大学自動車部ってどんなところ? -近畿大学編-

全国の大学や専門学校などの自動車部におじゃまして、日頃の活動風景やご自慢部員をレポート。
今回は、ジムカーナに力を注ぐ近畿大学体育会自動車部を訪問しました。

近畿大学体育会自動車部プロフィール

●部員数 :男子11名   ※部員数は2014年7月現在

●部車 : ホンダ シビックEG6     ※ジムカーナ用
      ホンダ インテグラDC2  ※ダート用

●活動内容:毎週月・木曜に活動。時間は16時30分から20時まで。夏の全日本学生ジムカーナ選手権大会に勝つことが目標で、8月になると集中的にサーキットに繰り出してドライビングテクニックを磨く。

●活動実績:平成26年度 第1回全関西学生ジムカーナ選手権大会 男子団体の部優勝
男子個人の部2位
●平成26年度 第1回全関西学生ダートトライアル選手権大会 男子団体の部4位
男子個人の部優勝

など

とにかくジムカーナのレースで勝ちたい

東大阪キャンパスのシンボルはレンガづくりの門。同キャンパスには法、経営、理工学などの学部を設置
写真手前の表彰状は、昨秋の全関西学生ジムカーナ選手権大会で団体優勝を飾ったときのもの
インタビューで熱い思いを語ってくれた主将の寺尾君(左)と副主将の岩井君(右)
もうすぐテストが始まるので、それまでに車両整備を終えておきたいところ。作業にも熱が入ります

大正14年創立の大阪専門学校と昭和18年創立の大阪理工科大学を母体とし、昭和24年に設立された近畿大学。通称“近大”。キャンパスは、本部のある大阪府東大阪市をはじめ、同府大阪狭山市、奈良県奈良市、和歌山県紀の川市など、近畿エリア各地にあり、西は広島や福岡にもそれぞれ学部が設置されています。
 
近年は、不可能と言われていたクロマグロの完全養殖に世界で初めて成功したことで名を馳せました。また、水上競技部、硬式野球部、洋弓部などは名門と呼ばれ、オリンピックやプロの舞台で活躍する名選手も数多く輩出しています。
 
体育会自動車部の活動場所は、東大阪キャンパスからやや離れたところにあるとのこと。部員の誘導を受けながら向かうと、町工場がたくさん並ぶ下町風情いっぱいのエリアに到着。すると、小さな工場のすぐ隣に近大自動車部のガレージを発見しました。さっそく部室で主将の寺尾君と副主将の岩井君から話を聞くことに。
 
部室の壁には、体育会近大スポーツ編集部が発行した、ここ数年分のスポーツ新聞が貼られています。そのどれにも「全日本二連覇」や「全日個人V」といった輝かしいコピーが踊っていました。聞くところによると、近大自動部はジムカーナに力を入れており、新聞記事は先輩たちが残した大会の好成績を伝える内容でした。
 
「一応ダートは出るんですが…。フィギュアは出ません。僕らの代でも、あくまでもジムカーナで勝つことが主な目標」と岩井君。しかし、ここ2年ほど全日本の大会では、表彰台から遠ざかっています。「今が踏ん張り時。先輩方が残してくれた競技車両は戦闘力が高いんです。ただそれを活かす技術がまだまだで…」と岩井君が部の課題を教えてくれました。

他大学に負けない戦闘力を誇るホンダ シビックEG6

ガレージにはリフトが1基あります。「これがあると整備がかなりスムーズ」と後輩たちも笑顔
工具やパーツは、整理整頓しておくのが鉄則。空の容器を収納ボックスとしてうまく再利用しています
写真手前の車両は寺尾君のマイカー。2014年式のインプレッサWRX STIです
ボディをガチガチにロールバーで補強。車体がヨレる心配もなく、安定した走りを実現

近大自動車部のジムカーナ競技車両は、ホンダ シビックEG6。数年前に先輩がこの車両を入手した後、徹底的に整備しました。「ボディはロールバーを20点ほど組みました」と寺尾君。これにより、ボディの剛性が飛躍的に上がり、走行中の車体もゆがまず、クルマの動きもよくなります。関西の大学自動車部では、ここまでしっかりロールバーを組んだ競技車両は見当たらないとのこと。ちなみに、エンジンはインテグラのB18Cをオーバーホールしてから搭載しています。
 
「エアクリーナーはホンダの『無限』。トルクが上がりますね。マフラーも『無限』のツインループマフラーで、パワーの増強を図りました。やっぱりホンダ車には、ホンダのパーツが一番相性がいいんです」と寺尾君がシビックEG6のスペックを教えてくれました。
 
近大自動車部は、2009年に創部初の全日本ジムカーナ選手権大会制覇。翌年2連覇を果たし、2011年は3位を獲得。順調にすばらしい成績を収めてきました。「全日本のレースの舞台は鈴鹿。どうしても全日本では勝ちたいので、ミッションのギア比が鈴鹿のサーキットに適した調整にもなっています」と岩井君が情報を補足。
 
「正直、これ以上さわるところがないという領域まで先輩が整備して引き渡してくれたんです」と岩井君。「だから、僕らにはこの性能を落とさないように維持し続けるという使命感があるんです」と寺尾君がキッパリ。近頃は、若干パワーが落ちた感があるとのことで、エンジンと足回りのオーバーホールの必要性を感じているそうです。

8月は練習漬け。そして全日本へ!

昨年の全日本学生ジムカーナ選手権大会のレース後に撮影された写真。今年は最低でも表彰台を狙いたいところ
「先輩がしっかりつくり込んでくれたので、このシビックEG6を崇拝しています」と岩井君
手前は2009年時の学内スポーツ新聞。「日本一」の見出しが輝いています
ホンダ シビックEG6は、ジムカーナ団体戦で選抜されたドライバー以外は運転してはならないという鉄の掟が掲げられています

今回の取材は、平成26年度の全日本ジムカーナ選手権大会が開かれるおよそ1カ月前に行いました。「大会前にはテストもあるので、今はまだ整備に時間を費やす段階」と寺尾君。全日本ジムカーナ選手権大会で優勝することを目標とする、近大自動車部にとって8月は勝負月間です。ここ2年は表彰台に立てていない分、さらに気合いが入ります。
 
8月に入ると練習漬けの日々に突入。他大学との合同練習にも積極的に加わるので、休みはないそうです。実際8月のスケジュールを見せてもらうと、7月上旬の時点で、多くの日程が練習で埋められています。「まだまだ埋めていきますよ!」と8月に向けて気合い十分な寺尾君です。
 
昨秋と今春に開かれた全関西の学生ジムカーナ選手権大会では、団体で優勝。個人でも寺尾君が表彰台に立ちました。しかし、全国の猛者を相手にすると、今ひとつ実力が発揮できません。「ドライビングテクニックを上達させるためには、まずは気持ち。『絶対に勝ちたい!』という強い気持ちを全員が持つことが大事だと思っています」と寺尾君は鬼気迫る勢いで語ります。
 
エースドライバーは寺尾君ですが、団体はひとりでは勝てません。そこで彼以外のドライバーの技術力向上が重要なカギとなります。「8月の練習では『寺尾を追い越してやる!』」という熱い魂を部員に注入していきたい」と取材終盤になってますます寺尾君はヒートアップ。全日本にかける気持ちは、部の中では一番かもしれません。
 
“ジムカーナの近大”を今一度全国の大学自動車部に知らしめるべく、近大自動車部の熱い夏がいよいよ幕を開けます。

[ガズー編集部]

MORIZO on the Road