大学自動車部ってどんなところ? -京都大学編-

全国の大学や専門学校などの自動車部におじゃまして、日頃の活動風景やご自慢部員をレポート。今回は、京都大学体育会自動車部を訪問。2014年4月には“新城ジュニアラリー”に参戦し優勝を勝ち取ったという、今注目度が高い自動車部のひとつと言えそうです。

京都大学体育会自動車部プロフィール

●部員数:男子12名 ※部員数は2014年5月現在

●部車:ダイハツ オプティビークス 
(ジムカーナ練習用および1年生の練習用として) 
※基本的には各人所有のクルマを使用

●活動内容:毎週金曜日の部会でミーティング。土曜日の夜をはじめ、週に2回のペースで実走練習。その他は自由なペースで練習や整備を行う。

●活動実績:2014年 新城ジュニアラリー優勝

京都大学自動車部の伝統、マイカーでの競技参加

京都大学の本部構内。自動車部のガレージと部室は東大路通を挟んだ西部講堂にあります
主務・会計・HP管理者を務める廣瀬君はクールな語り口調で部を支える。現在の愛車はホンダ S2000
昨年秋に免許を取得し、2014年春にOBの人から、三菱 ランサーエボリューション(通称:ランエボⅠ)を譲ってもらった川口君。これからクルマに慣れていくところ
10歳から17歳までカートレースに参加し、レーサーを目指していた経歴を持つ高木君。現在の愛車はスズキ カプチーノ

今回訪問した京都大学は、1897年に設置された歴史ある国立大学。創立以来「自由の学風」を建学の精神としており、学生の自主性を特に重んじていることが大きな特徴です。 

ロックコンサートが行われることもある西部講堂の近くに、京都大学体育会自動車部のガレージがあります。  

京都大学の自動車部では週に1度の部会があるほか、夏場のスキー場の駐車場でジムカーナ走行をしたり、ミニサーキットで練習走行をしたりと、多様な活動を行っています。 

基本的には各自のマイカーで活動を行っております。部のクルマとしてオプティはありますが、これはマイカーを持っていない1年生などが使用する練習用のクルマという位置づけ。

部長を務める沖田君は「昔からトミカでもランエボやインプレッサのラリーカーが好きでした」と語る根っからのラリー好き。しかし自動車部で先輩から「FFのクルマもきっと好きになるよ」と言われ見事にハマり、今は「インテグラでランエボやインプレッサに勝つことが気持ちいい」と話すほど。 

実は沖田君は京都大学ではなく立命館大学の学生。わざわざ他校の部活に入部したのは「ラリーがやりたかったから!」という理由。京都大学自動車部のOBには現在全日本ラリーに参戦している選手もいるそうで、そうした方々に教えてもらえる環境を望んだというわけです。 

主務である廣瀬君は、以前トヨタ カローラレビンでラリーの練習などを行っていたそうですが、ホンダ S2000を手に入れてからは「壊したくないので、これでラリーは走りたくない」とジムカーナに力を入れるようになったそうです。 

川口君はOBから、三菱 ランサーエボリューション(通称:ランエボⅠ)を譲ってもらったものの、なかなか車検をクリアできないほどの整備不良状態。あれこれ直してようやく車検をクリアしたかと思えば、今はトランスファーのオイル漏れに悩まされているそうです。 

「マイカーでレース」なんて言うと、学生の部活としては贅沢なイメージがあるかも知れませんが、実際はこうして苦労しながらクルマを楽しんでいるわけです。でもこうした苦労も、きっと将来の良い経験になるはず。愛車の不調をなぜか嬉しそうに話すメンバー達の笑顔は、とっても輝いて見えました。

初めてのラリー競技参戦で優勝!

優勝を勝ち取った新城ジュニアラリーでの一幕。沖田部長のマイカー、ホンダ インテグラで参戦
新城ジュニアラリーでドライバーを務めた部長の沖田君(奥)と、コ・ドライバー(ナビゲーター)を務めた廣瀬君。2人の息が合うことも重要
ラリーだけではなくジムカーナに情熱を捧げる部員も多い。写真は廣瀬君の前愛車、トヨタ カローラレビン
整備や修理も競技に向けた重要なポイント。先輩から教わりながら取り組んでいるが、部品代の節約は慢性的な課題のひとつらしい

自動車部を率いる部長の沖田君は筋金入りのラリー好き。練習を重ねていたわけですが、練習だけではやっぱりチカラが入りきらないもの。 

そんな状況を知ったOBの方から「4月にレースがあるから出てみたら?」と言われ参戦したのが“新城ジュニアラリー”でした。ドライバーの沖田君とコ・ドライバー(ナビゲーター)の廣瀬君にとって初めてのレース参加。 参加に際しては決してスムーズとは言えない状況だったそうです。事前にアドバイスを貰ってはいたものの、前日に慌ててレギュレーションで定められている消火器の取り付け作業を行うなど、準備はバタバタの状態。結局前日に徹夜で準備して現地に向かったほど。 

待ち時間に少し寝て体力を回復することはできたが、およそ初参加とは思えない精神状態での参加になったのです。しかし結果は優勝! 

