「オーナーになるとわかることがある」。カローラレビン(AE86)が生み出す楽しさの連鎖

  • トヨタ・カローラレビン(AE86)と桜

「気が付いたら現在の愛車の数は10台以上でした」

そう教えてくれたのは、今回お話を伺うYamaさん44歳。
これまでに乗られてきた愛車は国産車、輸入車問わず、その数なんと数十台にものぼるのだといいます。

現在は、たくさんの愛車と共にカーライフを楽しまれているそうですが、その中から、購入後9年目になるという、1986年式のトヨタカローラレビン GT-APEX(AE86型)にフォーカスを当て、 複数台所有するYamaさんならではのエピソードをお聞きしました。

今回は、 YAMAさん×カローラレビン(以下、AE86)のお話です。

――数々のクルマに乗られてきたということですが、愛車に共通する特徴などはあるのでしょうか?

運転免許を取得してからは主に、軽量のハンドリングマシンを好んで乗ってきましたね。学生時代に友人の間で流行ったジムカーナに遊び感覚で参加し、トヨタ・スターレットやホンダ・シビック、プジョー・106等、軽くてよく曲がるクルマを好んで乗っていました。

――「デザインが好みだから」などはなかったんですか?

もちろん外装デザインも重要なんだけど、僕はどちらかというとエンジンに注目して、自分の好きなエンジンフィーリングを探すために様々なクルマに乗ってきたんです。高性能だから良いとかではなくて、あくまでも自分のフィーリングに合うクルマに乗るという感じです。

――じゃあ今乗られている愛車たちは、そのフィーリングが合ったから保有しているのですね

そうです。エンジンだけでなく、走る、曲がる、止まるというクルマ全体のバランスをトータルで判断して、そのクルマのキャラクターを楽しんでいます。

――ということは、愛車を買う前は、必ず試乗しているんですね?

それが、そうでもなくて(笑)。AE86は助手席に乗せてもらったことがあったので、何となく体感はできていたのですが、他の愛車は買ってから初めて運転するパターンも多かったです。フィーリングが自分に合わなかったら乗り換える、そんな感じですね。

クルマ好きにとって、今のご時世、愛情を注いで管理すれば、あまり損をしない時代なので、みなさんも予算の限り、どんどんクルマに乗って経験するべきだと思います。

  • トヨタ・カローラレビン(AE86)と菜の花

――AE86を愛車に迎えた理由って何だったのでしょうか?

「乗ってみたかったから」に尽きますね。それと、シンプルな構造ゆえ、メンテナンスもしやすく、費用もそんなにかからないですし、部品も70年代のクルマよりは調達しやすい点も気に入りました。

『走る、止まる、曲がる』っていうクルマの基礎的な性能の感覚を感じやすいクルマっていう認識でしたが、実際に運転してみたら期待通りだったので、それで気に入って今でも乗っているんですよ。

――AE86、1台に絞らず、複数台所有されている理由は何故なのでしょう?

僕が複数台持ちしている大きな理由って、常に乗り比べが出来るからなんですよ。これがめちゃくちゃ面白くて、人間ってクルマの細かいフィーリングを長い間覚えていられないと思っていて。なので、複数台あるとすぐに比較できるんですよね。乗る度にクルマの良いところに気付ける、見つけられるっていうのは、複数台持ちの特権だなと思います。

  • トヨタ・カローラレビン(AE86)のエンブレム

――AE86は他のクルマと比較してみて、どう感じましたか?

4A-GE型エンジンにFRレイアウトのこのクルマはやっぱり面白いなって感じました。それと、80年代のクルマとしては基本性能がよくできているなと感じています。他のクルマにも”原点”を感じることはあるのですが、AE86は特にクルマの基本がよく分かるというか。

正直、絶対スピードは遅いし剛性も全くないんだけど、そういうキャラクターとして受け入れていくと、弱点も楽しめるんですよね。自分なりにカスタムできるクルマっていうのも最高です。

――AE86は普段はどういう時に乗っているのですか?

