【大学自動車部】古豪復活なるか!? -東京農業大学-
全国の大学や専門学校などの自動車部におじゃまして、日ごろの活動風景やご自慢の部員を紹介するこのコーナー。
今回は東京農業大学の農友会自動車部を訪問。部員不足の危機を乗り越え、復活をもくろむ彼らの活動を紹介します。
★東京農業大学農友会自動車部プロフィール
●部員数:男子14名 / 女子 6名 ※部員数は2014年11月現在
部員紹介ページ
●部車:ホンダ・シビック、トヨタ・プロボックスほか
●活動内容:平日16:30~18:30および土曜日の13:00~18:00、東京都世田谷区の世田谷キャンパス内ガレージにて部車の整備を行う。競技シーズン中は茨城中央サーキットなどで走行練習を行う。現時点の目標は「全日本および全関東各大会で記録を残すこと」
●活動実績:2014年度 関東学生対抗軽自動車6時間耐久レース 学生の部 4位
窮地を脱し、強豪としての復活を目指す
今回おじゃましたのは東京都世田谷区の東京農業大学農友会自動車部です。東京農業大学の源流は、江戸幕府の高官であり明治新政府でも要職を歴任した榎本武揚が、幕末から明治にかけての教育者・伊庭想太郎らとともに1885年(明治18年)に設立した「徳川育英会」にあります。
徳川育英会は旧幕臣の子弟に対する英才教育のための奨学金制度で、それを母体に1891年(明治24年)に生まれたのが農業科と商業科、普通科の3科からなる「徳川育英会育英黌」。これが1893年に「東京農学校」となり、そして現在の東京農業大学へとつながりました。
初代学長の横井時敬は勉強・研究のほかに体育と道徳にも大いに力を入れ、「物質主義に溺れることなく心身ともに健全で、いかなる逆境にもくじけない気骨と主体性の持ち主たれ」という教えを徹底しました。このあたりが、現在も続く東京農大の硬派な校風の源なのでしょう。
そんな東京農大に自動車部が誕生したのは1934年(昭和9年)のこと。今年11月には創部80周年の記念式典が行われ、現在は合計20名の現役部員が全日本学生自動車連盟およびその関東支部が主催する各種公式戦にチャレンジしています。
現在の東京農大自動車部の雰囲気はどんなものなのか……ということで、世田谷区のほぼド真ん中に位置する同部の部室およびガレージを訪問。まずは主将の石岡慎一郎さん(4年)にいろいろと聞いてみましょう。
「今から20年ぐらい前は結構な強豪だったのですが、僕が入部した頃は上級生の部員数も同期もかなり少なく、人手不足のため大会にも出られない状況でした。僕の1学年下も最初は5名入部したのですが、その後全員が辞めてしまいまして(笑)。しばらくの間は『大会にも出られないのに(人手不足のため)週に7日はガレージで整備』という苦しい状況が続きました」
しかし現在は2年生の11人を筆頭に、ずいぶん部員数が増えましたね?
「はい、おかげさまでやっと“戦える態勢”ができてきました。今季はまだ復活の途上ということで大きな結果は出ていませんが、来年以降、後輩たちが必ずや表彰台の高いところにのぼってくれるだろうと確信しています」
大会参戦もままならなかった状況からいかに復活したのか? 引き続き石岡主将に伺いましょう。
「最後までやり通す」という思いが支えた4年間
「部員数を増やすにあたり、新歓の内容といいますか雰囲気を大きく変えてみました。それまでは伝統的に硬派といいますか、かなりカタい感じの勧誘活動をしていたのですが、近隣の自動車教習所の協力を得てそこに部車を持ち込ませていただき、体験試乗会のようなものを開催しました。で、新入生の方々に“クルマを運転するというのは単純に楽しいことなんだ!”ということを体でわかってもらったんです」
そして翌年は部のプロモーションビデオ(PV)もエンターテインメント性あふれるものに作り直したそうです。
「2年の小林愛夢が中心になって作ってくれたのですが、自動車競技ならではの躍動感とスリル、エンターテインメント性などが伝わるようにまとめたPVです。おかげさまで『あのPVを見て自動車部への入部を決めました!』という現1年生も多いようです」
そのほかに「ドライブ企画」なども行った結果、めでたくなかなかの大所帯となった東京農大自動車部。しかし石岡主将が1、2年生だった頃は失礼ながら部員数もさびしい限りだったわけで、そんな状況下、「もう辞めちゃおうかな?」とは思わなかったのですか?
