[S耐向上委員会Vol.29] 小河諒選手「ファンサービスについてもっと意見をぶつけ合いたい」
スーパー耐久をもっと盛り上げるために、いろいろな方がお持ちの想いやアイデアをお届けするGAZOO.comのコンテンツ「S耐向上委員会」。
第29弾はST-4クラスに参戦する3号車 ENDLESS SPORTSの小河諒選手です。
小河選手は、往年のレースファンはご存じトヨタのワークスドライバーであった小河等選手のお子さんですが、その薫陶を受けることはできなかったものの弱冠22歳でポルシェカレラカップジャパンでチャンピオンを獲得しています。その後も全日本F3のNクラスのタイトルや、スーパー耐久でも2016年にST-4クラスに初参戦でクラスチャンピオンを獲得するなど、早くから実績を残してきたドライバーです。
そんな小河選手に、スーパー耐久が盛り上がるためのアイデアについて伺ってみました。
スーパー耐久はクラスごとに“面白いの質”が違う
ちょっと前までは究極の草レースみたいなイメージで、海外でいうとニュル24時間レースみたいな位置づけだったと思うんですけど、今はST-Qクラスができたり、FIA GT3、GT4の台数が増えてきたこともあって、プロドライバーと戦える国内最高峰のレースになってきているのかなと思います。
この上というとSUPER GTくらいしかなく、ジェントルマンドライバーの方や、これからプロを目指していくという若手ドライバーが参戦するのは難しいと思います。でもスーパー耐久であればチャンスさえ掴めば、プロドライバーに挑めるし、ジェントルマンドライバーでもプロドライバーと戦うことができます。
僕はST-4、ST-3、ST-Z、ST-Qクラスに参戦したことがあります。クラスが多すぎて観戦しているみなさんには少し難しいかもしれないですけど、どのクラスでもバトルがあってそれぞれの戦いがすごく面白いですよね。
例えば、ST-ZクラスとST-4クラスでは面白いの質が違って、ST-ZクラスはBOPがあって、コースによってマシンの得手不得手があるので、そのあたりの戦略とか、とりこぼしのないレースをしなければいけません。
ST-4クラスは86号車のトムススピリットがクラスを引っ張っていってくれているので、いかにトムススピリット、TOYOTA GAZOO Racingに挑むかっていうところが、僕たちのチャレンジ精神を掻き立てるところですね。
メーカーとチームの関係がリニアになってきている
また、ST-Qクラスに28号車ORC ROOKIE GR86 CNF conceptと61号車Team SDA Engineering BRZ CNF Conceptが開発車両としても参戦してくれています。
28号車は使っているエンジンが違うんですけど、61号車については僕たちと同じエンジンですし、制御系の先行開発をしてくれていて、その情報がけっこうリニアにST-4クラスに下りてくるんですよ。
実は、富士24時間レースの時にトラブルが起きた際に修理と対応を一緒に手伝ってくれたのは、61号車のエンジニアのみなさんなんです。
しかも第3戦SUGOで勝利を挙げることができたのも、レースの前にわざわざスバルの方たちが僕たちの都内にあるメンテナンスガレージにきてチェックとかをしてくれています。
こうしたことには、今までのスーパー耐久にはなかったリニアさとメーカーの歩み寄りをすごく感じています。
自分たちも走っているのに原因究明を一緒に手伝ってくれるなどすごく助かりますし、逆に僕たちもトラブルをどんどん洗い出して、いいクルマづくりが世の中に広がってくことのお手伝いができればいいなと思います。
エンドレスでいうとブレーキとサスペンションの開発をレースという一番過酷な状況で戦いながらさせてもらっているので、それをGR86、86乗りの方にフィードバックできるというのもすごく楽しみですね。
各所が一体となってファンサービスへの意見をぶつけ合いたい
レースを観てくれる人もそうですが、やっぱりサーキットに来てくれる人を増やしたいので、現実的なところでいうとチケットの値段がどうにかならないかと思います。どんどんチケットの値段が上がって、ファンの方がレースの観戦に来にくい環境になってしまっているような気がします。
S.T.Oさんも各サーキットとしても大変だと思いますけど、観客のみなさんのコストを落として、気軽にサーキットに来ることができるようにして欲しいです。また富士24時間レースに関しては、キャンプとコラボしたりする新しい取り組みを持続して欲しいと思います。
もちろんサーキットに来てくれるファンも大事にしつつ、サーキットに来ることができないファンにいかに臨場感を伝えていくのかも大切だと思います。
S耐TVとかS耐カードとか頑張って配信してもらってますが、今海外のレースでは無線とかオンボードのライブ配信が始まっているので、全車にカメラをつけるのは難しいかもしれないですけど、トライしてみると面白いと思います。
またあまりにもクラスと台数が多くて、自分が見たいクラスをS耐TVでたまにしか観られないですよね。
できれば今のAI技術ももっと使って、自分の選んだチームをずっとAIが追いかけてくれるみたいな定点カメラがあったりするとおもしろいと思います。
ナスカーとかインディカーは自分の見たいクルマを選ぶとそのクルマをずっと追いかけてくれるカメラがあるんですよ。それだと応援しているチームをずっと把握できたりとか、逆にいうと僕たちもライバルの走りを見たりすることができるので、そういった新しい技術も取り入ていって欲しいですね。
あと、スーパー耐久のいいところは、ファンのみなさんとドライバーの距離がSUPER GTに比べると近いと思います。SUPER GTはプロの国内最高峰レースなので、ドライバーも集中していてピりついているところがありますが、スーパー耐久はレースもゆったりと流れていくので、ドライバーもリラックスしている人も多いです。
それなのに、SUPER GTよりもファンサービスの時間が短いのはもったいないと思いますね。ピットウォーク、グリッドウォーク以外にも、もっとイベントとかを入れてもいいんじゃないかなと思います。
スーパー耐久、サーキット、メーカー、チーム、ドライバーとみんなの協力がないと進んで行かない話なので、全員でこの業界を盛り上げるようもっと一体になって、遠慮せずにお互い意見をぶつけ合っていけたらと思います。
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いかがでしたでしょうか。
小河選手はご自身のYouTube「小河諒の【Driving Radio】」などを拝見してもすごくお話が上手なんですが、テキパキと思うことをお話いただく姿には、普段からレースが盛り上がるために何が必要なのか考えていらっしゃるんだろうなということが感じられる取材となりました。
また、GAZOO.comのピットツアーの企画に対しても「いつうちのチームに来てくれるんだろう」と言っていただけるほど、ファンサービスに対して想いを持っていらっしゃいます。
ファンサービスを充実させることはファンを増やす、サーキットに来てもらういいきっかけとなることは間違いないので、GAZOO.comでもピットツアーに続くファンサービスの企画を考えていけたらと思います。
(文:GAZOO編集部 山崎 写真:スーパー耐久機構、GAZOO編集部)
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