着実に力を蓄え、総合優勝を目指す!【学生フォーミュラ -立命館大学編-】

全国の大学や専門学校などのフォーミュラチームにおじゃまして、日頃の活動風景や自慢の部員をレポート。今回は、「勝負の年」にステップアップを目指す立命館大学の“Ritsumei Racing(内燃機関研究会)”を訪問してきました

★Ritsumei Racing(内燃機関研究会) プロフィール
●部員数 :18名  ※部員数は2015年2月時点
●活動内容:毎週木曜が全体ミーティング。技術的なことは各班で毎週定期的にミーティングを実施。ミーティングの内容はリーダーミーティングで共有される。チームリーダー、テクニカルリーダー、マネジメント班リーダーの3人を幹部として、担当部門ごとに班を編成。
●活動実績:2014年度 第12回学生フォーミュラ大会 総合42位
同大会 ステップアップ賞1位 など

伝統ある内燃機関研究会としてのフォーミュラ活動

京都市に2ヶ所、滋賀県草津市に1ヶ所のキャンパスを持つ立命館大学。内燃機関研究会の本拠地は“びわこ・くさつキャンパス(滋賀県)”だ
大学内のアクトαが活動拠点のひとつ。ここにはロボット技術研究会、EV-Racing、飛行機研究会などもある
取材に対応してくれた2人。手前がチームリーダーの栄元さん、奥がマネジメント班リーダーの植松さん
アクトαにある部室は整然とした印象。少し離れた場所に工場があり、部品の製作はそこで進めている

西園寺公望が1869年に創設した私塾立命館がルーツとなる、長い歴史を持つ立命館大学。学校法人としての創立は1900年、私立大学として設置されたのは1922年のことでした。現在、大学が掲げているキャッチコピーは「未来を生み出す人になる」です。立命館大学ではそのキャッチコピーに基づき、文系・理系ともに熱心な教育と支援を行っています。そんな立命館大学にあるのが、Ritsumei Racing(内燃機関研究会)”です。

今回取材に応じてくれたのは、チームリーダーの栄元さんと、マネージメント班リーダーの植松さん。植松さんは、「学校からも多くの支援をいただいており、また、大学職員の方にも親身になっていただいていて、恵まれていると思っています」と話します。

Ritsumei Racingには“アクトα”と呼ばれる整備された部室棟(サークルラボ)の一室が割り当てられ、大学にある工場の設備も使える状態。大学の許可が下りれば、大学構内の駐車場などで走行テストもできるそうです。

Ritsumei Racingは、正式名称を“内燃機関研究会”としています。この研究会は、1975年代から活動を始めたという長い歴史があり、2003年11月からは学生フォーミュラに向けた活動を行うようになりました。そのため団体としての名称は以前のまま継続されています。

現在のメンバー構成は2015年2月時点で2回生が5人、1回生が13人。修士生なども参加している他大学のフォーミュラチームと比べれば、平均年齢が若い点が大きな特徴です。なお、毎年9月に大会を終えた時点で3回生は引退するというのが伝統で、栄元さんはこうした事情から「実質的に活動をするのは2年間しかありませんので、チーム全体として技術を磨いて継承していく意味では、課題になってしまっています」と打ち明けてくれました。

クルマは動いてナンボ。動的審査への情熱

撮影用にタイヤを装着してくれた栄元さん。中学時代からカートに触れているだけのことはあり慣れた手つき
2014年度大会のオートクロス競技からのワンカット。栄元さんはこの大会でもドライバーを務めていた
2014年度大会の当日、ピットで行なわれた調整。ドライバーにとって乗りやすくなるよう細かなセッティングを行なう
技術系全般のリーダーを務めるのはテクニカルリーダーの阿部さん(右)。阿部さんはエンジニアとしてドライバーも担当する

Ritsumei Racingには、偶然にもカート経験者がメンバーになる特徴があるそうです。先代までカート経験者が在籍していたのに続き、現2回生ではリーダーの栄元さんが中学時代からカートを趣味としており、現1回生には3人もいるそうです。現在チームでドライバーを務める4人のうち3人がカート経験者だそうで、フォーミュラとカートという違いはあっても、動くクルマに対する興味と熱意はひときわ強いというわけです。

