26歳の女性オーナーが手塩にかけた愛車。2018年式 スバル BRZ STI Sport(ZC6型)

56.4%。

この数値は、ソニー損害保険株式会社が毎年1月に発表している「新成人のカーライフ意識調査」から引用したものだ。今年の新成人1,000名(1999年4月2日~2000年4月1日生まれ)のうち、56.4%が運転免許を保有しているという。つまり、約6割の新成人が運転免許を取得しているということだ。

ちなみに56.4%の内訳として、マニュアル運転免許が20.3%、オートマ限定免許は36.1%だという。

お気づきのように、もはやオートマ限定免許の割合の方が高いのだ。確かに、現在販売されているクルマのほとんどがオートマ限定免許で運転できる。中古車をはじめ、レンタカーやカーシェアリングも大半がオートマ車だ。マニュアル車に乗れなくても困ることはほとんどない、といっていいだろう。

しかし、マニュアル車の運転の楽しさを知る者であれば「もったいない…」と思うかもしれない。自分の意思でエンジンの回転数を制御でき、シフトアップ&シフトダウンも思いのままだ。その気になれば、絶妙なクラッチミートとシフトワークでオートマ車以上にスムーズに走らせることもできる。渋滞時の移動には苦痛を伴うかもしれないが、それをおぎなって余りあるほど、マニュアル車には筆舌に尽くしがたいほどの魅力がある。

今回、ご紹介するオーナーは26歳の女性だ。運転免許はもちろんのこと、これまでの愛車遍歴もすべてマニュアル車だという。高校生の頃はパティシエを目指していたというが、ふとしたきっかけで進路を変更。高校を卒業して自動車整備専門学校に進学、そのまま社会人となって自動車業界に身を置いて現在にいたるというのだから、人生なにが起こるか分からない。

そして、オーナーである彼女が所有する愛車には、厳選されつつもさりげないモディファイが加えられ、センスが光る1台に仕上げられている。そのあたりのこだわりについても触れてみたいと思う。

「このクルマは2018年式 スバル BRZ STI Sport Cool gray khaki Edition(ZC6型)です。2年9ヶ月前に手に入れてから6万5000キロ乗りました。実は、BRZとしては2台目なんです。東京モーターショーに出品されていたこのボディーカラーを見て気に入ってしまったものの…100台限定販売だったんです。そこで、抽選販売に応募して当選、ようやく手に入れることができたクルマなんです」

スバル BRZといえば、トヨタ 86の兄弟車として2012年にデビューを果たした。初代モデルにあたる「ZC6型」は2020年まで生産が続けられ、同年11月18日に後継モデルとなる新型のBRZ(米国仕様)が発表されたばかりだ。

オーナーが所有する“STI Sport Cool gray khaki Edition”は、2017年の東京モーターショー スバルブースに展示され、注目を集めたモデルとして記憶している人が多いはずだ。BRZ STI Sportをベースに、スバル XVのボディーカラーとして設定されている「クールグレーカーキ」が採用された100台限定のスペシャルモデルだ。それゆえ、街中で見かける機会は少ないかもしれない。受注多数のため抽選販売となり、オーナーは見事に当選。愛車として迎え入れることができた幸運の持ち主である。

BRZ STI Sport Cool gray khaki Edition(以下、BRZ)のボディサイズは、全長×全幅×全高:4240×1775×1320mm。エンジンは「FA20型」と呼ばれる排気量1998cc、水平対向4気筒DOHCエンジンが搭載され、最高出力は207馬力を誇る。グレードによって多少の差異はあるにせよ、車両重量は1200kg台。さらにNAエンジン+FR+軽量(そして、純粋な内燃機関)という条件がそろったクルマだけに、今後は希少な存在となっていきそうだ。おそらく、86と同様、平成時代に誕生した名車として後世に語り継がれていくに違いない。

さて、前置きが長くなってしまったが、オーナーのBRZには一連のモディファイに対するポリシーというか、確固たる信念のようなものが感じられるのだ。装着しているタイヤをよく見ると「Michelin Pilot Sport 4」がチョイスされている。これにも明確な理由がありそうだ。改めて、ここにいたるまでの彼女の原体験から伺ってみることにした。

「父親がクルマ好きで、私が小さい頃は毎週のように筑波サーキットへ連れて行かれたように思います。両親が一緒にサーキットに行くので、子どもの私もついていくしかなかったんですよね(苦笑)。正直いって音がうるさいし、何が楽しいのかなと思っていました。

実は、高校生の頃まではパティシエを目指していたんです。それがあるとき、家族で出かけていたら、背後からものすごい音を立てて私たちを追い越していったクルマがあったんです。父親に尋ねたら『あれはランボルギーニ ガヤルドだ』というんですね。私も“こういうクルマがあるんだ”と思い、そこからランボルギーニ、そしてクルマに興味を抱くようになったんです」

自慢の愛車で出かけるとき、どこかで誰かの人生を変えてしまうかもしれない…ということを、オーナーは常に肝に銘じておく必要がありそうだ。事実、一瞬の出会いが、彼女のその後の人生を変えてしまったのだから。

「当時、私は女子校に通っていたんです。それまでは休み時間はレシピ本を読んでいたのに、急にクルマ関連の雑誌を開くようになったから、周りも驚いていましたね。高校卒業後は、自動車整備の専門学校に進学しました。そこでサービスアドバイザー向けの学科を専攻して、卒業後はとあるディーラーに就職。現在もそこに勤務しています。このBRZに乗って会社に行くこともありますよ。職場の人たちには『このクルマに乗ってるの?』と驚かれますね」

