大学自動車部ってどんなところ? -東京大学編-

全国の大学や専門学校などの自動車部におじゃまして、日頃の活動風景やご自慢の部員を紹介するこのコーナー。 今回は日本が誇る最高学府、東京大学運動会自動車部を訪問。 普段の活動内容に加え、東大流の運転スキル向上術も聞いてきました。

東京大学運動会自動車部プロフィール

●部員数:男子14名 / 女子 1名 ※部員数は2014年6月現在
部員紹介ページ

●部車:三菱ミラージュ、ホンダ・シビック ほか

●活動内容:毎週木曜の19:00からミーティングを実施。不定期(主に土日)で部車の整備作業や、練習場にて終日練習を行う。全国七大学総合体育大会(七大戦)に加え、社会人が参加する一般の大会にも積極的に出場。2014年からは全日本学生自動車連盟にも加盟し、各競技で上位入賞を目指す。

●活動実績:2014年度 全関東学生ダートトライアル選手権大会 総合 6位

“七大戦”に“全学連”と、多岐にわたる活動内容

全国各地にキャンパスや研究施設を持つ東京大学。自動車部が部室とガレージを構えているのは、目黒区の駒場キャンパスだ。
取材のためにガレージに伺うと、ひと足早く部員が集まって掃除をしていた。こうしたきちんとした態度も、東大自動車部の特長だった。
ガレージの周辺にクルマを走らせるスペースはなく、練習は基本的に遠方のサーキットで行うとのこと。写真は関越スポーツランドでのジムカーナの様子。
数十年ぶりに全日本学生自動車連盟に復帰した東大自動車部。復帰後初のダートトライアル大会で総合6位入賞を果たし、実力を見せつけた

今回お邪魔するのは東京大学運動会自動車部。そう、あの東大にも自動車部はあるんです。ちなみに「運動会」というのは他大学でいう体育会に相当します。

いまさら説明不要かもしれませんが、東京大学は江戸幕府の昌平坂学問所や天文方、種痘所の流れをくむ日本初の近代的な大学。明治10年に、当時の東京開成学校と東京医学校が合併して「東京大学」となりました。

現在は名実ともに日本を代表する国立大学として、主に教養課程を実施する目黒区の駒場キャンパスや専門教育を行う文京区の本郷キャンパスのほか、北は北海道から南は奄美大島まで、全国各地にキャンパスや研究施設を構え、1万4003人の学部学生と1万3345人の大学院学生が学んでいます(2014年5月1日現在)。

運動会自動車部の活動拠点は京王井の頭線駒場東大前駅から歩いて30秒の駒場キャンパス内。現在の部員数は15人で、活動内容は週1回のミーティングと、月2~3回の走行練習。そして東大、京大、北大など7つの旧帝国大学の間で競われる「七大戦(ななだいせん)」と、社会人が中心となる神奈川ダートラシリーズなどの大会に参戦しています。

余談ですが、旧七帝大では柔道部による「七帝戦」も行われており、そちらは現在の講道館ルールとは全然違う寝技中心のルールです。ということで自動車部の七大戦も、全日本学生自動車連盟の大会とは全然違うルールなんですか? と聞くと「や、同じです(笑)」とのことでした。

その全日本学生自動車連盟の大会のほうは諸事情により数十年間参加していなかった東大自動車部なのですが、昨年からめでたく復帰。そして復帰するや否や、6月22日に行われた全関東ダートトライアル選手権でいきなり6位に入賞し、その実力を各大学に知らしめました。

入部のきっかけはジムカーナの同乗体験

新入部員を集める、いわゆる新歓活動での苦労話を語る熊倉健太さん。最近選出されたばかりの、東大自動車部の新しい主将だ。
入部して2カ月ほどの1年生も、すでにすっかり部になじんでいる様子。こちらでは部車のバッテリーを交換する4年生の髙木一秀さんを、1年生の大塚将貴さんがお手伝い。
主にダートトライアルで使用する部車の三菱ミラージュと、先代の主将である4年生の髙木 充さん。
ガレージには、いたるところに自動車の部品が。設備も充実しており、ひと通りの整備は自分たちで行っているのだとか。

