「運命的な再会とつながる思い」US仕様の日産サニーカリフォルニア(B310型)が結ぶストーリー
現在27歳であるKさんのマイカーは、81年式の日産サニーカリフォルニア(B310型)の後期型。エンジンはA型を搭載している。
車検に通る範囲内でライトチューンされた仕様(アメリカ仕様のボディカラー、ニスモ・ソレックスφ44mmのキャブレター、フジツボのタコ足など)が気に入り、購入したとのこと。
アメリカ仕様にカスタマイズされたサニーに出会い、6年間というカーライフを経たことで、今ではその魅力にどっぷりハマっているのだとか。
今回は、サニーカリフォルニア×Kさんのお話です。
――今乗られているサニーとはいつ出会ったんですか?
僕がまだ18歳で高校生だった頃、知り合いの車屋さんに置いてあるのを見つけたのが出会いです。そのお店にはよく出入りをしていて、ひっそりと佇むその存在が、ずっと気になっていましたね。
マイカーとして迎え入れるのは、その3年後、社会人1年目になるのですが、せっかくの初マイカーというのもあり、自分の誕生日に、このクルマを購入しました。
――誕生日が更に特別な記念日となったわけですね!サニーはお店で見た当初から狙っていたんですか?
実は、最初はそこまでの気持ちは無かったんです。そのお店は、スカイラインを主に取り扱っていて、最初はジャパンと呼ばれるC210型スカイラインが欲しくて相談もしていました。
ですが、派手な改造や荒い使われ方をされたであろう車体が多かったんですよね…。長く乗りたいという条件には当てはまらず、他にも気になるクルマが多々あったので悩んでいました。
――悩んだ末、サニーカリフォルニアを選んだ決め手は何でしたか?
その頃、特にキャブ車に惹かれていたのと、ステーションワゴンにも魅力を感じ始めていて、お店の人にエンジン音を聞かせてもらったんです。
サニーのキャブレターの音を生で聞いたら「もう、これだ!」って思ったんです(笑)。自分の中でビビビッときたのが決め手でした。中学生の時からSNSの動画で、キャブ車のエンジン音ばかり聞いていた、ちょっと変な子だったんですよね(笑)。
――全く変じゃないですよ!小さい頃からクルマが好きだったんですか?
それなりにといった感じでしょうか。小さい頃はレースゲームなどを、ただただゲームとして楽しんでいました。好きで仕方がないという気持ちは、その時は一切無かったです。まさか、今ではここまでハマるとは、全く予想していませんでしたね(笑)。
――では「旧車のカッコ良さ」に気付き始めたのはいつ頃ですか?
中学生の頃、クルマ系の雑誌を読んでいた時だと思います。自分が生まれる前に、こんなにカッコ良いクルマが存在していたんだという、旧車の存在やカッコ良さを初めて知って感動しました。それからはどんどん好きになっていきましたよ。
――なるほど、だから高校生の時はお店にも通っていたんですね。ところで、サニーは海外でも売られていたことは知っていたんですか?
全く知らなかったです。アメリカ仕様の限定色であるブルーが気に入りましたが、アメリカ仕様だから買ったというようなこだわりは無かったです。
でも、今思えばUSDM(アメリカ車っぽいカスタム)にハマったのも、このサニーがきっかけだったのかなと思います。本当に面白くて、今ではアメリカ仕様に夢中なんですよ(笑)。
――どういうところが面白いんですか?
例えば、アメリカのモデルは、5マイルバンパーという、アメリカ内の義務に基づいて、大きなバンパーが付いているんです。そして、そのアメリカスタイルを真似たバンパーが、日本で売られていたサニーカリフォルニアの標準バンパーだったんです。
それと、日本モデルとアメリカモデルでは、見た目が同じでも違いがあるんですよ。
日本モデルのバンパーの留め具はステーなんですけど、アメリカモデルは、時速5マイルで走っても、車の重要な部分が損傷してはいけないという基準に基づいたものなので、中にショックが取り付けてあるんですよ。
そういう違いに気付いた時に、めちゃくちゃ面白いなって感動しましたね。他にも違いがあるのですが、アメリカならではの交通事情に合わせて作られたサニーに、ものすごく惹かれました。
――めちゃくちゃ面白いですね。この違いはご自身で発見されたんですか?