「それはまったく思いませんでしたね。……と言いますのは、僕は中学の頃バスケ部に入っていたのですが、2年生のときに辞めてしまったんです。で、高校のときはいわゆる帰宅部。そして大学で自動車部に入る際に自分自身で決めたのは、『今回こそ最後までやり通す!』ということでした。ですから、つらいと思ったことは何回もありましたが、辞めようと思ったことは一回もありません」
そうして続けてきた結果、自動車部生活も残すところあとわずかとなったわけですが、どうでしたか、最初の誓いどおり続けてみて?
「……ほんと、続けて良かったですね。絶対にやりたかったモータースポーツに打ち込むことができたという点でも大満足ですし、みんなで目標に向かって協力し合い、真剣に努力するというチームスポーツの醍醐味(だいごみ)を味わうこともできた。……すべてが勉強になる4年間でしたよ!」
1、2年生の頃は大会への参加もままならなかったため、「僕のタイムは下級生とそんな変わらないんです。決して速くはありません」と言う石岡主将。でも、自分の持てる力は出しきった、とにかくやりきったのだという満足感あふれる表情で、自信を持って4年間を振り返ってくれました。
クルマそのものの魅力と団体競技の面白さ
下級生たちから「静かなるカリスマ」と呼ばれている(?)石岡主将の手腕により、見事復活への道を歩きはじめている東京農大自動車部。その下級生たちは今、どんなことを思っているのでしょうか。まずは次期主将とうわさされている山内柾親さん(2年)に聞いてみましょう。
「高校時代は自転車のスピード競技に打ち込んでいたのですが、大学自動車部というものにも興味があり、受験勉強中に農大自動車部のブログを読んでいたりしました。で、入学後に『やっぱり面白そうだな、自動車部』ということで入ってみたのですが、うん、正解でしたね。単にクルマを運転するだけでなく“競技”をするという点が、非常に面白い。一回一回の練習の成果が良くも悪くも結果に出ますので、結果が良ければ本当にうれしいし、その逆の場合は真剣に悔しい。……やりがいがあるといいますか、努力のしがいがありますよね」
日頃の活動は大変だけど、走ればすべてがチャラになってお釣りがくるほど楽しいという山内さん。根っからのスピード好きというか、競技者体質なのかもしれませんね。
お次は先ほど話に出たPVの制作を担当した小林愛夢さん(2年)と、同期の山﨑裕也さん(2年)に率直なところを話し合ってもらいました。
小林さん(以下敬称略)「整備の計画立てているときが一番楽しいよね」
山﨑さん(以下敬称略)「だよねぇ。でも、楽しいのは……」
小林「プランニングしているときだけで……」
山﨑「いざ作業が始まると『あーもう終わらねえ!』とか」
小林「『部品がない! でも買う金がない!』とか」
山﨑「そんなのばっかだよね(笑)」
小林「でも作業が終わると、今度は『あぁオレ、もうちょっと頑張ればよかったなぁ……』っていつも思うんだよね」
山﨑「うん。『もっと頑張れたはずだよな、オレ……』とか」
小林「だよねぇ……」
先ほどのお二人とは打って変わって、しみじみと整備にまつわる思いを語るお二人。なんだかんだと仲が良く、そしてなんだかんだ言いつつ頑張っているようです。青春ですね。
このようにバラエティーに富んだ面々がそろう農大自動車部は、農大ならではのちょっと硬派な雰囲気と、現代的で自由闊達(かったつ)なムードが同居しているなかなかステキな自動車部でした。最後はやはり、石岡主将に締めてもらいましょう。
「農大自動車部はモータースポーツもそうですが、“そもそもクルマは楽しい!”ということが絶対にわかってもらえる部活動であると思っています。そして全員で協力し合いながら高みを目指すという、団体競技ならではの面白さもあります。ですので、もしもあなたがクルマに興味をお持ちであるならば、ぜひお気軽に農大一高裏手の自動車部ガレージまで遊びにきてください。私は来年春に卒業しますが、ご覧のとおりの元気な後輩たちがあなたのお越しをお待ちしています!」
(文=谷津正行/写真=ダン・アオキ)
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