大学自動車部ってどんなところ? -日本大学編-
全国の大学や専門学校などの自動車部におじゃまして、日頃の活動風景やご自慢の部員を紹介するこのコーナー。
今回は2013年度の全日本学生自動車連盟年間総合杯を制した日本大学を取材。
自他共に認める強豪校の強さの秘訣を、意外なエピソードとともにお届けします。
★日本大学自動車部プロフィール
●部員数 :男子26名 / 女子 2名 ※部員数は2014年7月現在
部員紹介ページ
●部車 :ホンダ インテグラ、ホンダ シビック、トヨタ スターレットほか
●活動内容:活動日は土曜・日曜の9:00~暗くなるまで。
日ごろは日本大学稲城総合グラウンド内のガレージで部車の整備作業を行い、1大会につき4~5回ほどサーキットなどに遠征して走行練習を行う。
全日本学生自動車連盟が主催するジムカーナやダートトライアルなどの公式戦に参戦し、全日本および全関東の2つのシリーズで優勝を目指す。
●活動実績:2013年度 全日本学生自動車連盟年間総合杯 男子団体 優勝
2013年度 全日本学生自動車連盟年間総合杯 女子団体 優勝
2013年度 全日本学生ダートトライアル選手権大会 男子の部 優勝
2013年度 全日本学生ダートトライアル選手権大会 女子の部 優勝
強くなるためには弱点を克服すべし
今回訪問したのは、ご存じ日本大学。1889年(明治22年)に創立された日本法律学校を前身とする私学で、多彩なフィールドを備えた総合大学としても有名です。大学には14学部87学科があり、そのほかにも大学院から短大、付属小中高、幼稚園までのネットワークが全国に広がっています。在籍している学生・生徒・児童・園児の数はなんと11万4525人!(平成26年5月現在)
創部84年という長い歴史を誇る自動車部は、東京都稲城市にある稲城総合グラウンド内の自動車部部室を本拠地としています。総勢28人の大所帯となる日大自動車部は上のプロフィールにもあるとおり、昨年度の全日本学生自動車連盟年間総合杯で男女アベック優勝を飾った強豪です。
その強さの秘密を、ロックバンド「ASIAN KUNG-FU GENERATION」のボーカル後藤正文さんにちょっと似ている(?)という会計担当、竹内靖貴さん(4年)に聞いてみました。
「いろいろあるとは思うのですが、予算の使い方にはかなり気を使ってますね。ダートトライアルとジムカーナ、フィギュアという3種目をやっているわけですが、予算は本当に限られていますので、それらすべてにお金をたくさん注ぎ込むことはできない。なので、まずは『自分たちのどこが強く、どこが弱いのか?』ということを冷静に分析します。そして、弱い部分に予算を集中投下し、そのうえで強い部分はそのまま伸ばす……という感じでコントロールしているんです」
日本大学に限らず、どうしたって少ない予算でやりくりせざるを得ない大学自動車部では、こういった戦略的バジェットコントロールも、結果を出すためには重要なポイントなのでしょう。
しかし竹内さんは、「でもそれ以上に、今から5年前にいらっしゃった“ある先輩”の功績がデカいのかもしれません」とも言う。……“ある先輩”とは?
どん底だからこそ大志を抱け
竹内さんから聞いた話を総合すると、“ある先輩”は5年前、明確でどデカいビジョンを打ち立てました。今も「日本大学自動車部 行動価値基準」として残るそのビジョンは、以下のとおりです。
●目指すべき究極の目標(ビジョン)
4年後も勝ち続ける、強いチーム・強い選手・強い精神の創造
●中期的ビジョン
各部員全員が全身全霊を尽くす。
自己とチームの限界に挑み続け、常に満足しない。
あらゆる成長機会に対し貪欲であり続ける。
その上で、世界中の誰よりも最高に楽しむ。
●短期的ビジョン:(割愛)
●目標追求の結果:全日本総合杯団体優勝
(以下、割愛)
「割愛」の部分には細かいことがいろいろ描かれているのですが、とにかくアツいメッセージでした。しかし、こういったビジョンというのは一般企業には割とよくあるもので、圧倒的にすごいかといえば、そうでもないでしょう。しかしすごいのはこのビジョンを打ち立てた時期というか、当時の部の状況です。
「これができた当時って、部員が5人しかいなかったんですよ。成績も、当然ですが低迷してました」(竹内さん)
長い歴史を持つ日大自動車部だけに良かった時期も悪かった時期もあるわけですが、“ある先輩”がこれを作った時期は、いわばどん底だったわけです。しかしどん底のなかで、当時のたった5人の部員は「全日本総合杯団体優勝」を明確にイメージし、そして、それが可能になるだけの技術的・精神的な修練を積み、後に入ってきた下級生たちにもビジョンを真剣に伝えたのです。
そして4年後、ビジョンは「現実」に変わりました。
「そんな歴史を持つウチの部ですので、入部して真剣に頑張れば、技術や肉体はもちろん、精神的にも絶対に成長できます。『いろいろな意味で強くなりたかったら日大自動車部!』ってことで、ぜひよろしくお願いします(笑)」(竹内さん)
部員ひとりひとりに役割がある
以上の紹介から、「もしかしたら日大自動車部って、上級生が竹刀で下級生をシバキ倒すような超絶体育会系……?」と不安に思った人もいるかもしれませんが、当然それは違います。「行動価値基準」にも「世界中の誰よりも最高に楽しむ」と書かれているとおり、部内の雰囲気は至って明るくフレンドリー。取材者が見た限り、過剰すぎる上下関係のようなものも一切ありません。主将の寺田倫康さん(4年)も次のように語ります。
「伝統はもちろん大切にしたいし、これからも大切にしていきますが、そこにこだわりすぎてはいけないとも思っています。良い部分は確実に残しながらも、その代その代のやり方を加えていったほうが、結果としては素晴らしい部になるんじゃないでしょうか。僕が大事にしているのは“気持ち”ですね。人間は一人ひとりに必ず役割があると思うんです。ですから、『その人ならではの良いところを伸ばすにはどうしたらいいだろう?』ということを常に考えています」
「役割」という点では、2人の4年生女子部員が果たしている役割も大きいのかもしれません。男子団体と同様、昨年の全日本学生自動車連盟年間総合杯 女子団体で見事優勝した実力も「役割」の一つですが、部全体のムードを明るくソフトなものにするという役割も果たしているように思えました。
トラックでのフィギュア競技を得意とする坂巻理沙さん(4年)は、同期の女子部員である田村真理子さん(4年)について「彼女はブレーキングがかなり上手なんですよ」とホメ、田村さんは坂巻さんについて「彼女の“踏み”は男子並み(笑)」とたたえる。どうやら性格は正反対らしい2人ですが、そこが逆に良いコンビネーションの源のよう。
以上のように楽しく、それと同時にうれし涙・悔し涙を本気で流せるほどクルマに打ち込み、そして「成長」したい人にとって、日本大学自動車部は最高の居場所のひとつと言えるでしょう。
(文=谷津正行/写真=ダン・アオキ)
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