長年の撮影ドライブで得た情報をお客さんにフィードバック。床屋を営む心優しいZ34オーナーの想いとは?
SNS全盛の今、愛車を写真に収めることを趣味とする方はとても多いですよね。しかし1シーンの撮影に1日かけることもザラで中には数年にわたって撮ることもあるくらいにこだわるような方は、ほんの一握りではないでしょうか?
千葉県在住のShinyaさん(49歳)はそんなこだわりを実践されているフェアレディZ34オーナー。そして彼のSNSにアップされている趣のある美しい画像の数々は多くの方を魅了し、日産オフィシャルインスタグラマーにも選ばれているほど。
今回はそんなShinyaさん×Z34の物語をお届けします。
――Shinyaさんの撮影されたお写真はどれも雰囲気のある素敵なものばかりですね! 写真は昔からの趣味ですか?
いえ、Instagramをはじめたのが2015年くらいで、それまではガラケーやスマートフォンで撮るくらいでした。ただ、その頃って夜景も今ほど綺麗に撮れないし、なにかカメラを買おうと、最初は5万円のミラーレスにしたんです。
――そこから徐々にステップアップしていったのですね
そうですね。ただ本格的に撮り始めたきっかけはあって。
僕は自営業の床屋なんですが、その当時白のニスモ仕様のZ34に乗っていたお客さんがガンで闘病中だったんですよ。それで彼の入院中に僕のクルマであちこちで写真を撮っていれば、その人が出掛けた気分になるのではないかと思ったことが1番のきっかけになりました。もうその方は亡くなってしまいましたが…。
あとは僕自身が実はバセドウ病で、運動が苦手で仕事もできなくなるくらいしんどい時期があったんです。でも床屋だからハサミを持つちからとシャッターを押す力はあったんですよね。だからがんばろうって。
――まさかそんな深い理由があったとは…。クオリティの高い仕上がりはShinyaさんの性格ゆえでしょうか?
ミラーレスを買った頃はカメラのことを理解していなかったのでただ撮るだけでしたが、そのころスーパーカーに乗る友達ができて「足立さんの写真綺麗だね」と言ってくれて撮って欲しいと頼まれることが増えたんです。
そのうちに、ポルシェを題材にしたポルシェ911のフォトコンテスト(上の写真)で賞をいただいたり、雑誌『option』の愛車フォトコンテストで優勝したりするようになりました。
『オプション』に応募した“クルマ×飛行機”の撮影はそのころ僕くらいしかやっていなかったので、合成だと思われていましたが…(笑)
――賞を獲ったのはShinyaさんの感性が素晴らしいのだと思いますよ! 秘訣はなにかありますか?
実は僕が写真を撮るときは、普通の人が考えられないくらい時間をかけるんですよ。5年越しで撮っているものもあったりするくらいで、朝日が昇る前から撮りたい場所に出ていきます。
飛行機とのコラボ撮影も、当時は午前中からメロンパンをかじりながら陽が落ちるまでずっと撮影していましたね。
あとはInstagramって外国人が好きなイメージがあって、Z34は日本のクルマなのでそれを外国人に見せたかったというのがあります。だから桜の写真はかなり時間をかけていて、この地面が桜だらけの写真も6年かけてやっと撮れたものです。
――素敵なお写真の数々はそれだけの苦労の結晶というわけですね。納得! それでは、このカッコいいZ34ついてもいろいろ教えてください。
買ったのは2012年で僕が40歳の時です。30歳で独立してお店を出して、そのローンが10年で終わってひと段落した記念に購入したんですよね。
――いい記念ですね。なぜZ34にしたんですか?
最初R34スカイラインを買おうと思っていたんですけど、たまたまお客さんだったチューニングショップ『テップス』の社長が黄色のZ34をお店に乗ってきたのを見て「かっこいい!」と一目惚れして、それに決めました。
それからは距離が少なくてボディが白でオレンジの内装のものを探していたところ、インターネットで名古屋のお店から4年落ちの2008年式で7800kmという条件に見合ったクルマがでてきたんです。
さらにそのお店でランエボを購入した友達から間違いなく良いショップと聞いていたことと、向こうに住む友人からも同じように聞いていたので、実物を見ないまま購入しました。
――評判をしっかりリサーチするのは大事ですよね。クルマは昔から好きだったんですか?
はい。最初のクルマは180SXでした。本当はR32スカイラインが欲しかったんですけど、その時買えなくて妥協した結果です。でもかっこよかったからオールペンも2回してエンジンもフルチューンさせて25、6歳まで乗ったかな。
その後結婚してbBやウィッシュに乗って、さらに急にお店を構えることになったのでボロボロのマーチに変えて、それが壊れてもう一台またマーチを乗っていましたね。
――そこからのZ34ですか?
いいえ。その2台目のマーチに乗りながらR32型スカイラインの白いクーペモデルを友達から40万円で買ったんです。高校生の頃に見たR32クーペがカッコよくてその当時の思い出が残っていたことと、GT-Rよりもアクセルを踏み切れるタイプMが好きだったので。
――ではその後このZ34に乗り継いだのですか?
