クルマの新しい所有の形を提案する「サブスクリプション」―クルマのトレンドワード⑩
自動で走ったり、電気で動いたり、インターネットにつながったりと、クルマを取り巻くトレンドは今、めまぐるしく変化を続けている。この連載では、なんとなく分かった気になってしまいがちな最新キーワードを整理して、現在進行形のクルマのトレンドに迫っていく。
第10回のキーワードは「サブスクリプション」だ。
- サブスクリプションでクルマの所有に新しい形が加わる
毎月固定の料金を支払うことで、電子書籍が読み放題になったり、音楽が聴き放題になったり、動画配信が見放題になったりする。
「サブスクリプション」(Subscription:定期購読)と呼ばれるこの仕組みは、本やCD、DVDを購入・所有するのではなく、使いたいときだけ使うという考え方から生まれたもので、日本でも利用者が増えている。
そして、このサブスクリプションをクルマに当てはめたサービスも始まっている。
メンテナンス費・任意保険もコミコミ。トヨタのサブスク「KINTO」
- KINTOという名称は、西遊記の筋斗雲のように「必要なときにすぐ現われて、思いのままに移動できる」ことをイメージしたもの
https://kinto-jp.com/
日本では、“クルマは買うもの。その考え、お古いかと”という刺激的なキャッチコピーのテレビCMが記憶に新しいトヨタの「KINTO(キント)」が代表的な存在だ。
世界に目を向けると、各国の自動車メーカーも独自のサブスクリプションサービスを展開しており、2017年2月にゼネラルモーターズ「ブック」、2017年11月にポルシェ「パスポート」、2018年5月にBMW「アクセス」、2018年6月にメルセデス・ベンツ「コレクション」、2018年9月にアウディ「セレクト」が始まっている。
クルマを所有するのではなく、使いたいときだけ料金を払うという形なら、レンタカーやカーシェアリングという選択肢もある。
特に、コインパーキングで車両を見かけることの多くなったカーシェアリングは、スマートフォンアプリなどで認証すればすぐに乗ることができて、数十分というごく短い単位で利用できたり、返却時に満タン給油が必須でなかったりと、レンタカーよりも気軽に使うことができる。
しかし、クルマのサブスクリプションは、レンタカー/カーシェアリングとはまったく違うものだ。
クルマを購入・所有するには、頭金や毎月のローンなど車両自体の代金に加えて、税金、保険料、駐車場代、ガソリン代、メンテナンス費用などが発生する。
クルマのサブスクリプションでは、駐車場と燃料の費用こそ必要になるが、それ以外を月額料金としてまとめることで、乗り出しにかかる初期費用や毎月の負担をおさえることもできる。
もちろん、車種やグレード、カラー、オプション類は、一定の範囲内で自由に選択できる。オプションとしては、ナビや安全装備、寒冷地仕様、冬タイヤなどに加え、リモートスタート(遠隔でのエンジン始動)や、ハイブリッド車のアクセサリーコンセント、希望ナンバーなども選択が可能だ。
ニュアンスとしてはカーリースに近いが、例えばKINTOは月額料金に任意保険が含まれており、またリースでは難しい中途解約が可能なので、転勤や結婚・出産などユーザーのライフスタイルの変化にも合わせやすいというメリットがある。
KINTO ONEはレクサス8車種を含む31車種から選べる
KINTOは、トヨタやレクサスのクルマを3年間乗り続ける「KINTO ONE」と、レクサスを3年間で最大6車種乗り継ぐことができる「KINTO FLEX(旧KINTO SELECT)」の2種類のサービスを用意している。
2020年2月上旬時点で、KINTO ONEは月額3万2780円~のパッソをはじめ、月額19万8000円~のレクサスLXまでの31車種を設定。発売したばかりのヤリス(月額3万9930円~)や、発売1か月の受注台数が月販目標の約8倍を記録したライズ(月額3万9820円~)など、最新モデルや人気モデルもラインナップに名を連ねる。
各車ともグレード、カラー、オプションが細かく選択できるので、新車を購入するときと変わらないわくわくした気分を味わえるのもポイントだ。
もう1つのKINTO FLEXは、レクサス ES、IS、RC、RX、NX、UXの6車種が対象。6か月ごとに1台、3年間で6台を乗り継ぐ月額19万8000円のプランと、1年ごとに1台、3年間で3台を乗り継ぐ月額17万6000円のプランを用意している。高級車を次々と乗り換えていくというサブスプリクションならではのシステムは、クルマ好きにとってはこのうえない贅沢だ。
ホンダは中古車を使った最短1か月からのサブスクを開始
- 最短1か月から中古車を利用できるホンダの「マンスリーオーナー」
https://www.honda.co.jp/monthlyowner/
そして、日本国内ではトヨタに続き、ホンダも最短1か月から最長11か月までユーザーの好みに応じた期間で中古車を利用できるサブスクリプションサービス「マンスリーオーナー」を2020年1月にスタートした。
まずは埼玉県のホンダ認定中古車販売店である「U-Select城北」でサービスを開始し、今後順次拡大予定だという。
対象車種はN-BOX、フィットハイブリッド、フリードハイブリッド、ヴェゼルハイブリッド、N-BOX車いす仕様車の5種類(2020年4月からS660も対象車種に追加予定)を用意。
税金、メンテナンス費用、自動車保険料なども含めて月額2万9800円~の設定となっている。
このように、カーシェアリングとは一線を画す付加価値を見出すことができるクルマのサブスクリプション。これまでのマイカーの概念を変える、新しいクルマの所有の形として大きく広がる可能性を秘めている。
次回はコネクティッドカーにおける有人オペレーターサービスについて説明する。
[ガズー編集部]
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