文可能なレストランが表示される
Grab Foodのアプリ画面、自分の現在地の近くで注文可能なレストランが表示される

このフードデリバリー・サービスはライドシェア・サービスとの相性がいいと考えられている。その理由は2つある。1つは届けるドライバーはライドシェア・サービスと共有し、1つの車両で乗客でも、料理でも、どちらでも必要に応じて運べるからだ。もう1つは利用者とレストラン、そしてドライバーのマッチングというITのシステムもライドシェアとかなり近いシステムでいけるので、こちらの方も低コストで実現できるからだ。

Grabの配達員が配達する様子、Grabのコーポレートカラーのグリーンの保温バックをもっている

シンガポール最大のライドシェア事業者はGrabだが、Grabもその例に漏れずGrab Foodというフードデリバリー・サービスを提供している。利用するにはスマートフォンのアプリをインストールするが、そのアプリそのものはライドシェアのGrabとは異なっており、Grab Food専用のアプリとなっている。しかし、アカウントはGrabと同じアカウントを使うことができるので、Grabユーザーであれば、いちいちSMS(ショートメッセージサービス)で認証する必要などがないところがGrab Foodの強みだ。つまり、Grabのライドシェア・サービスを利用している利用者が、Grab Foodにとって潜在的な顧客といえるわけだ。

二輪車が配送の花形であるため、Deliverooやfoodpandaなどの欧州勢も健闘中

foodpandaの配達員、同社のコーポレートカラーであるピンクの保温バックですぐ分かる
foodpandaの配達員、同社のコーポレートカラーであるピンクの保温バックですぐ分かる

だが、フードデリバリー・サービスを提供しているのは、Grab Foodだけではない。シンガポールではイギリスのDeliveroo社が提供するDeliveroo、ドイツのFoodpanda 社が提供するfoodpandaなどがありサービスを競っている。

配達は何も二輪車だけとは限らず、このように電動キックボードなどが使われている場合もあった
配達は何も二輪車だけとは限らず、このように電動キックボードなどが使われている場合もあった
今回紹介している3社以外にもhonestbeeというデリバリー事業者も時々見かけた
今回紹介している3社以外にもhonestbeeというデリバリー事業者も時々見かけた

米国ではフードデリバリー・サービスがUber一強状態なのに比べると、シンガポールの場合、GrabだけでなくDeliverooやfoodpandaなどがあり、激しい競争が繰り広げられている。その背景として、シンガポールが都市国家であることが影響していると考えることができる。国土が大きな米国ではUberのようにライドシェアのクルマでフードデリバリーも行なうのが合理的だが、シンガポールのような大都市の場合は、クルマでのデリバリーは渋滞を考えると効率がわるく、二輪車や自転車といった渋滞にあまり影響を受けない乗り物を使う方が合理的だからだ。

実際、Grab Foodも配達には二輪車を利用していることが多く、シンガポールのあちこちで特徴的なGrabの緑の保温バックを備えた二輪車を見かけた。同じ事はDeliverooやfoodpandaにも言うことができる。

なお、東京でもUber Eatsが2017年からサービスインしており、東京の都市特性から自転車や二輪車を利用するライダーとの契約が中心になっている。シンガポールでも注目されているサービスであり、似たように国土が狭い日本においても、今後都市部を中心として、日本のフードデリバリーが拡大する可能性は大いにあるだろう。

使ってみて分かった、メリット・デメリット

最後に実際に使ってみて分かった各フードデリバリー・サービスのメリット・デメリットをまとめておく。

・メリット

どのサービスもキャッシュレスなので決済が楽。事前に支払いを済ませているので明朗会計。とくに海外では、クレジットカード決済となり、外貨の準備もいらない。

これも共通だが、雨の日など外に出たくないときには便利。また、夜など治安のよくない場所&時間帯でもホテルで受け取れるのは安心。

期待していなかったのだが、どのサービスも料理が温かかった。麺類についても工夫されていて、デリバリー・サービスの進化を感じだ。

今回試した時点ではGrab Foodは手渡ししてくれた。

Grab FoodやDeliverooは、アプリから配達スタッフの位置が分かり、見える化ができていた。

foodpandaのアプリは、スマートフォンの言語設定を読み取って一部日本語になった。

・デメリット

配達料も加わるためか、料金はお店で食べるよりは高くなる。

配達時間が少し長いかも?

foodpandaは、配達員の位置が分からなかった。

スマートフォン1つでレストランに行かなくても食事が注文できるのは便利だ(写真はDeliverooのアプリ)
スマートフォン1つでレストランに行かなくても食事が注文できるのは便利だ(写真はDeliverooのアプリ)

[ガズー編集部]

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