【大学自動車部】ゼロからの再起、挑戦の日々! -成城大学-

全国の大学や専門学校などの自動車部におじゃまして、日頃の活動風景や自慢の部員をレポート。今回は、長らく続いた休部状態から復活を遂げた成城大学を訪問。

成城大学自動車部準備団体プロフィール

●部員数
10名 ※部員数は2015年12月現在
部員紹介ページ
●部車
ホンダ・CR-X(EF8)、スバル・ヴィヴィオ(KK3)
●活動内容
ミーティングをキャンパスで毎週月・木曜日に実施し、毎週土曜日はガレージに集合し車両の整備などの活動を行っている。まだ休部から脱して2年目の若いチームという事もあり、通年で何の大会に出場するかは決まっていない。
●活動実績
平成27年度 全日本エコドライブチャンピオンシップ 出場
平成27年度 第19回関東学生対抗軽自動車6時間耐久レース 加盟校の部 第3位

部員ゼロ!長期休部からの復活

成城大学は日本教育界の重鎮である澤柳政太郎が1917年に創立した成城小学校をルーツとする大学です。

その名が地名に冠された東京都世田谷区の成城。ここにキャンパスがあり、経済学部、文芸学部、法学部、社会イノベーション学部および大学院が集約されている

今回取材に訪れた成城大学自動車部準備団体は、その名の通り正確には「自動車部」ではなく部としての活動を目指す途上にある団体です。キャンパスから離れた埼玉県内のガレージを拠点として活動する彼らに、まずは現在に至るまでの経緯について伺ってみました。

「過去に自動車部が使っていたガレージがあったそうなんですが、現在は利用出来ないんです。今はご厚意でこの場所を間借りさせて頂いて活動をしています」と自動車部復活の発起人である木代俊太郎さん。

大学生になったら自動車部に入部するつもりだったが、いざ入学して調べてみると”部活が無い!”という状況だったとの事

成城大学自動車部は長い歴史を持つ部活で、著名な自動車評論家であり2014年11月に逝去された徳大寺有恒氏もOBの1人。しかし近年ではかなり長い期間部員が1名も在籍していない状態が続いており、木代さんの入学した2014年4月当時には廃部同然でした。ガレージや部車といったリソースも全く無い中ではありましたが、何とか復活させられないかと八方手を尽くしたそうです。

部活動の復活を大学に掛け合ったところ、提示された条件は7名以上の部員登録でした。木代さんは大学内の知り合いを頼り、名前だけでも貸して欲しいと人を集めて「自動車部準備団体」として認めてもらえたとの事です。

ちなみに現在主将を務める横地眞平さんも、そうしてお願いされた内の1人だったそうです。

「今ではようやく自動車部らしく活動出来るようになりましたが、今日に至るまでに色々な事がありました」と感慨深げに話してくれた横地さん(写真右下)

部活に対する部員個々の意識の差などにより、結成初年度はトラブルが絶えず苦労の連続だったそうです。結果として主将が何度も交代し、ようやく体制が落ち着いたのは2015年に入ってから。最初は順風満帆とは行かなかったようです。

2年目で掴んだ手応え

2015年の5月から現在のガレージを間借りできるようになると、初年度の苦境からは考えられない程順調に活動が進むようになったそうです。

結成当初は座学でクルマの基本について学ぶところから始めたそうだが、現在はガレージで実際に車両制作や整備を行っている

そうして活動をするうちに、自然と「何か大会に出よう!」という機運が高まったとの事。これが彼らにとって大きなターニングポイントとなりました。成城大学自動車部としての本格的な第一歩として選ばれたのが、10月に全関東学生自動車連盟により主催された第19回関東学生対抗軽自動車6時間耐久レースでした。

試合車両となるスバル・ヴィヴィオは、千葉県のレーシングガレージ「ZtoAuto」からの協力により手に入れた、新生・成城大学自動車部にとっては記念すべき初の部車

レースへの出場にあたり、レギュレーションに適合させるべく車両を製作する過程では悪戦苦闘の連続。整備経験がほとんど無い中、木代さんの知り合いのメカニックにアドバイスを求めつつ、何とか大会に間に合わせたそうです。

「キルスイッチ(エンジンを外部から止める安全装置)を取り付けるのに何日もかかりました。ロールバーの付け方も全く分からず、時間ばかり掛かってしまって本当に大変だったんです」と横地さんがその時を振り返りました。

風呂にも入らず、体力の限界が来るまで作業をしては倒れるように寝て、起きてはまた作業という日々を過ごして仕上げたという1台。部員全員の思い入れの深さが伺える

そうして迎えた大会当日、監督を始めとする成城大学OBに加えて他大学のOBからもアドバイスをもらいながらチーム一丸となって完走を目指した結果、6時間の過酷なレースを走破。なんと加盟校の部で3位入賞という素晴らしい順位を獲得しました。

「多くの人に支えて頂きながら、部員各々が出来る事を最大限に考え、支えあった結果なので嬉しくて仕方がありませんでした」と木代さんが顔をほころばせると、一緒にいた他の部員の皆さんも一様に笑顔を浮かべていました。

AT限定免許ながら大会当日はMTのヴィヴィオを駆って熱い走りを見せたという島田晋之介さんは、自動車部に入って良かったと思う事に、真っ先にこの軽自動車6時間耐久レースを挙げていました。
(※関東学生対抗軽自動車6時間耐久レースはAT免許でも出場が可能)

人数・資金・経験の面では他校には及ばない中、トラブルに見舞われつつも無理をせず次のドライバーに繋げる走りで見事完走。入賞を果たした

大会に出場してみて手応えを得たと同時に、強豪との差も痛感したとの事で、これを糧として今後ますますの活躍を期待したいところです。

さらなる飛躍に向けて

大会への本格参戦でいきなり入賞という、最高のスタートダッシュを決めた成城大学自動車部。最近部車として加わったホンダ・CR-Xは、来シーズンのジムカーナ競技参加の為の足がかりだそうです。

取材した時点では車両を引き取ったばかりで手付かずだったが、CR-Xで実績のある他大学に整備のアドバイスを聞くなど下準備は着々と進行しているようだった

10名在籍している部員は1年生が4人、2年生が4人、3年生が2人という内訳ですが、先輩・後輩の境界線は特に感じられず、部員同士が親しげに楽しんで会話している姿が非常に印象的でした。

発起人の木代さんと主将の横地さん2人が土台になるという、まさに部活の組織構造を体現した(?)人間ピラミッドの図

取材した時点では個人でクルマを所有しているのは木代さんだけで、愛車のランサーと一緒に部員紹介写真の撮影に望む場面では「やっぱり自分のクルマ欲しいなぁ~」という声が聞こえて来ました。さらにクルマを購入して納車待ちの部員もいたりと、部内の「自動車部熱」はどんどん高まっている様子です。

そんな中、今の悩みは2016年シーズンの活動場所。現在の活動拠点となっているガレージは来年3月には使えなくなってしまうそうです。再来年(2017年)には大学から正式なガレージを用意してもらえる予定だという事なので、2016年をどう乗り越えるかが大きな問題となっています。このまま勢いに乗れるか否か。またしても困難な局面を迎えつつある成城大学自動車部ですが、それでも部員の皆さんは希望に満ちた表情で翌年の抱負を語っていました。

[ガズー編集部]

MORIZO on the Road