スポーツカーに出会って性格も人生も大きく変化!? 86が繋いでくれた『仲間と楽しむサーキット』という居場所【取材地:福岡】

共通の趣味や目標を持ち、一緒に楽しめる仲間の存在は、人生を豊かにしてくれる。
「もともと他人とのコミュニケーションが苦手だったんですが、クルマとサーキットを楽しむクラブに所属するようになって、変わることができたと思います」
現在は大型トレーラーの運転手というお仕事をされるかたわら、アマチュアレースへの出場を目標にカーライフを楽しんでいるという福岡県在住29才の古賀寛之さん。
「もともとなんとなくクルマに興味があるというくらいで、カッコいいセダンとかを待ち受けにするような感じでした」と振り返る彼が、スポーツカーに興味を持ちはじめたのは、高校を卒業して専門学校に通っている頃のこと。

「通っていたのはクルマとはまったく無縁の専門学校だったので、もちろん校内でクルマの話題が出ることはなかったんですけど、その頃にSNSを通じて知り合った友人がインプレッサ(GC8)に乗っていて、それに試乗させてもらう機会があったんです。そのときの衝撃がとにかくすごくて、そこからワイルドスピードや頭文字Dにドハマリして、自分でもこういうクルマに乗りたいと思うようになったんです」
頭文字Dの単行本では神奈川エリアで激しいバトルが繰り広げられ、映画館ではブラジルを舞台にハコスカやR35、WRXなどがスクリーンを駆け抜けるワイルドスピードの第5作が放映されていた頃だ。

専門学校を卒業した古賀さんは岡山のとある企業に就職。ちょうどその頃に発売されたのがトヨタ86だった。
「すっかりスポーツカーに魅了されていた自分にとって、86は発表された当時からほしいと思っていたクルマで、発売される前からディーラーへ行ってカタログをもらって、試乗車が入ってきた時もすぐに足を運びました。それくらい憧れのクルマでしたね」と古賀さん。
しかし、就職して間も無いタイミングで金銭的な余裕もなく、86は一旦あきらめて最初に購入したのはスズキのワゴンRだったという。

そして、転職を経て福岡県に戻った古賀さんは、次の愛車として初期型のホンダ・CR-Zに乗り換える。
ここでも86に乗りたいと選択肢には上がったものの、当時「スポーツカーはダメ」という親の反対を受けて断念。妥協案のライトウェイトスポーツとしてスズキ・スイフトと悩んだ結果、ハイブリッドで高燃費だったCR-Zに軍配が上がった。

「学生時代に知人から『86好きならいいお店があるよ』と紹介してもらったドライバーズカフェ・フォレスト(福岡県京都郡)に、ワゴンRの頃からメンテナンスをお願いしていたんですが、CR-Zに乗り換えて1年くらいたった頃にフォレストさんから『サーキットデビューしてみない?』とお誘いを受けたんです。もともと最初のクルマを買ったときからスピード狂というか、信号でもとにかく前に出たいと思ってアクセルを踏んでしまうタイプだったので、そういう普段のストレスが解消できるかな?と思ってチャレンジしてみることにしました」

デビュー地となったのは、テクニカルサーキットとして知られる岡山国際サーキット。
初体験がミニサーキットではなくスーパーGTのレースも行われるようなコースも長く幅も広い国際規格のサーキットということで、走る前は恐怖のほうが大きかったという。
「最初は普段出さないようなスピードを出すのが怖く感じて、コーナーを攻めるのもやったことないし全然走れなかったです。ブレーキもタイヤもノーマルだったし、CR-Zはパワーもなくて、とくに初期型はバッテリーが後期と比べて小さいみたいで、最初はいいんですけど途中でバッテリーが切れると全然スピード出なくなっちゃうんです。この時に『やっぱりサーキットをしっかり走れるスポーツカーに乗り換えたい』と思うようになりました」。
このサーキット初体験が、古賀さんにとってさらに86への憧れを強くしたのだった。

