伝統を武器に強豪”阪大自動車部”復活を目指す!【大学自動車部 -大阪大学編-】

全国の大学や専門学校などの自動車部におじゃまして、日頃の活動風景や自慢の部員をレポート。今回は、全国的にも自動車部の活動が活発だと言われる近畿地方の老舗、大阪大学体育会自動車部を訪問してきました。

★大阪大学体育会自動車部 プロフィール
●部員数:男子8名 ※部員数は2015年2月時点
部員紹介ページ
●部車:ホンダ・CR-X(ジムカーナ用)
三菱・FTO(ダートトライアル用)
●活動内容:毎週金曜の夕方からガレージで部会を行っており、連絡事項の共有をした後はクルマ談義などのトークタイムになることが多い。走行会は月に1~2回程度の頻度で開催し、OBに依頼してコースで指導を受けながら、ジムカーナおよびダートトライアルの実走練習を行う。また、部車の整備などはそれ以外の時間に実施している。
●活動実績:2013年度 第52回七大戦大阪大会 総合優勝
2014年度 第53回七大戦京都大会 総合5位 など

長い歴史を持つ大阪大学の自動車部

大阪府内の3ヶ所に広大なキャンパスを有する大阪大学。写真は豊中キャンパスの一部
大阪府内の3ヶ所に広大なキャンパスを有する大阪大学。写真は豊中キャンパスの一部
豊中キャンパスにある自動車部のガレージは、リフトをはじめ設備が充実し、1.5台程度のスペースがある
豊中キャンパスにある自動車部のガレージは、リフトをはじめ設備が充実し、1.5台程度のスペースがある
右が2014年度の主将を務めた藤沢君、左が2015年度の主将を担う三浦君
右が2014年度の主将を務めた藤沢君、左が2015年度の主将を担う三浦君
「わだち」の制作を務める松岡君。手にしているのが第49号目
「わだち」の制作を務める松岡君。手にしているのが第49号目

歴史を紐解くと、その成り立ちは1838年に設立された塾にまで遡る伝統的な学び舎、大阪大学。通称は「阪大(はんだい)」。大阪大学は旧帝大のひとつに数えられる大学であり、現在では大阪府の吹田市、豊中市、箕面市にキャンパスを持ち、国立大としては学生数が特に多いことでも知られています。自動車部で2014年度の主将を務める藤沢君によれば、「毎年のように工事をしていて、施設がどんどん充実していく」とのこと。​

大阪大学の体育会に所属するのが自動車部です。活動場所は豊中キャンパスにあるガレージが中心。一応は部室も別に与えられていますが、実際には書類などを収納している程度で、部員達はほとんどガレージに集まるそうです。

今回、取材に対応してくれたのは、2015年3月まで主将を務める藤沢君と、その補佐を行なう松岡君。そして、4月以降に主将を引き継ぐ三浦君の3人でした。

自動車部の歴史に詳しい松岡君は「大阪大学の自動車部は戦前からあったそうで、戦中と戦争直後はしばらく活動していなかったものの、戦後しばらく経ってから復活しました」と教えてくれました。具体的にいつから自動車部があったのかまでは分からないそうですが、復活してから現在まで57年ほど続いているそうで、その証拠として見せてくれたのが「わだち」と銘打たれた冊子でした。

「わだち」とは、大阪大学の自動車部でOB向けに発行され続けている冊子です。松岡君はこの冊子を制作する2014年度の「わだち主任」であり、次号で通算50号を数えるとか。なお、2013年度に発行された49号は80ページを超える立派な構成で、判明している範囲で掲載されている歴代OBの名簿では、もっとも遠い先輩で「昭和6年卒業」という人の名が載っています。自動車部では「わだち」に年間の活動レポートなどを掲載し、年度末に開催しているOB会でOBに配布しているそうです。

OBとの繋がりと、伝統的な行事

2013年度に開催した十二大学対抗ジムカーナでの走り。写真は現在もジムカーナ用の部車として活躍するCR-X
2013年度に開催した十二大学対抗ジムカーナでの走り。写真は現在もジムカーナ用の部車として活躍するCR-X
ピンクのシビックはOGから林田君に譲られたもの。阪大自動車部には数年に1度ぐらいの頻度で女性も入部するとのこと
ピンクのシビックはOGから林田君に譲られたもの。阪大自動車部には数年に1度ぐらいの頻度で女性も入部するとのこと
取材時に作業中の状態で置かれていた谷口君の愛車ランエボV。エンジン分解以外はほとんど部内で作業できる
取材時に作業中の状態で置かれていた谷口君の愛車ランエボV。エンジン分解以外はほとんど部内で作業できる
ガレージでただクルマ談義をする「車部(しゃぶ)タイム」。こんな感じのまま朝を迎えることも多く、それがまた楽しい
ガレージでただクルマ談義をする「車部(しゃぶ)タイム」。こんな感じのまま朝を迎えることも多く、それがまた楽しい

