軽量・コンパクトをキープコンセプトに、初の表彰台を目指す!【学生フォーミュラ -名古屋工業大学編-】
全国の大学や専門学校などのフォーミュラチームにおじゃまして、日頃の活動風景や自慢の部員をレポート。今回は、第1回目の全日本学生フォーミュラ大会から参戦している古豪、名古屋工業大学のチーム「N.I.T. Formula Project」。2014年は表彰台まであと一歩の総合7位。2015年は初の表彰台を狙っています。
★名古屋工業大学フォーミュラプロジェクト プロフィール
●部員数:18名 ※部員数は2015年1月時点
●活動内容:毎週土曜日10時~昼頃まで定例会議。フレーム・サスペンション・内外装で構成されるシャシー班、エンジン・電装・ドライブトレインからなるパワートレイン班などが、作業に取り組んでいます。
●活動実績:2014年度 第12回全日本学生フォーミュラ大会 7位
2013年度 第11回全日本学生フォーミュラ大会 13位
2012年度 第10回全日本学生フォーミュラ大会 34位 など
チームの活動は教育プロジェクトの一環
愛知県名古屋市にある名古屋工業大学。地元では名工大(めいこうだい)の名で親しまれる国立大学です。学部は工学部のみで、機械工学科、建築・デザイン工学科など7つの学科からなります。大学院への進学率が高く、卒業後は自動車を中心にした製造業で働く学生も多く、ものづくり王国・愛知をはじめ、日本の産業界を牽引する優秀な人材を数多く輩出している大学なのです。
大学の正門を入ってすぐにあるのが、活動拠点となる建物「ものづくりテクノセンター」です。建物前で取材班を出迎えてくれたのが、チームの責任者であるプロジェクトリーダー・前田真吾さん。部室へと案内してくれる傍ら、「フォーミュラの活動は、ものづくりテクノセンター"の教育プログラムの一環として行われているんです」と教えてくれました。
今回の取材はテスト期間でしたが、忙しい合間を縫って、多くのチームメンバーが駆けつけてくれました。チームは他の部活やサークルと同じ感覚で、興味を持った人は自由に入ることができ、現在18名が在籍しています。毎年4月に機械工学科の1年生全員が受ける「機械工学序論」という授業の場を借りてフォーミュラの説明をするなど、メンバーの確保にも力を入れています。
取材に訪れた1月は4月上旬のシェイクダウン(テスト走行)を目指して車両開発の真っ最中。特に学校が春休みになれば、チームメンバーは平日の昼間はほぼ製作一辺倒になるそうで、部室でパソコンを使い3D CADを操作したり、工場の旋盤、フライス盤などを駆使したりして車両作りを進めていきます。
迷った末にウィング装着を決断
2014年は総合7位だったフォーミュラチーム。6位以上の表彰台にはあと一歩及びませんでした。これには前田さんも「過去最高タイの記録(2010年にも7位を獲得)とはいえ、悔しいという気持ちの方が大きかった」と振り返ります。また、6位との差が僅か0.63ポイントだった点も悔しさに拍車をかけます。そこで2015年に掲げたのは「総合得点800点、目指せ表彰台」。2014年は約735ポイントだったことを考えると、各審査で様々なポイントの上積みが必要です。
「勝てる車両」を作るため、今シーズンはウィングの装着に着手しました。チームではこれまで車体後部にエアロパーツの一種であるディフューザーこそ付けるものの、フロントやリアウィングといったエアロパーツは装着してきませんでした。というのも、チームは「軽量、低重心、低慣性」という車両コンセプトを代々受け継いできたからです。全日本学生フォーミュラ大会の第一回から参戦し、現在に至るまで単気筒エンジンにこだわり続けるなど、軽量・コンパクトはいわばチームの代名詞。ですが、ウィングを装着すると重心は上がり、重くなります。他の一般的なチームの車両と比べ、約100kg軽かった従来のマシン。このアドバンテージ以上のメリットがあるのでしょうか?
前田さん「たしかに軽量というのは大きな武器です。でも、年々、それだけでは他チームとの差が埋められないことも感じていました」。パワートレイン班リーダー・永瀬公博さん、シャシー班リーダー・中村大さんも「実際、ここ数年でウィングを装着するチームは増えています。ウィングによって増えるダウンフォース量の実測などを行い、プラスされる重量以上に装着するメリットがあると判断しました」。
ウィングの試作は内外装班リーダー・松山大地さんが担当。「まだ、フレームに合わせて細かい修正は必要ですが、大枠は固まりました。新しいパーツは過去データがなく、試作して走らせるしかない。試作パーツを作るためにスケジュール的な大変さはありましたが、ある程度、予想に近い効果は出たので満足しています」
1年生が設計の主要メンバーとして活躍!
車両のポテンシャルアップは重要課題ですが、それ以外でも改善に向けてチームは動き出しています。特に2014年はオートクロス2位、エンデュランス7位と動的審査はまずまずの成績だったものの、静的審査が振るいませんでした。
そのため、従来よりも早く静的審査に向けて動き出しています。たとえば部品を作る過程をまとめたコストレポート。これも大会が終わった2014年9月末から取りかかっています。「いつも4月下旬から動き出していますが、製作効率を上げようとすでに動き出しています。パーツを作る人もコスト意識を持ち作業効率を上げることが狙いです」と前田さん。また、コスト審査対策以外に、デザイン審査に向けたレポートなどにも着手するなど、静的審査に向けた対策を早くもスタートさせています。
一方でステアリングを握るドライバーは全員で4名。前田さんが「エースドライバー」と紹介してくれた高居京平さんが取材時に来てくれました。2014年もエンデュランスを走り、チームに2年連続完走という栄誉をもたらしました。「ドライバーとしては2年目のチャレンジです。去年はマシンを壊さず無事に帰ってくることだけ考えていましたが、今年は去年の経験を生かして良い結果を残したい」と高居さんは意気込みます。
名古屋工業大学は、他チームと比べ1年生に重要な仕事を任せていることも特長です。9月の大会が終わると4年生は引退。来シーズンに向けた車両設計の中心は1・2年生で行うのが伝統です。チームには長く大学院生が在籍していないこともあり、「経験が浅い学部生でも関係ない。いい仕事ができるよう、1年生をみんなでバックアップしよう!」 という土壌が出来あがっているのです。
チームのマネジメントを行う前田さん、シャシー班リーダーの中村さん、パワートレイン班リーダーの永瀬さんが「ウィング、サスペンションのレイアウト変更など例年に比べて大きく変わります。2015年はチャレンジングなシーズンになります!」と声を揃えます。まさに新生とも呼べる名古屋工業大学のN.I.T. Formula Project。軽量・コンパクトをキープコンセプトに、生まれ変わったマシンとチームに注目です!
関連サイト
【HP】名古屋工業大学フォーミュラプロジェクト
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