また、古賀さんにとってはフォレストが全国の公認モータースポーツ競技を行うJAFに所属するJAF加盟クラブであることも大きな影響を与えた。
「サーキットを一人で走ろうと思うとやっぱり不安になることがあると思うんですけど、クラブはチーム員みたいな感じで、みんながお互いをサポートしあうことができるんです。昔からあまり人と接するのが苦手だったボクも、クラブに入ってからは積極的に仲間とコミュニケーションをとるように意識できるようになりました。実は今の職業である大型トレーラーの仕事も、フォレストさんと縁があっての職場だったんです」
クルマが趣味になったことで、私生活も自らの性格も変化していったというわけだ。

そして、古賀さんのカーライフにとって、重大な転機が訪れる。
「同じクラブメンバーで86に乗っていた人が、フォレストで製作したレース用のBRZに乗り換えることになって、同じタイミングでCR-Zがほしいというほかのお客さんも現れたんです。このタイミングを逃すことなく、CR-Zを売って、その86を購入することができました。その86は以前サーキットで試乗させてもらったこともあったんですけど、ついに自分でちゃんとしたスポーツカーを手に入れて、それに乗れたという感動は大きかったですね」と当時を振り返ってくれた。

こうして念願だったスポーツカーである86のオーナーになった古賀さん。86/BRZ同士で比較的簡単に流用がきくバンパーはこれまで2度交換している。
「最初は前期の純正バンパーでしたが、一般道で飛び出てきた鹿に当たってダメになってしまったんです。そこで、BRZの後期バンパーに換えたんですが、今度はサーキットのグラベルに突っ込んで壊してしまい、今は後期86のバンパーを装着しています」
どれも純正バンパーだけれど、交換するたびに印象が変わり、まるでクルマを乗り換えたかのようだ。

また、センターコンソールをカーボンシートで貼り替える作業は古賀さんがDIYで行った部分。前オーナー時代から助手席のパネルがカーボン調だったのに合わせて統一感を出すためだった。
室内にはサーキットを走るにあたって重要なホールド性をアップするフルバケットシートや4点式シートベルトが備わっているが「ポジションを調整するためのクッションの代わりに使っているのは、ビニール袋にシュレッダーの紙を詰めたものです。見た目はイマイチですけど調整はちゃんとできるし、なによりお金がかからないのがいいですね(笑)」

機関系はと言うと、大雨でエンジンが水没してしまい、修理することになったのをきっかけに興味があった2.1L仕様へと排気量アップ。NAの86にとっては究極ともいえるチューンのひとつだ。
「街乗りでも変わったのが体感できますね。とくに坂道でアクセルを踏んだときのトルク感が違います」と話す古賀さん。
マフラーも購入当初はアフターパーツメーカー製を使っていたが、排気漏れしていたためノーマルに戻したところ、こちらも効果が体感できるほど低速トルクがアップしたという。

そして、最近凝っている趣味というのが、月1回は欠かさない洗車とコーティングだ。
「前の職場の駐車場は鉄粉がすごいところで、いい洗車グッズがないかなと探してたときにYoutubeでスパシャンを見つけて試してみたんです。最初はちょっと値段が高いと思ったんですけど、とても仕上がりがよくて愛用してます。ランボルギーニやフェラーリのオーナーさんのなかにも愛用者がいるというのも納得ですね」
カゴいっぱいの洗車グッズから、その愛用ぶりが伝わってくる。

現在は年に3回ほどのペースでサーキットを走っているという古賀さん。
今後はロールケージを組むことを考えているが、それはとあるレースに出場するためのレギュレーション対応のためだという。
「フォレストのクラブメンバーも出ているオートポリスの『ゴールドカップレース』に出たいと思っているんです。せっかく出場できるライセンス(国内A級)も取得したので」というのが今後の目標だ。

「なによりも86に乗れるきっかけをもらったフォレストのみなさんに感謝してますし、スポーツカーに乗るのを許してもらった親にも感謝してます。その気持ちを忘れずに大事に乗っていきたいですね!」
そんな古賀さんが心がけているのは、決して無理をせず、愛車にかける予算も時間もできる範囲に留めること。これからも大好きな86と、そして大切な仲間たちと一緒に、長く走り続けられるようにカーライフを送っていきたいと語ってくれた。

(⽂: 長谷川実路 / 撮影: 西野キヨシ)

[ガズー編集部]

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