[S耐向上委員会Vol.22]荒重憲エンジニア「ピット作業の実演とかでスタッフのことも知ってもらいたい」

  • 13号車 ENDLESS SPORTS 荒重憲エンジニア

    13号車 ENDLESS SPORTS 荒重憲エンジニア

スーパー耐久をもっと盛り上げるために、いろいろな方がお持ちの想いやアイデアをお届けするGAZOO.comのコンテンツ「S耐向上委員会」。
第22弾はST-2クラスに参戦する13号車 ENDLESS SPORTSの荒重憲エンジニアです。

チューニングパーツメーカーで経験を積んだのちに、海外からエンジンのコンピュータをチューニングするための商品を輸入、販売、サポートする仕事を始めたという荒エンジニア。
それまではあまりモータースポーツに携わったことはなかったといいますが、10年ほど前にENDLESS SPORTSが86でスーパー耐久に参戦し始めたころに、エンジンコンピュータの担当として声を掛けてもらったのがスーパー耐久に関わるきっかけだったそうです。

元はエンジンコンピュータの設定担当だったものの、GPSのデータロガーの経験なども活かし、いろいろなデータを分析するデータエンジニアとして活躍されるようになりました。

さらに、ヘイキ・コバライネン選手の全日本ラリー選手権でのエンジニアをやったことをきっかけに、今ではSUPER GTの39号車チームサードのチーフエンジニアも担当するなど、さらに活躍の場が広がっています。

そんな荒エンジニアに、スーパー耐久を盛り上げるためのアイデアを伺いました!

スーパー耐久は多様な経験のできる貴重な場所

スーパー耐久はモータースポーツをやるための入り口になるレースだと思っています。それは、ドライバーしかりメカニックしかり、エンジニアもそうなんです。
ここでクローズドコースでのモータースポーツが何ぞやというのを学ばせてもらって活動のすそ野を広げていく、そのための一番の入口なのかなという印象ですね。

僕も全く経験のないところから始まっていますし、草レースの延長で挑戦したいという人が飛び込める場だと思います。
でも一番上のST-XクラスはFIA GT3車両が走っているクラスなので、SUPER GTでも通用する人もたくさんいます。
そうした幅広いレベルや価値観を持っている人たちが一つにごちゃ混ぜになってやっているので、スーパー耐久は未経験からでもある程度のことまですべてを経験できる貴重な場所だと思います。

それはレースをやる側だけではなく、観客の方にとってもそうなんじゃないかと思っているんです。スーパー耐久をきっかけに、モータースポーツはこういうのが楽しいんだということを知って、他のレースを観ていくという、入口としていいレースなんだろうなと思います。

元はN1耐久という市販車ベースの車両のイメージが強かったと思いますが、今ではST-XやST-Zのような本格的なカスタマーレーシング車両も走ってますし、ST-4やST-5クラスのような市販車のベース車を改造したレーシングカーもいて、本当に幅広いですからね。

ただ今は少し過渡期のような気もしていて、N1規定での安全装備以外はほとんど市販車のようなレーシングカーからもう少し改造の範囲も幅広くなっていっているのかなと思います。

メカニックやエンジニアもファンと触れ合いたいし知ってほしい

  • 13号車 ENDLESS GRヤリス

    13号車 ENDLESS GRヤリス

門戸をひろげるという意味ではS耐TVとかはすごくいいと思っていて、あれでスーパー耐久に興味を持ってくれて、サーキットに観に来てくれたり、スーパー耐久の中の人になりたいという人も出てきていると思います。

スーパー耐久はエントラントとファンの間が遠くないと思うんですよ。SUPER GTとかはドライバーもそうですし、中にはメカニックやエンジニアに注目している方もいるかもしれないですけど、雑誌の中の人というか憧れの存在みたいな感じだと思います。

でもスーパー耐久はもっとファンと近くて、僕もエンドレスのファンの方とけっこうおしゃべりすることがあるんですよ。ピットウォークの時にふわっと話しかけてもらったりします。

ドライバーにフォーカスが当たりがちですけど、もっとファンの方たちと触れ合ってメカニックとかエンジニアのことも知ってもらいたいなあと思います。

知ってもらうために、ピットウォーク中にピット作業実演みたいなことをやってみたらいいかもしれないですね。そこでこういう仕事があるんですよというのも見てもらえると思いますし、ひょっとしたら規制線の近くにいるスタッフと話せたりとか、そういうことができるとおもしろいですよね。

実際に使っているものも手に取れるくらいの近さで見ることができたり、スーパー耐久だからこそもっとその距離感を近くすることができるんじゃないかと思います。

タイヤ交換もST-Xクラスはレース用のセンターロックですけど、ST-1~ST-5クラスのホイールは普通の5穴のホイールなんですよ。それを10秒そこそこで交換してしまうわけですし、その速さに僕たちが見ても惚れ惚れするような人もいるんです。
1台クルマを用意して、各チームから代表を呼んで、タイヤ交換選手権みたいなのを開催しても面白いですよね。

でもエンジニアは難しいですねぇ……。例えば給油の時間を決めるのはすごく難しいんですよ。市販車にあるレベルゲージがなくて、燃料の残量は自分で計算しなくてはいけないので、そういう計算をやっているのもエンジニアなんです。
そういうところから知ってもらえたりすると、僕たちとしてはありがたいですね。

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自らの意思でモータースポーツ界に飛び込んだわけではないものの、フリーのエンジニアとして人との縁の繋がりからどんどんと活躍の場を広げていった荒エンジニア。

スーパー耐久は参加型モータースポーツの入口でありながら、ハイレベルな技術を持つ方々が集まる、とても多様性あふれるレースであるということが感じられました。

また、ドライバーやチーム監督のみならず、メカニックやエンジニアの方々にも注目してもらえると、よりレースの見方や応援の熱量も上がるかもしれないですね。

ただ、スーパー耐久はSUPER GTなどに比べると少し余裕のあるレースとはいえ真剣勝負の場。マシンの修復やセッティングの調整、作戦会議などもレースモードの一つですので、よく状況を見ながら、今声をお掛けして大丈夫か確認して、お互い気持ちよく会話を楽しめるようにご配慮もお願いします。

(文:GAZOO編集部 山崎 写真:折原弘之、GAZOO編集部)

S耐向上委員会

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