現在の主将は法学部3年の熊倉健太さん。昨年行われた七大戦ジムカーナ2013で9位に入った実力派です。熊倉さんいわく、最初の部員集めがなかなか大変だとのこと。

「まずは“東大にも自動車部があるんだよ”って知らしめることから始めないといけないのが大変なところですね。で、自動車部に興味を持ってくれる新入生も多いのですが、次のネックは『でも、ものすごくお金がかかるんですよね?』というイメージです。
実際のベース車両は20万円とか、極端な話ヒトケタ万円でも買えるんですが、クルマに詳しくない人は『クルマというのは200万円とか300万円はするものだ』ってイメージがあるみたいで(苦笑)」

しかし熊倉さんの奮闘もあって今年は3人が入部し、取材日は1年生諸君もすっかり部になじんでいる姿が印象的でした。

昨年度の主将を務めた髙木 充さん(4年)は、入部の動機を次のように語ってくれました。

「新歓でジムカーナ走行の同乗体験をしたんですが、そのときに『こ、これは大学生ができる一番すごいことの一つだ!』と確信したんですよ。クルマの限界というのは、当時の僕を含むほとんどの人が知らないまま生きるわけじゃないですか? それを知ることができ、なおかつ練習すれば、そこを極めることもできる……それはもう本当に素晴らしいことであり、ほかの部活動ではなかなか得ることのできない稀有(けう)な経験です。
なので1人でも多くの新入生に、まずは“体験”してみてほしいですね」

腕を磨くには、まず「考える」こと

現在は唯一の女性部員である、4年生の斎藤真琴さん。ジムカーナの同乗体験で自動車部への入部を決めたという。
こちらは2年生の小林泰治さん(右)と木下祐希さん(左)。
ガレージ内に不思議なものを発見! なんでも、極真空手をやっていたという何代か前の部員が置いていったのだとか。いわく「かなり本格的なサンドバッグなんですよ。空手部にだって、この重さのはないでしょう(苦笑)」とのこと。
最後に、もう一度みんなで記念撮影。今回はいろいろとありがとうございました!

現時点では唯一の女性部員である斎藤真琴さん(4年)も、ジムカーナの同乗体験で“目覚めた”1人です。

「最初はMT免許が安く取れるらしいというだけの興味だったんですが、2年生の夏に先輩が『部活も見においでよ』と誘ってくれて、ジムカーナの練習会に行ったんですね。で、助手席に乗せてもらったらもう大変なスリルで、『これはスゴイ!』って思いました。そして『斎藤さんも練習すればできるようになるよ』と言われてその気になってしまった、と(笑)」

そういったスポーツ走行ができるようになるために、いや、できるだけでなく、タイムをより向上させるために、東大自動車部の皆さんはどのような練習をしているのでしょうか? 前出の髙木 充さんが説明してくれました。

「われわれは他大学と比べて練習時間が少なく、予算も圧倒的に少ないんです。じゃあそのなかで何ができるか? ということをとにかく考えるんです」

考える、と。

「はい。たぶんですが、他大学の方はいきなり本番のコースで『とにかく練習量だ!』的にガンガン走りこむのでしょう。でも、僕はそうはしませんでした」

どうやったんですか?

「ひたすら定常円旋回を繰り返し、どういう速度でどんな入力があったときに、クルマの挙動はどう変化するのか? そしてそれに対するベストな修正はどうあるべきか? そういったデータを徹底的に自分の身体と頭にたたき込むんですよ。その反復により、ある程度の短期間で上達することができました」

……まるで「東大受験必勝法」を聞いているかのようなロジカルかつ効率的な練習法が、もしかしたら東大自動車部のカギなのかもしれません。余談というか念のため、東大受験前の睡眠時間はどのくらいでしたか? と皆さんに聞くと、8割の部員は「7~8時間ぐらいはしっかり寝てました」との答え。……何というか、やっぱりさすがです!

(文=谷津正行/写真=ダン・アオキ)

関連サイト

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[ガズー編集部]