インドア派から撮り鉄を経てサーキット活動メインのアウトドア派へ。やると決めたら一直線に突き進むBRZオーナー【取材地:福岡】
『これだ!』と思ったものに妥協せず全力で突き進むタイプの人は、普通では到達できない域まで達し、そのジャンルのプロフェッショナルとなることも少なくない。
興味を持ったものにはありったけの情熱を注ぐ性格を持ち、その矛先をレース活動へむけて広島から福岡に拠点を移したBRZオーナーの岡村智明さん(33才)が今回の主人公だ。
「ぼくはもともとガチのインドア派だったんです。でも、カメラにハマり、それから鉄道の撮影を楽しむいわゆる『撮り鉄』になりました。となると、珍しい鉄道車両を撮ってまわるためには移動手段が欲しい! そう思って初めて自分のお金でフィットを新車で購入し、気付けばいろんなところに出向くアウトドア派に変わっていました。また、それまでは親のクルマに乗っていたので、マイカーの存在がそれなりに嬉しくて、アンテナを変えるなど自分でも少しいじるようになりました。とはいえ、あくまで鉄道撮影のための手段としての役割がメイン。このころはまだサーキットを走ろうなんてまったく考えていなかったですね」
そんな『撮り鉄』一直線だった岡村さんが、2台目の愛車となるトヨタ86に乗り換えたのが、今から約6年前。
撮り鉄ライフとは全く結びつかないスポーツカーをチョイスしたのは一体なぜか?
「フィットは燃費が良くてそこそこ乗り心地もいいクルマで悪くはなかったけれど、走って楽しいクルマに乗ってみたくなったんです。もともとマニュアルの免許は持っていたんですけど、ちゃんと乗るのはもちろんこの86が初めてでした」
こうして人生初のマニュアルスポーツカー、トヨタ86を手に入れた岡村さん。その乗り味は衝撃だったという。
「初めて86に乗ったときに、こんなに静かで乗り心地が良くて、楽しいクルマが世の中にあるんだ! とすごく感動しました。もっとうるさくて燃費も悪いかなと思っていたのに、普通にリッター10km以上は走るじゃないですか。とにかく運転するのが楽しくて、休みの日はいろんなところに出かけていましたね」
そして、完全にアウトドア派となった岡村さんは、広島トヨタの『エリア86』にも通うようになり、そこで『サーキット走行会』という世界があることを知る。
「サーキットで走るのはレースだけだと思っていたので、自分でも走れる走行会があるなんて思いもしなかったです」
そしてサーキット走行を体験した岡村さんは、あまりの楽しさにどハマり!
「サーキットって、公道では楽しめないスピードを出したりできるじゃないですか。それがわかって感動しましたね。最初の頃は見た目だけをいじってたんですけど、人間欲がでてきますよね(笑)。もっと速く走りたいと思いはじめたんです。でもディーラーさんだとできる範囲ってどうしても限られるじゃないですか。そんな時に走行会で一緒になった方に、フォレストさんに相談してみたらいいよと教えてもらいました」
しかし、紹介してもらったドライバーズカフェ・フォレストの所在地は福岡県で、岡村さんが住むのは広島県。下道だと片道5時間コースの距離だ。
普通なら諦めて近所でショップを探すところだが、やると決めたら一直線なのが岡村さんのモットー。なんと多い時は毎週のようにフォレストまで通い、合わせて大分県にある国際サーキットのオートポリスにも通うようになったという。
そんなサーキット中心の生活がますます本格化し、岡村さんがレース活動について本気で考えるようになってきた4年前、岡村さんはもう一つ大きな決断をする。生活拠点を広島から福岡に移ることに決めたのだ。
「正直、広島から通うのも大変だし、これからレース活動を本格的にしていくのならもっと稼ぐ必要もある。福岡には仕事するところがいっぱいあるし、引っ越して福岡で働いたらどう?って話になっていったんです」
こうして福岡へ移住した岡村さんは、同じタイミングで愛車を86からこのスバルBRZへ乗り換える。
「サーキットでの走りをもっと上手くなりたいと考えていたときに、フォレストさんに勧められてワンメイクレース仕様として仕上がっていたこのBRZに乗り換えました。自分の86をサーキット仕様にするという考えもあったけど、すでに整っているクルマもあるし、そっちに乗ればいいんじゃないかって。それからはこのBRZでサーキットトライアルというタイムアタック競技に2回出て、2017年には念願だったレースデビューができました。レースって追っかけっこをしてタイムじゃなく順位を人と競うところがあるじゃないですか、それがおもしろいなって。今は平均的には月1くらいは走りに行っていると思います」
“サーキットで上手く走れるようになる”を主軸に合理的に考え、最適解だと思う手段に躊躇なく飛び込んでいるのがよく伝わってくるエピソードだ。
また、岡村さんが新たに購入したBRZには、現在ワンメイクレース用の指定ステッカーやスポンサー企業名が貼ってあるのだが、その中で目を引いたのが『陸海空自衛官募集中』のステッカー。これは、いっしょにサーキット活動をしている公務員の仲間を手助けするささやかな協力だという。ただ自分の目標に一直線なだけでなく、周囲のことも思いやる優しい人柄だということがよく伝わってくる。
また、岡村さんはサーキットでのレースオフィシャル活動にも積極的だ。
「レースオフィシャルをやるようになったのは、モータースポーツについてもともと全く知らなかったので、勉強するなら現場で出るのが一番早いなと思ったからです。オフィシャルをやっていて感じるのは、やっぱりスポーツなので人の命に対する責任感があって、参加者とオフィシャル側の両方の気持ちを知っておけばもっとレースが盛り上がるのかなということです。自分のためだけじゃないですよね」
レース活動に真摯に向き合っているからこその、実に一貫性のある彼らしい理由だと思う。
そんなサーキット活動に生活を全振りしているように見える岡村さんだが、もともとクルマ好きになるきっかけとなった撮り鉄活動はもうやめてしまったのかが気になるところ。
「今でもよくSLを撮りに行っていますよ。今日発売日だった貨物の最新の時刻表も持っています(笑)。SL車両はどんどん数が減っているので、今のうちにと撮りに通い詰めることもあります。クルマも前から撮っているんですけど、最近は他の乗り物系もちょっと撮ってみたいなって思っています」と、こちらも並行して変わらず全力投球のようで一安心。
そんな岡村さんにとって、現在の愛車であるこのBRZはどんな存在なのだろうか?
「自分の悪いところに素直に答えてくれるクルマです。自分がダメならダメ、いいならいい反応してくれるし、そういう意味では教科書的なクルマです」と良き相棒のようだ。
「乗り始めて4年半、FF車やコペンなどいろんな駆動方式のクルマに乗ってみたいという気持ちもありますが、令和3年はこのクルマでひたすら『自分がやっていることを完璧にできるように』を目指します」
一度決めたことはなにがあっても揺るがない信念を持ち、チャレンジし続ける岡村さん。きっとこの先も目標を確実にクリアしてさらなる高みに登り続けていくことだろう。そのいく末がとても楽しみだ。
(⽂: ⻄本尚恵 / 撮影: 平野 陽)
[ガズー編集部]
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