それが、サニーのイベントで出会った、サニーの北米仕様のセダンに乗られている人に話をお聞きして初めて知りました。「実はここはね…」っていろいろなことを教えてもらえて、ずっと話に釘付けで…。
それと、教えてもらったといえば、僕の前のオーナーさんからも、いろいろ教えていただけました。
――店頭で売られていたのに、前オーナーさんと会えたんですか?
とある集まりに行った時に、SNSの動画撮影をしている人たちがいて、僕のサニーがたまたま映り込んだんですよ。それで、偶然その動画内のシーンを、ネット上でオーナーさんが見つけたらしく、SNSでダイレクトメッセージをいただけました。
前オーナーさんが所有していた頃のことを教えてもらったり、当時の写真まで送っていただけて…。その後、実際にお会いしてお話することも出来たんです。
――なんだかすごく運命的ですね。サニーにはどんな過去があったんですか?
まず、このサニーは、実は有名なショップで製作されていたモノだったということ。
もうひとつは、前オーナーさんの体調があまり優れず、所有が難しくなったところ、僕の通っていたお店が買取をしたということ。色直しをした後に店頭で販売したというエピソードを教えていただきました。
――今のサニーの姿を見て前オーナーさんはどんな反応を?
サニーとの再会にかなり感動されていました。クルマが人に与える影響はすごいものだと聞いたことはあったけど、本当なんだと、この時実感しましたね。当時の姿のまま乗っているのがすごく嬉しかったようで「ありがとうございます」と感謝していただけました。
――Kさんが大切に乗られているのが伝わったんですね…。前オーナーさんはどういう思いで乗られていたんでしょうか?
かなりこだわりを持っていたみたいです。サニーをショップで製作したビルダーさんのお話もお聞きしたのですが、その方も結構有名な方で…。きっとその方との思い出も詰まっているのだと感じました。
前オーナーさんは、大切なサニーを見ることができてかなり勇気付けられたみたいでした。今では体調も回復されたようで、僕もこのクルマに出会えて本当によかったと心から思います。
――人の思いがたくさん詰まったサニーだったんですね。Kさんが約6年間大切に乗られてきた中で、楽しい瞬間ってどんな時でしたか?
運転中ですかね。日々、乗っていて気持ちの良いクルマだなと感じています。例えば、キャブレターの吸気する音を聞くと、やる気が出るというか、テンションが上がってアドレナリンが出てくる感じがするんですよ。
初めてサニーを運転した時なんかは、夏場で猛暑日だったのですが、エアコンの風が出ない状態だったのに、気にならないくらい運転が楽しくて楽しくて…。
2時間くらいずっと運転に夢中で、クルマから降りた時に初めて頭痛に気付いたんです(笑)。危うく熱中症になりかけましたが、それくらい魅力的なクルマです。
今でもドアを開けた瞬間から、なんだか現代のクルマとは違う感覚を覚えます。
――お話をお聞きしていて伝わりますが、Kさんにとってサニーはとても大事な存在なんですね。
そうですね。自分が声を大にして『これが好き』って言えるものです。日々のストレスの息抜きの場というのもあり、今後も可能な限りずっと乗り続けていきたいです。ただやっぱり形あるもの、いつかは……というのは、ある程度は覚悟しています。
それと、前オーナーさんや関わってこられた人との“共同製作”といったら押し付けがましいですが、意思を受け継ぎ大切に乗りつつも、今後は自分の色も少しずつ加えられたらと思っています。
「過去のエピソードや繋がり、新たな発見ができるのも旧車ならでは。貴重な体験なんです」と笑顔で語るKさん。
サニーが結ぶ人々のつながりは、前オーナーさんがKさんを見つけられたように“偶然ではなく運命”なのではないかと、筆者は強く感じられました。
【Instagram】
Kさん
(文:秦 悠陽)
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