そうしたチームの個性を反映するように、Ritsumei Racingで作るマシンは走る性能を重視する傾向が強いと栄元さんは話します。学生フォーミュラ大会で行われる審査には大別して、動的審査と静的審査がありますが、Ritsumei Racingでは動的審査の中で特に高い配点になっているエンデュランス審査に注目し、そのエンデュランス審査でドライバーを担当するメンバーの好みに合わせてマシンのセッティングを行うなどの作戦で大会に臨んでいます。

こうした動的審査への注力はRitsumei Racingの長所でもありますが、静的審査が弱点にもなっていると栄元さんは考え、次回に向けて「2015年度大会では私がコスト部門のリーダーも兼ねて、さらなる得点を目指します」と話します。

また続けて植松さんは「前回の大会ではトラブルにより急遽私がプレゼン担当になり、悔しい思いをしました。次はしっかり準備をして、プレゼン部門でも満足行く結果を出したいと思います」と熱く話します。

カート経験者の在籍は、動的審査に対してチーム全体の強みとなっています。そこで、これまで弱点だった静的審査を伸びしろとして、さらなる好成績を目指すというのが、Ritsumei Racingの挑戦というわけです。

2014年度大会は総合42位で終わりましたが、前々回の大会から大きくポイントを増やしたチームに与えられる“ジャンプアップ賞”で1位を獲得しています。2年連続の急成長が、今年の大きな目標なのです。

長いスパンでの未来をイメージ

背中を向けているのが先代のリーダー(現OB)。2014年度大会からオフィシャルTシャツのデザインが変更された
2014年度時点でのスポンサー数は30社。栄元さんは「もっと多くの企業さんから支援を頂けるよう頑張りたい」と話す
2015年度マシンのフレームパイプをジグ(フレームパイプを固定する道具)に固定しながら溶接作業の準備をおこなう
エキゾーストパイプ(排気管)のパーツを削り上げる作業。工場にはあらゆる作業工程に対応できるよう、工作機械がそろう

Ritsumei Racingはフォーミュラチームとしてだけではなく、内燃機関研究会としての長い歴史があります。しかし、その歴史を活かすための仕組みができていないと栄元さんは考えています。

「大会の応援に来てくださる方を除いては、ほとんどOBの方々との面識がありません。今年はリーダー業務がありますが、9月に引退して以降はOBの方々と現役とを繋げられるよう役立てないかと」。

自分が知っている範囲で最も古いOBに声をかけ、それを重ねてOBの名簿を作って、年に1度はOB会を開催する。栄元さんは自分が引退した後も継続的にチームが成長できるよう、未来をイメージしています。

またもうひとつチームが抱えている課題として、スポンサーについても栄元さんは考えています。

「今はまだ他大学よりもスポンサーが少ない状態ですから、今年は総合順位で10位以内に入って、企業の方からももっと応援して頂けるように」と。大学が掲げる“未来を生み出す人になる”を実践するような栄元リーダーを筆頭に、Ritsumei Racingは「今年を勝負の年」と捉えているのです。

最後に、活動のなかで大事にしていることを2人に聞いてみました。

「Ritsumei Racingは部とサークルの中間のような立ち位置です。だからそれぞれの良い点を合わせたような、楽しむところはゆるく、キッチリやるべきときは厳しくといった、メリハリを重視したいと思っています」と栄元さん。

一方の植松さんは「ありきたりですが楽しめることが大事」と話し、「もともとクルマにはそれほど興味がなく、栄元君に誘われてチームに入りました。でも活動していく中でクルマが好きになったし、好きだからこそ学んでいられる」と続けます。

活動のなかでは大変なこともあるし、学生自身への負担も大きい。しかし全員が楽しんで取り組み、将来振り返って良い経験だったと感じられるように。Ritsumei Racingは思慮を重ねて、理想の未来を目指しています。​

関連サイト
【HP】   Ritsumei Racing(内燃機関研究会)
【Facebook】Ritsumei Racing​​

[ガズー編集部]