実は、普段は給油や洗車と近場のドライブくらいなんです。あとは年に数回、全国で開催されているクラシックカーラリーっていうイベントがあるのですが、そういう、AE86でも参加可能なイベントがある時は、参加しています。

ラリーイベントは自分が行ったことがない地域にも行けるので、コストはかかりますが、それ以上の価値があると思っています。

――なぜそのような乗り方なのですか?

僕の中では頻繁に乗りたいクルマというより、相応しいシチュエーションの時に乗るべきクルマっていう感覚なんです。なので、AE86で出られるイベントや、AE86限定のツーリングに誘われたら行くっていう感じなんです。毎日乗るようなクルマは他に持っているので、AE86は大切に乗っていきたいなって思っています。

  • トヨタ・カローラレビン(AE86)の左フロントタイヤ

    撮影:小塚大樹

――今までで一番印象的なAE86との思い出はありますか?

これまで、オーナーズクラブ的なイベントや、ツーリングに参加させていただきましたが、どれが一番とかは無いですね。というのは『イベントに行くことで人と繋がれること』に、より興味があって。

――クルマを通じたコミュニケーションや出会いが Yamaさん的に重要なんですね

クルマがあるからオフ会に行くっていう順序の方が多いと思うのですが、僕は『オフ会やミーティングで交流したいからクルマが欲しい』ってくらい、クルマを通したコミュニティが好きなんですよ。

たまたまクルマが昔から好きで、クルマ好きが集まる場所に、20代の頃からよく行って友達を作ったりしていました。そこでできた友達って「海行くぞ」とか「ご飯行くぞ」っていう、クルマ以外の遊びにも繋がったりしたんですよ。

「イベントに行くこと」って僕にとって、今の若い子がSNSをやるのと同じ感覚なのだと思います。現地に行くと稀に、自分と波長の合う人がいて、その“稀に”をいつも探しに行っている感じです。

――AE86に乗っていて、一番楽しいとか幸せを感じる瞬間ってどういう時なんですか?

  • トヨタ・カローラレビン(AE86)

    撮影:小林悠佑

複数台クルマを持っているからこそ、AE86の良さとか悪さが分かるのが楽しいです。例えば、AE86が遅いことに気付いたとすると、その遅さが楽しかったりするんですよ。それで「遅いのに、何で楽しいって感じるんだろう?」って、更に考えるのがまた面白くて、楽しさの連鎖を感じられるんです。

クルマの良さや自分の感覚などを、今でも乗りながら考え続けているのですが、そうやって考えてクルマに乗るのって、本当に面白いんですよね。

――今後はどのようなカーライフを送っていきたいですか?

AE86に関しては、もちろん大切にしていきたいけど、この先の自分がAE86を売ってでも欲しいクルマがあれば、そっちを買うかもしれません。だけど、AE86を所有していることで出来た体験はこれまでに多々あって、更にもう10年一緒に過ごしたら、もっと深い体験ができるかもしれないとも思っています。なので、現状の気持ちは「可能な限り所有していたい」が近いですね。

――今のYamaさんにとってAE86ってどういう存在になっているんでしょう?

複数台ある愛車の中の1台ではありますが、僕は愛車たちそれぞれに対しての愛情がフラットなんです。
正直、どのクルマに乗ってもテンションが上がるんですよね(笑)。
強いて言うならば、気楽に乗れる旧車という感じでしょうか。

  • トヨタ・カローラレビン(AE86)のリヤと山

クルマを撮るためにカメラを購入し、仲間のクルマを撮影したりして楽しんでいるというYamaさん。

「カメラ自体が特別好きなわけではなく、“同じクルマ好きの仲間が喜んでくれる”のがうれしいんです」

そう話すYamaさんの言葉を聞き、クルマを通したコミュニケーションを大切にする彼のカーライフらしいなと感じました。これからも、複数台所有することで、その愛車の台数分生まれるコミュニケーションを楽しんでください。

(文:秦 悠陽 写真提供:YAMAさん)