オーナーは自動車に関するプロフェッショナルだ。厳選して部品を選び、モディファイしている点にも合点がいく。車内にぬいぐるみがあることに気づかない限り、オーナーが女性とは職場の人たちですら気がつかないかもしれない。

「1台目のBRZが最初の愛車だったんです。86よりもBRZの顔つきがかわいいと感じたので、こちらを選びました。前期型で、ボディーカラーはWRブルー パールでした。weds製のホイールと柿本改製のマフラーを替えただけで、割と街中でよく見かける仕様だったんです。抽選販売だった“Cool gray khaki Edition”を購入できることになり、そういえば前期型にはあまりお金をかけてあげられなかった分、今回はきちんと仕上げたいな、という想いがありましたね」

そんなオーナーの愛情と、細部にいたるこだわりが惜しみなく注がれたモディファイについて伺ってみた。

「スカートリップ・サイドアンダースポイラー・リアサイトアンダースポイラーはSTI製です。もともとはツヤ消しですが、ピアノブラック調にペイントしました。リアウィングはUS STI製を選び、屋根にPRO COMPOSITE製のハーフカーボンルーフを装着しています。ホイールはBBS製、TRD製のフェンダーエクステンションを装着することで、車検にも対応しています。ちなみに、フェンダーフィンもTRD製です。エキゾーストマニホールド・メタルキャタライザー・マフラーはパワークラフト製、サクションパイプはBLITZ製、 あとはREAL製のステアリングなどです。アイデアは私が出すのですが、部品のセレクトや色分けはレヴォーグを所有する彼氏の方が得意なので、アドバイスを受けながらモディファイしています」

つまり、このBRZはお互いの知見や得意分野を活かしたお二人の合作というわけだ。モディファイした箇所を声高に主張せず、さりげなさが感じられるのもお二人のセンスの成せる業なのかもしれない。レアな限定車をベースに、彼氏のアドバイスが反映された愛車だけに、オーナーである彼女の思い入れもひとしおだ。なかでもこのボディーカラーは特にお気に入りのようだ。

「この仕様だと、他のBRZや86とボディーカラーが被ることは滅多にありません。その代わり、同色のXVオーナーさんとはよく目が合いますね(笑)。ボディーカラーの“クールグレーカーキ”は、日差しがあると水色に、夜はグレーに見えるんです。光によって見え方が違うおもしろい色だなと思いますね」

せっかくなので、マニュアル車の魅力についても語っていただいた。

「1台目のBRZももちろんMTを選んだし、運転免許を取得して初めて乗った家のクルマ(スズキ アルト ラパンSS)もMT車でしたね。“自分で操る楽しさ”はMTでしか味わえないと思うんです。ATだとアクセルとブレーキペダルしか踏まないし、自分で操作している感覚が得られない気がします」

オーナーのコメントは、マニュアル車乗りであれば多くの人が共感できるのではないかと思う。かなりの完成度のように見受けられるが、今後のモディファイの予定については?

「外装の仕上がり度合いは100%。これでキマリです。でも、トータルの満足度は60~70%くらい。パワー不足を感じることがあるので、HKS製のスーパーチャージャーを装着しようか思案中です。サーキットよりも高速や山道を走る方が好きですね。グイグイ曲がる楽しさはあるけれど、もう少し足回りを強化してあげたほうがさらに楽しく走れるのかな…と思っています」

それと…年に2万キロは乗るので、年に1度はタイヤを交換するように心掛けています。以前はポテンザS001でしたが、乗り心地が硬く感じたので Michelin Pilot Sport を選びました。やはり、タイヤ選びは重要ですから」

モディファイはあくまでもさりげなく。それでいて、タイヤなどの消耗品には投資を惜しまない。自動車に深く精通しているオーナーならではの愛車に対する接し方はメリハリが効いており、多くのクルマ好きにとって参考になりそうだ。最後に、今後このBRZとどのように接していきたいか尋ねてみた。

「新型のBRZはおそらく買わないでしょうね…。予定どおりスーパーチャージャーを装着するとしたら、しばらく乗り続けることになると思います。その一方で、実は彼氏のレヴォーグに乗って以来、ステーションワゴンに魅力を感じるようになりました。日本ではまだ未発売ですが、ボルボ V60 Rデザインなんて素敵だなと思いますね」

余談だが、いつか将来、ランボルギーニは…?

「私はいいかな…。彼氏は欲しいみたいですけれど。仮に将来結婚して、彼氏がランボルギーニを買いたいといっても反対はしないと思いますよ」

夫婦・カップルを問わず、共通の話題や趣味があった方がいいと思う。より喜びも悲しみも共有できるからだ。唯一の欠点は、こっそり部品や関連用品を購入しても、すぐに見つかったり、値段がバレやすいことくらいだろうか(笑)。

ときには意見が食い違ったり、ケンカをすることもあるかもしれない。しかし、それも思い出のひとつだ。生産台数わずか100台という“BRZ STI Sport Cool gray khaki Edition”。そのなかの1台は、こうして大切に、2人の人生に欠かせない存在となっていることは確かなようだ。

(編集: vehiclenaviMAGAZINE編集部 / 撮影: 古宮こうき)

[ガズー編集部]

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