「いろいろな運が重なって優勝出来ました」と沖田君は振り返ります。当日は小雨が降ったため路面コンディションはウェット。ジュニアラリーは初級~中級者向けのラリーということもあり、道路コンディションは重要なキモになります。滑りやすくなるため思い切った走行がしづらくなり、クルマの性能差が影響しにくくなるのです。

初参加で初優勝という快挙を果たした沖田君は、今後のラリー参加にも鼻息を荒くします。

「新城ジュニアラリーの次は6月に三重で開催する“いなべ福王ラリー”にも参加します。年間3戦のシリーズ戦ですから、シリーズチャンピオンを目指します!」と目標を話してくれました。 

しかし課題もあり、それは整備について。実は取材の数日前にも別のラリーに参加を予定していたものの、直前の練習でトラブルが発生し、ギリギリまで直そうと頑張ったものの、結局現地まで行けないという結果になってしまったそうです。 

ラリーをはじめとした公式なレースは、安全面の配慮からしっかり整備がなされていないと参加自体が認められません。どうしても資金力に乏しい部活動ですから、部員の努力でカバーしないといけない点が大きいようです。 「しっかり整備していないといけないし、そうした点も勉強しないといけないな、と思っています」と沖田君。 

自動車の整備については、院生で部に所屬している先輩方が強い味方になってくれます。自動車の構造に詳しい先輩方がいるのも、やはり京都大学自動車部が持つ魅力のひとつというわけです。

七帝戦に向けてラリー&ジムカーナのさらなるレベルアップを目指す!

部会のミーティングではレースに向けた情報共有などを行う。中央の2人はどちらも1年生で左が金森君、右が井上君。まず免許取得が目標
西部講堂の隣にある自動車部のガレージ。熱心に整備・修理へ取り組む部員の姿が見れるはず
1951年に創立した京都大学の自動車部。部室には過去のトロフィーや集合写真など歴史を感じさせるものが残る
自動車部を見学した人が入部する確率は100%とか。クルマに興味があったらぜひ京都大学自動車部を覗いてみましょう

京都大学自動車部の目標はラリーだけではありません。ジムカーナも積極的に練習し、運転技術を磨いています。

そんな部にとっての大きな目標が「七帝戦」です。7つの旧帝大で競争する大きな大会。今回の主管校が京都大学ということもあり、部員の目標はもちろん「優勝!」と沖田君は話します。

実は昨年の七帝戦では部員数が少なかったこともあり、参加できる人数が少なければポイントを稼ぎにくいというルールも重なって残念な結果に終わってしまった経緯があります。

今回の七帝戦ではラリーとジムカーナで競うことになります。ラリーは3台で参加するためドライバーとコ・ドライバーで合計6名が必要となり、もちろんそれぞれの練習も必要です。またジムカーナは全員それぞれで参加できますが、やはり十分な練習をして本番に臨みたいところです。

昨年よりも部員数が増え、「競える環境」が整いつつある京都大学自動車部。9月の本番に向けて、部員の熱意はだんだんと強くなってる様子です。

自動車部の比較的新しいメンバーの中に、1年生ではない年長者の姿もあります。それがスズキ カプチーノに乗る高木君。

高木君は休学していたこともあり年齢こそ部長よりも上ですが、部員としては新人。しかし実は10歳からカートの経験がある、言わば英才教育の経験者。

復学して自動車部の存在を知り、ジムカーナを体験してみたら楽しかったので入部した、という経緯です。新人部員でありながら運転に関する知識と技術は、他の部員にとっても大きな刺激になるはずです。

また自動車に関する豊富な知識もあり、整備面でもほとんどのことができる頼れる存在。これからの京都大学自動車部にとって、キーマンになりそうですね。

最後に、部員たちの将来の夢や、自動車メーカーや社会に対する要望を聞いてみました。

部長の沖田君は自動車メーカーへの就職を目指しており、また社会人になってからもラリーを続けていきたいと考えているそうです。OBにはそのような方々もいるので、まさにそうした先輩の姿を目指しているというわけです。就職した先のメーカーが出すスポーツカーに乗り、ラリーで活躍したいと夢を語ってくれました。

廣瀬君は社会人になってもクルマ趣味を続けていきたいと考えているそう。また現在の自動車メーカーに対しては「若い学生でも買えるようなスポーツカーをリリースして欲しい」と強く語ってくれました。

そして川口君は切実な問題のひとつ、「クルマに乗る上では税金やガソリン代などとにかくお金がかかりすぎる」ランエボIにこれからたくさん乗りたい川口さんならでは。

最後に高木君は、「ニュースなどで非合法な暴走行為が取り上げられることはあっても、合法的にクルマを楽しんでいる様子は紹介してくれないし、F1などの国際レースも出てこない。『若者のクルマ離れ』には、こうした影響も大きいと思う」と指摘。年長者らしい社会派なコメントでした。

クルマやレースに対する思いや経験は違っても、自由な校風の中でそれぞれの形でクルマを楽しんでいる京都大学体育会自動車部。さらなる活躍が期待できる注目の自動車部でした。

関連サイト
【HP】京都大学体育会自動車部
【Twitter】京都大学体育会自動車部

[ガズー編集部]

MORIZO on the Road