“いつでも、どんな時でも速いフォーミュラーカー”の秘訣とは?【学生フォーミュラ –名古屋大学編-】
全国の大学や専門学校などのフォーミュラチームにおじゃまして、日頃の活動風景やご自慢部員をレポート。今回は、学生フォーミュラカーの大会で悲願の初優勝を遂げた名古屋大学のフォーミュラチームを訪問しました。
★名古屋大学フォーミュラチームFEMプロフィール
●部員数:男子 31名/ 女子 4名 ※部員数は2014年10月現在
●活動内容:リーダーを含む執行部のもと、パワートレイン、シャシー、マネジメントの3部門を設置。各部門のメンバーは、割り振られたミッションを達成日までに間に合わせることができれば活動の参加日程と時間は自由。なお、全体ミーティングは、毎週火曜日に実施。
●活動実績:2014年度 第12回全日本学生フォーミュラ大会 優勝
2013年度 第11回全日本学生フォーミュラ大会 4位
2012年度 第10回全日本学生フォーミュラ大会 4位 など
2014年秋、全日本学生フォーミュラ大会 優勝
2014年10月に、この年のノーベル賞受賞者の発表が行われ、青色LEDの発見と実用化に寄与した赤﨑勇・天野浩の両氏が受賞されることに決まりました。赤﨑氏は名古屋大学の特別教授・名誉教授で、天野氏は同大学院工学研究科の教授です。両名の受賞によって、名古屋大学関係者からのノーベル賞受賞者は6名となりました。
まさに東海地方が誇る名学府と言える名古屋大学。そのキャンパスは市内に3カ所あり、もっとも多くの学部が集うのが名古屋市千種区にある東山キャンパスです。今回、取材に伺った名古屋大学フォーミュラチーム(通称FEM)もこちらで活動しています。
工学部にある部室に到着すると、自動車部の部室にあるような大きなガレージが見当たりません。小さな研究室とその脇の廊下スペースがFEMの活動拠点。「せまくてすみません(笑)」と恐縮しながら取材に応じてくれたのは、昨シーズンのリーダーを務めた小林さんと今シーズンのリーダーを務める西尾さんです。
FEMは毎年9月に行われる全日本学生フォーミュラ大会で優勝することを目標に活動しており、今年の第12回大会では見事優勝を果たし、積年の夢を叶えることができたのです。この時のリーダーが小林さんです。
第10・11回大会の時、FEMは表彰台まであと一歩という成績。いざ小林さんに代替わりした時、彼は「絶対に優勝する」ことを目標に定め、どんなクルマをつくりたいか、受け継がれてきたコンセプトをイチから改めました。
「本当に速いフォーミュラカーって、どんな設計がなされているのか今一度考え直しました。部員にもどんなマシンをつくってみたいか、次々に意見を出してもらい、皆で意見を戦わせたのです」
小林さんの熱意は部員に伝わり、“いつでも、どんな時でも速いフォーミュラーカー”というコンセプトが構築されました。
多くの種目で好成績を叩き出した
小林さんは、これまでの開発体制にもメスを入れました。
「例えば、エンジンのパワーを上げる必要があったとして、その場合エンジン担当がパワーを出すことだけに注力していました。でも、パワーを上げたら、その分足回りの設計にも変化が必要。つまり、エンジンと足回りの両担当者の連携が求められるわけです。以前まではその連携がスムーズでなかったので、改善しました。部分的に強化を図るのではなく、総合的な強化が肝心なのです」
マシンの完成予定は春でした。設計・製作段階では、常にコンセプトにフィットした作業ができているか目を光らせ、部員にも積極的に声かけをし、マシンができてからのテスト走行でも、縦G・横Gをはじめ、多彩なデータを採取し、大会本番でベストパフォーマンスが発揮できるよう調整をかけました。
「テスト走行でいいタイムが出ても、浮かれません。浮かれている部員には、『本番で好タイムを出してから喜ぼうよ』と喝を入れました」と小林さん。
コンセプトの変更から1年弱。理想に近いマシンができたとの自信を得た小林さん率いるFEMは、大会の種目の中でも高い点数が加算される「エンデュランス(指定距離を走ってタイムを競う)」で堂々トップに立ちました。
「『エンデュランス』は完走するだけでもやっとというチームが多いのですが、その中で、1位になれたのは本当に感動しました」と大会を振り返る小林さんは顔をほころばせていました。
「エンデュランス」以外にも、マシンの優位点や販売したと仮定した場合のビジネスプランをアピールする「プレゼンテーション」で1位、直線を走って加速性能を計測する「アクセラレーション」で3位を獲得するなど各種目で好成績を収め、優勝に輝いたのです。
チャレンジスピリットでマシンを完成させる
悲願の初優勝の後、小林さんからバトンを渡された西尾さんは「プレッシャーが大きい」と思わず本音をチラリ。取材時(2014年10月)は、コンセプト作りに取り掛かる段階で、どんなクルマをつくるかを書類に落とし込む作業の真っただ中でした。キーボードを叩く手が止まるたびに、小林さんが作成したコンセプト書を眺める西尾さんに対し、「完成された内容だけにどんなバージョンアップを施していいか、さらに悩む」と苦笑いです。
「昨シーズンは、2年生が製作工程で活躍してくれました。優勝を決めたマシンをつくり上げた彼らからは、彼らなりの反省点が抽出できると思うので、まずそこを全面的に反映させたコンセプトを練りたいです」
学生フォーミュラ大会はアメリカが発祥で世界各地に広まり、現在はヨーロッパが強豪エリアとして知られています。特にドイツでは優秀なマシンが数多く誕生しているとのこと。西尾さんは「FEMが優勝したとはいえ、世界規模で見ると、まだ下位レベル。同じ学生がつくっているのだから、僕らにもまだできることがあるはず」と前を向きます。
「実はこの前の大会ではライバルのチームがタイヤのサイズダウンを行うなど、大胆な変革を試みてきました。これはある種の賭けです。というのも、セッティングを大きく変えることで、事態が悪い方に向く可能性も格段に上がってしまうから。でも優勝チームだからといって守りに入るのではなく、チャレンジスピリットで今シーズンのマシン開発に力を入れたいです」
小林さんの熱いフォーミュラ愛は、次の世代にしっかりと伝わっていた様子。デフェンディングチャンピオンとして臨む来年の第13回大会は、名古屋大学連覇の期待がかかります。
関連サイト
【HP】名古屋大学フォーミュラチーム
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