ロードスターの魅力、さらに広がる 2代目 マツダ・ロードスター・・・・・・懐かしの名車をプレイバック

  • マツダ・ロードスター 2代目 NB

ヘッドランプをはじめフロントデザインを一新して登場した2代目「マツダロードスター」。しかし、目立たぬ部分での地道な改良点は数多く、名車の誉れ高い初代から、さらなる進化が図られていた。

最初の出会いはパーティーレース

第2世代となるNB「ロードスター」と筆者との付き合いは、それなりに長い。最初にオーナーになったのは2003年。筑波サーキットで開催される「パーティーレース」に参戦するために1.6リッターエンジンを搭載する「NR-A」グレードを手に入れた。パーティーレースは今も続くロードスターのワンメイクレースだ。そしてNR-Aは、レース専用グレードとして用意されたもの。どちらもNBの時代に入った2001年に登場している。

ちなみにロードスターそのものとの付き合いはさらに古くて、7年ほどさかのぼる。初代ことNAロードスターと、マツダが自らチューンした「M2 1001」の2台を乗り継いでいた。この2台のNAロードスターは、さんざんイジリ倒したうえにサーキットを走り込んだ。そして腕に自信が持てたということで、開催2年目を迎えたパーティーレースに参加したのだ。

そんな筆者がいま思い返してみても、パーティーレースとその参戦用の車両であるNR-Aは画期的だった。

まずNR-Aが素晴らしかった。その前のNAロードスターでサーキットを走ろうと思うと、冷却系やらブレーキパッドやら、いろいろと改造が必要であり、お金も手間もかかった。ところがNR-Aは、酷暑のミニサーキットを一日中走り続けても、まったく問題ないほどタフ。つまりお金がかからなかったのだ。

しかもパーティーレースは、いわゆるNゼロ(ナンバー付きの無改造の車両)でのレース。つまり、普段の街乗りにも使える車両でレースをする。そのハードルの低さゆえ、レースに参加するのは「レースを楽しみたい」というオーナードライバーばかり。「プロの登竜門」ではないから雰囲気はノンビリしていて、そのなかで伸び伸びとレースが楽しめた。幸運なことに1シーズンのみの参戦ながら、2回表彰台に上がれたし、優勝も1回できた。今に続くパーティーレースにNR-Aを駆って、最初期に参加できたことは、個人的にとてもうれしい記憶のひとつである。

初代の美点をそのまま継承

その後、NR-Aは手放してしまったが、2005年にNBロードスターの最後の年のクルマを手に入れた。そのNBロードスターは、2022年にNDロードスターに乗り換えるまで、17年にわたって愛車として乗り続けたのだ。そういう意味で、NBロードスターとの付き合いは、それなりに長いというわけだ。

では、なぜ17年もの長い間、NBロードスターに乗り続けてきたのか。端的に言えば、非常にいいクルマだったからだ。

まず、NBロードスターで良いのは、NAロードスターの美点をしっかりと引き継いでいたことにある。NBロードスターは、見た目こそNAから大きく変わったものの、メカニズムの多くはNAロードスターそのものだった。実際にNA用の部品は、そのままNBロードスターに装着できた。つまり、NBロードスターはNAのビッグマイナーチェンジ版ともいえるものだったのだ。もちろん、基本はそのままに、品質も性能もブラッシュアップされている。そのため、FRスポーツカーとしての基本を守りながらも簡素かつ軽量で、とにかく運転が楽しかった。

言ってしまえば、2000年代でありながらも、1980年代末期に登場したNAロードスターそのもののテイストが味わえたのだ。そうした利点は、年が過ぎるほどに大きくなる。2010年代は日本車の燃費性能と安全性能、運転支援システムの機能が大幅にアップした。反面、クルマは鈍重になるばかり。新型モデルを試乗すれば、毎回その便利さには感心するが、一方で、帰宅後には毎回NBロードスターの軽快さが再認識できた。NBロードスターは、まるで自転車に乗るような気安さ、気楽さ、楽しさを味わわせてくれたのだ。その結果、ついつい長く乗り続けてしまったのである。

間口の拡大も大きな功績

もうひとつのNBロードスターの素晴らしさは、ロードスターの世界を広げたことだ。例えば、ロードスターの「シンプルで軽量である」という魅力を突き詰めると、エンジンは、それほどパワフルである必要はない。そうした要望をかたちにしたのが、1.6リッター直4エンジンに5段MTを組み合わせた基本グレードだ。最高出力は125PSしかない。NR-Aも、この1.6リッター+5段MTがベースとなった。

一方、スポーツカーらしい性能を追求した、1.8リッター直4エンジンに6段MTという内容のグレードも用意された。その最高出力は最終的に160PSにも達している。さらに350台の限定だったけれど、172PSのパワフルなターボエンジンを搭載した「ロードスターターボ」も2004年に発売された。同じく350台限定で2000年に発売された、流麗なルーフを備える「ロードスタークーペ」も記憶に残る一台だ。

つまり、NBロードスター時代には、素の良さを追求する1.6リッターモデル、モータースポーツ用のNR-A、そしてスポーツカーの性能を磨いた1.8リッターモデル、パワーを追求したターボ、さらには美しいクーペまでもが登場している。多彩なモデルを用意することで、ロードスターは、幅広い層のファンを引き付けることが可能となったのだ。

この幅広いファンがいることで、ロードスターの世界は、より充実し、より魅力的なものになったといえる。そしてその成果のひとつが、個性豊かなファンが数多く集う、年に一度の「軽井沢ミーティング」だろう。イベントが盛り上がるからこそ、ファンのロードスターに対するロイヤルティーは高まる。そうした今があるのも、NAの魅力を受け継ぎ、そして世界を広げたNBロードスターという存在あってこそのものではないだろうか。まさに名車である。

(文=鈴木ケンイチ)