大阪府内のホテルで開催する自動車部のOB会には、世代を超えたOBの方々が、毎年20~30名も足を運んでくれるそうです。また、自動車部の活動として毎月のように開催している走行会では、OBの方にも声をかけ運転指導をお願いしているといった師弟関係に似た付き合いがあります。さらに秋には「OBジムカーナ」というイベントを開催し、OBと現役が一緒にクルマを楽しむ機会を作るなど、折に触れOBとの接点を作っています。

また、大阪大学の自動車部が行っている伝統的な行事には、毎年3月に主催している「十二大学対抗ジムカーナ」もあります。これは、関西にある12大学の自動車部に参加を呼びかけ、ジムカーナ競技を行うものですが、実はこのイベントの直後に「全関西学生ジムカーナ選手権」という大会があることから、その前哨戦と位置づけられる側面もあります。大阪大学は、関西にある自動車部が活発に活動する手伝いをしているというわけです。

こうして紹介すると、まるで、先輩にしごかれながら、ストイックに運転技術を磨いている自動車部であるように感じられるかもしれませんが、実際に自動車部で行われている活動内容は、多くのクルマ好きが理想とするものです。

「昔からクルマが好きで入部を決めた」と口を揃える二世代の主将、藤沢君と三浦君。活動のなかで特に楽しいことは何かという質問に、運転することが楽しいのは当然として、と前置きした上で、「部のみんなでクルマについて、他愛もない話をしている時間が一番好き」と、同じ答えを返してくれました。自動車部では雑談の時間を「車部(しゃぶ)タイム」と呼び、夜を徹して車部タイム活動が行われることも少なくないそう。

同じ趣味を持つ仲間と過ごせる。そして、先輩から運転や整備の技術を教わり、また次の世代へ継承していく。大阪大学自動車部の活動は、冊子「わだち」の発刊や、先輩との深い付き合いを重ねながら​、世代を超えたクルマ好きの輪を広げているように見えます。

強い自動車部を取り戻す!

総合優勝した2013年度七帝戦・後輪駆動クラスの表彰台。1・2位が阪大自動車部のOBだ
総合優勝した2013年度七帝戦・後輪駆動クラスの表彰台。1・2位が阪大自動車部のOBだ
22インチまでのタイヤをホイールに装着できる専用機器もガレージに備わる。充実した道具を使いこなす知識は先輩から後輩へと引き継がれる
22インチまでのタイヤをホイールに装着できる専用機器もガレージに備わる。充実した道具を使いこなす知識は先輩から後輩へと引き継がれる
2014年度末で引退するダートトライアル専用部車の三菱・ミラージュ。現在はニューマシンである三菱・FTOを部車として準備している
2014年度末で引退するダートトライアル専用部車の三菱・ミラージュ。現在はニューマシンである三菱・FTOを部車として準備している
集合写真撮影前のワンカット、部車を全員で押す部員たち。少人数ながらチームワークの良さはバッチリだ
集合写真撮影前のワンカット、部車を全員で押す部員たち。少人数ながらチームワークの良さはバッチリだ

やがて主将に就任する三浦君は、就任後の目標を「七帝戦での優勝!」と力強く話してくれました。大阪大学は2014年度こそ成績が振るわなかったものの、2013年度の七帝戦では総合優勝、その前年は3位、そのまた前年は2位、そしてそれ以前には5連覇を果たしています。「強い阪大を取り戻したいです」と熱く語る三浦君は、自身も愛車のスバル・インプレッサを駆り、個人優勝も狙っています。

優勝を目指すために克服すべき課題として、三浦君は「準備をなるべくスムーズに済ませて、できるだけ運転する時間を増やしたい」と考えているそうです。不調だった2014年度大会を振り返ると、車両準備が思うように進まず、練習できる時間が不足し、結果として全体的なレベルを引き上げることができなかった。藤沢君から三浦君へと引き継がれるバトンは、高い目標を伴って渡されています。

そして三浦君にとっては、もうひとつ考えている長期的な目標もあるようです。それは、自動車部の部員数に関わること。藤沢君の世代にあたる現3回生は9月には引退してしまい、現2回生は三浦君ひとりしかいません。つまり、現役で後輩指導の役割を担えるのは、しばらく三浦君だけということになってしまいます。そこで三浦君は、直近の大会で好成績を勝ち取る目標と並んで、「再来年度以降も続く、阪大自動車部の盛り上がりを目指したい」と語ってくれました。

三浦君が考える目標は、決して簡単ではありません。冊子「わだち」の制作や、OBへの定期的な連絡、十二大学対抗ジムカーナの主催など、自動車部には伝統的に行われてきた様々な業務があります。三浦君はそうした業務を現1回生と協力しながら、またOBからの指導や支援ももらい「強豪!阪大自動車部」の復活を描こうとしています。

関連サイト
【HP】OUAC 大阪大学体育会自動車部
【Facebook】OUAC 大阪大学体育会自動車部
【Blog】OUAC 活動記録

[ガズー編集部]