はい。スカイラインはテップスの社長が引き取ってくださり、さらに社長はお祝いでZ34のマフラーとコンピューターのセッティングもやってくれたんですよ!
――それはすごい!
ですよね。しかもマフラーも「うちのを試着してみるか?」って。まあ、試着とはいえテップスのマフラーは4本出しでバンパーを切ったので、元には戻せなかったんですが(笑)
――確かに(笑)。そういえば購入時エアロはなにか装着されていました?
ニスモのSチューンパッケージというフルエアロです。最初はそれでもいいと思っていたんですけど、お客さんがバージョンニスモの白に乗っているのを見てからは心変わりして外装全部をバージョンニスモに変更しました。
あとちょっとだけこだわりがあって、リアスポイラーを元の3本足から真ん中を切って2本足に変更しています。
――内装もこだわりがあったりしますか?
至ってそのままですね。ただ3月末に自分の50歳の誕生日の祝いも兼ねて、最近ボロくなってベタベタしてきたダッシュボードをヘッドライトと共に新品にしました。
――ではこれからも長く乗り続ける感じですか?
いやー、実は少し前、本当はクルマを売っちゃおうかと悩んだんです。というのも、今親の介護とかで色々忙しくほとんど乗る時間がとれなくて、バッテリーが上がらないように月に1、2回夜動かしているという状態でして…。
あまり乗ることができないし維持し続けるかどうしようか悩んでいたんですけど、ある時友達に「日々のストレスとかの解消にとっておいたほうがいいよ」とアドバイスをもらったんです。
それと僕、2016年か17年くらいに「日産オフィシャルインスタグラマー」に選ばれまして、日産自動車のInstagramに写真を載せていただいているんです。アメリカの日産にも写真の依頼をいただき、5年間くらい季節ごとに写真を送ったりしていたこともありまして…。
――確かにそうなるとやっぱり手放しづらいですよね
そうなんです。あとは友達との思い出も残っていましたし今すぐは手放さないと思いますけど、今やっているリメイク作業は次のオーナーに大事にしてもらいたいからっていう想いがあります。
ちなみに20歳の息子にクルマをやると言ったら、「いらないかな。運転するのも大変だしまだ軽自動車のほうがいい」って言われまして(苦笑)。でもたまにドライブの運転手やモデルはさせていますけどね。
――大事にしてくれるならだれかに譲ってもいい、と?
まあ、タイミング次第ですね。とりあえず今年は直して綺麗にしていく予定です。
――なるほど。ちなみに普段乗りのクルマは別にあるんですか?
ホンダのN-ONEがあります。実は運転はこの軽自動車の方が好きなんですよ。海沿いの細い道まで行けるので。
最近はこのN-ONEで金谷フェリーの乗り場の近くにある『カフェえどもんず』に月1、2回行くのが1番の楽しみです。
下道でわざと2時間かけて自分の好きな音楽をかけてのんびり気持ちをリセットしています。マスターの青山さんがめちゃくちゃいい人で、駐車場にある黄色いスバル360と一緒に写真を撮ったりもするんですよ。
Z34に乗る機会は減っても、N-ONEのおかげでカーライフが充実しているわけですね!
そうですね。軽は便利なパートナーという感じで、Z34はエンジン音の高揚感や所有の喜びがあります。
――それでは今後このZ34でやってみたいことはありますか?
今は昔みたいに時間をかけてクルマの写真を撮るのは難しいのですが、これまで海沿いなどで撮ってきた写真の情報を床屋のお客さんにフィードバックしていまして。
例えば若い子が来店すると「今の時間はここがいいよ」とか「この時間に行くといい写真が撮れる」とか「デートならここを通るといいよ」といった感じに。
おじさんとしては彼らに役立つ方法を教えてあげたいなと。
それにお客さんには僕のInstagramを見て、わざわざ来店してくれる方もいるんですよ。そういう繋がりも大事にしていきたい。
――そのフィードバック、きっとお客さんはすごく嬉しいでしょうね!
そうだと思います。今って、最新のクルマに乗らなくても「自分の好きなモデルに乗っているのがかっこいいじゃん」って流れがあると思うんですよね。
だから若い子が200万円もする古いシビックを「買いました」と言って来てくれると、本当にかわいくて仕方がなくて、お客さんのクルマが納車されると写真を撮ってあげるんですよ。するとみんなアイコンにしてくれます(笑)
Shinyaさんの数々の素敵なお写真はすべて誰かを想って撮影されている…だからこそ見る人の心に残るインパクトを与えるのかもしれません。
そして「お客さんが大事な愛車をもっと好きになるようスペシャルな思い出作りができたら良いなと思って写真をやってきた」という心優しいShinyaさんの想いは、これからもお客さんへの「情報」という形で脈々と受け継がれていくことでしょう。
【Instagram】
Shinya.z34さん
(文:西本尚恵)
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