【大学自動車部】35年守りつづけている伝統行事とは? -神戸大学編-

全国の大学や専門学校などの自動車部におじゃまして、日頃の活動風景やご自慢部員をレポート。
今回は、ラリーにこだわる神戸大学体育会自動車部を訪問しました。

★​神戸大学体育会自動車部プロフィール
●部員数:男子10名 ※部員数は2014年9月現在
部員紹介ページ
●部車:ホンダ シビックEG6ほか
●活動内容:火曜は17時30分から、土曜は13時30分から部室にて整備作業を開始。他大学に比べて参加するレースが少ないので、部のクルマの整備よりも主に個人車の整備が中心。「神大ラリー」を運営するため、数ヶ月かけて準備に取り組んでいる。
●活動実績:平成26年度 第1回全関西学生ジムカーナ選手権大会 男子団体8位

ジムカーナやダートにはほとんど出ない!?

各学部は六甲、楠、名谷、深江の各地区に設置され、附属学校や一部の研究センターなどが市内を中心に点在。
インタビューに答えてくれた部長の磯田君。部のエースドライバーでもあります。
現在も「201」のカーナンバーは受け継がれており、誇りに思う部員も少なくありません。
取材時は、部員のクルマのマフラー交換をしていました。部のクルマの整備がない時は、皆個人車整備に励みます。

戦後、「国立学校設置法」の公布にともない、神戸経済大学、神戸経済大学予科、神戸経済大学附属経営学專門部など、7つの諸学校を併合し、神戸大学は誕生。当初は6学部でスタートしましたが、現在は11学部、14の大学院研究科、1研究環、1研究所と複数のセンターを有する総合大学となっています。

キャンパスは、神戸市内に点在しており、法学部、経済学部、文学部、理学部など、多くの学部は六甲台キャンパスに集結しています。 
自動車部は、六甲第1キャンパス内のグラウンド西側に建つ部室で活動しており、運動部員たちの元気なかけ声に交じってエンジン音が鳴り響くという状況です。さっそく部長の磯田君に話を聞きました。

神大自動車部のOBには80歳の方もいらっしゃるとのことで、部の歴史は相当深いようです。かつての神大は関西ではトップレベルの実力を誇っており、レースで1位に輝くことが多かったとか。「神大がレースに出る時のカーナンバーは『201』。なぜ『1』なのかというと、先輩方が1位を獲り続けてきたからなんです」。ちなみに「2」は関西地区のエリアナンバー。つまり、関西地区で1番の大学という意味をナンバーが表現しているのです。

では現在はというと、レースは年に一度全関西のジムカーナ選手権に出場しているだけと少々おとなしめ。

「近年は部としてあらゆるレースに出なくてはいけないというスタンスで活動はしていません。というのも、僕らには必ず引き継がなければならない伝統行事があり、そこに活動の軸を置く考えなんです」

いったい神大自動車部の伝統行事とは何なのでしょうか。

ラリーの運営を通じて社会人スキルを磨く

今年は「神大ラリー」をPRするのぼりを30本も制作。「新しいので、まだ折り目がついてますね」と磯田君。
上下関係はいい意味でゆるいので、活動中は皆笑顔が絶えません。
企画書の作成ほか、PCを使う作業はバケットシートに身を沈めて。
毎年「神大ラリー」は夜間に開催。今年は昼開催の案も出て一時検討もしました。

磯田君が話す伝統行事とは「神大ラリー」です。関西の大学自動車部の多くがジムカーナとダートトライアル、フィギュアに注力する中、ラリー中心で活動するのはとても珍しいとのこと。しかも、主催者となってレースそのものを運営しているというからさらに驚きです。

「神大ラリー」は、JAF中部・近畿ラリー選手権のうちの一戦に数えられ、今年の9月開催で35周年を迎えました。今年は、旧七帝大が集まって行われる「七帝戦」のラリーと併催し、そちらの窓口となった京都大学の自動車部と緊密な連携を図って運営準備が進められました。

例年ラリーの準備は、まず場所と開催時期の選定から始まります。準備に協力してくれるOBもいて、そのあたりは比較的スムーズです。場所と日時を絞り込んだら、役場や自治体、管轄警察へ開催のお願いや道路利用申請を申し出ます。なぜなら、ラリーは実際に使用されている道路を使って行われるからです。こうした申請には時間を要するため、開催時期よりも何ヶ月も前に交渉に乗り出します。

ほかにも、ホテルやガソリンスタンドの手配、協賛企業の獲得など、複数の仕事を部員で手分けして行います。「交渉を通じて企業や自治体、警察の皆さんとふれ合うと、自分が社会人になった時に、どう振る舞うべきかを学ばせてもらえます」と磯田君。「この経験はいずれ就職活動をする時に必ず役に立つ」とキッパリ。事実、インタビュー中の磯田君はハキハキと言葉に詰まることなく回答を続け、どこか堂々とした印象を受けます。

交渉には企画書もつくって臨みます。今年の企画書を見せてもらうと、冒頭あいさつ、部の紹介、大会概要のほかに、モータースポーツの現状やラリーについての説明などがA4用紙1枚に見やすくまとまっていました。「振り返ると、どうやらドライビングテクニックよりも社会人スキルが磨かれているかもしれないですね」と苦笑いする磯田君です。

ラリーは神大自動車部のアイデンティティ

茶目っ気たっぷりの部員たち。この時部室で磯田君は熱く語っている最中…。
ラリーファンに人気のインプレッサ、この日はミッションを降ろしてオーバーホール中。整備性のいいリフトが欲しい!と嘆きの声が。
徐々にラリーへの出場本数が増えてきました。「ともにレースに出場してくれるOBさんには感謝です」。
取材中はポジティブオーラ全開の皆さん。これなら次回の「神大ラリー」の運営も問題なさそう!

実は「神大ラリー」には、神大自動車部は選手として誰も出場していません。完全に運営側の業務のみ。これではいくらなんでもフラストレーションが溜まるのではという心配をしてしまいます。「替わりにJMRC近畿アベレージラリーシリーズという別のラリーに年6〜7戦出場しています」と磯田君。このラリーでは、昨年度見事大学自動車部クラスで年間総合優勝に輝いています。

アベレージラリーは、タイムを競う一般的なラリーとは違い、運営側から指示された速度で走行し、いかに正確な時刻にチェックポイントを通過するかという競技。また、一般的なラリーはエントリー費用が学生には負担が大きいのですが、こちらは比較的安価なので年間を通して参戦することができるのです。今年も最終戦が秋に開催されますが、神大は優勝の可能性を残しています。

磯田君は3年生ということで、秋を過ぎた頃には次の世代に主将のバトンを渡します。「後輩たちに望むことは、次の『神大ラリー』も成功させることと、積極的にラリーに選手として出場すること」と言います。

昨年からOBも巻き込んで「シロキヤラリー」「若狭ラリー」「いなべ福王ラリー」に参戦。これらはエントリーするのにやや高い金額がかかりますが、磯田君は「うまくやりくりして参加できるようにし、実戦での経験値を少しでも上げてもらいたい」との思いを抱いています。

​「個人的には、ラリーは神大自動車部のアイデンティティだと思っています。だからこそ、後輩たちにもラリーにはこだわりを持って取り組んでもらいたいんです」

最後に熱いメッセージを発したくれた磯田君。彼の思いはきっと後輩たちの胸に響くに違いありません。

関連サイト
【HP】神戸大学自動車部

[ガズー編集部]