移動手段としてだけじゃない“クルマの楽しさ”をたくさん教えてくれる『シビック先輩』(EK9)

  • ホンダ・シビック タイプR(EK9)

「7つ上の兄がシビックに乗っていて、いろいろな場所に連れて行ってくれたんです。そのドライブが本当に楽しくて、僕がクルマ好きになったのはそれがキッカケだと思います。小学校の送迎とかにカッコいいクルマで来てくれることもちょっとした自慢でしたね。

兄は自動車整備士になるための専門学校に通っていて、しょっちゅう庭先でクルマいじりをしていたんですけど、僕は兄がガチャガチャやっているところをジーッと眺めて、一緒になって構造を見たり仕組みを理解したりするのが楽しかったんです」

岩崎さんが ホンダ・シビックタイプR(EK9) に乗るようになったのは、そんな幼い頃の思い出がふと瞳の底によみがえったからだそうだ。

  • ホンダ・シビック タイプR(EK9)の右リア
  • ホンダ・シビック タイプR(EK9)のホイール
  • ホンダ・シビック タイプR(EK9)のマフラー

そんなクルマ好きとして大きくなった岩崎さんも自分でクルマをいじることを楽しんでいて、バイクのエンジンをバラすなどメカニカルな作業も好きなのだそうだ。

1人で作業するのが難しいことに関しては「〇〇日空いてるから来いよ。一緒に見てやるよ」と言ってくれる助っ人(もちろんお兄様)がいるのも心強い。

もちろんシビックには、こだわりのカスタムが施されている。
外装はボルクレーシングのTE37ホイール、レーシングカーやサーキット仕様のクルマには必須アイテムの牽引フック、スプーンスポーツ製マフラー、レーシングギアのサーキット仕様ダンパーなど、少しずつ自分好みに交換していったのだそうだ。

  • ホンダ・シビック タイプR(EK9)のエンジンルームとオーナーの岩崎さん

なかでも気に入っているカスタムは“インテグラ98spec純正エキマニ”を装着したことだという。

「シビックタイプRのB16Bエンジンと、インテグラタイプRのB18Cエンジンは、構造がよく似ていて流用できるパーツが多いんです。エキマニもシビックの純正は鋳鉄製なんですけど、インテグラはステンレス製で、交換したら4kgくらい軽量になりました。それにインテグラのエキマニは等長なので、エンジンを高回転まで回したときの性能アップにもつながります。

性能面ではもっと優れた社外製品もあると思うんですけど、個人的には他車種流用でも純正部品の方がシビックに合うのかな? あまり負担がかからないのかな? と思ったので、あえてコレを選んだんです。結果的には『やっぱり変えて良かった』と思わせる走りをしてくれるようになりました」

  • ホンダ・シビック タイプR(EK9)VTECステッカー
  • ホンダ・シビック タイプR(EK9)のエンジン

とにかく車重が軽くて、元気のいいエンジンでキビキビ走ってくれると満足げな表情を見せてくれた岩崎さん。とくに、VTECに切り替わった際のサウンドは、思わず笑ってしまうくらい“いい"のだという。

「可変のタイミングが分かるんです。もともと加速はスムーズなのですが、そこから更にパワーが出るようになって、ターボ車みたいな加速に切り替わります。底力を見せてくれると言うか、回さない時とのギャップが凄くて、その違いに思わず笑っちゃうんですよ。こんな能力を隠し持っていたのか!みたいな感じです(笑)。

その時のエンジンサウンドや、シートに背中をぐっと押し付けられる感じは、VTECならではだと思いますね。そして、マニュアルというのがまた良いんです。自分で操っている感じがあるし、オートマに乗っていると飽きちゃうのに、シビックはいつ乗っても満足させてくれます」

  • ホンダ・シビック タイプR(EK9)のインパネ
  • ホンダ・シビック タイプR(EK9)のシフトノブ

そうVTECサウンドの魅力を熱く語ってくれたが、もちろん気に入っているのは外装や走行性能だけではない。
内装についても真っ赤なレカロシートやMOMOステアリング、チタンシフトノブ、カーボン調のパネル、黄色のメーター針など数え切れないほどの“好き"が詰まっているという。

なかでも1番好きなのは、インパネ部分にある“シビックタイプR"のエンブレムだそうだ。なんでも、他車でこの部分にエンブレムがあるのはあまり見たことがないそうで、開発者さん達のこだわりを感じる部分なんだと教えてくれた。

そして、作り手のこだわりが感じられる箇所はそれ以外にもあるという。

「サングラスを置く “サングラスホルダー”というのがあって、オプション装備だったみたいなんですけど、これってあってもなくても実は困りはしないじゃないですか。だけど、シビックには外せないアイテムだと思ったんだろうなぁ~と考えるとなんだか楽しいし、より愛着も沸いてくるといいますか。

もしかしたら、当時は必須アイテムだったのかも?と考えると面白くて。あっ!それで言うと、当時はこうだったのかな?というアイテムはまだまだありますよ」

  • ホンダ・シビック タイプR(EK9)のステアリング
  • ホンダ・シビック タイプR(EK9)のメーター
  • ホンダ・シビック タイプR(EK9)のエンジンのキーホルダー

「当時は350mlの飲み物が主流だったらしく、ドリンクホルダーには500 mlのペットボトルが入らないので助手席にゴロンと転がしています(笑)。

サンバイザーの所にある大きめのクリップは、駐車場の券などには大きすぎるから、おそらく高速道路の通行券とかを挟むためのものだと推測しています。
あとはカセットテープとCDと、ちょっと小さめの昔のCDみたいな…えっと、なんだっけ?そうそうMDカセット! それが使えるオーディオが付いています。

こんなふうに僕が子供の頃にかすってもいないような不思議な装備やアイテムがシビックにはたくさん登場するんです。『これなんだ? どうやって使うんだ?』って、乗れば乗るほど色々なことが分かって飽きないですよ」

  • ホンダ・シビック タイプR(EK9)のレカロシート

カーナビなどの便利機能が付いてないという不便なところも、グッとくるポイントなのだという。

「僕がシビックを選んだのは“移動手段"として以外に、楽しませてくれるところが多かったからなんです。

例えばセミバケットシートの肩ベルトを通す穴がプラスチック製で、ちょうど後頭部にあたるので、仕方なくシートパットを取り付けました。こういうのって『使いにくい』と言ってしまえばそれまでだけど、じゃあどうする? って考える楽しさがあると思えばそれは長所です。

人によって感じ方はそれぞれだけど僕は“便利=良いクルマ”とは思わないです。また、違ったところにクルマの楽しさがあるのかなと感じます。だから、僕はシビックが好きだし、可能な限りは乗り続けていたいです」

  • ホンダ・シビック タイプR(EK9)とオーナーの岩崎さん

「このシビックは僕と同い年なんですよ。厳密にはシビックが平成10年3月生まれで、僕は平成10年4月生まれだから、学年で言うとシビックの方が1個上になるのでシビック先輩です。だから『乗せてもらってる』という気持ちで、これからも一緒に走って行けたらなと思っています」

オーナーになり5年の月日が経とうとしているが、免許を取って1番最初に乗った思い入れのあるクルマであり、クルマであってクルマではない、シビックはそんな存在だという。

1人と1台は、これからどれくらいの時を一緒に過ごすのだろうか? どんな思い出を作っていくのだろうか? 目まぐるしい環境の変化のなかで、また新たな絆が生まれていくに違いない。

取材協力:フェスティバルウォーク蘇我

(⽂: 矢田部明子 / 撮影: 平野 陽)

[GAZOO編集部]

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