【大学自動車部】部員が競技に参加するのがモットー–金沢大学-

全国の大学や専門学校などの自動車部におじゃまして、日頃の活動風景や自慢の部員をレポート。今回は金沢大学を訪問。

金沢大学自動車部プロフィール

部員数
13名 ※部員数は2016年12月現在
部員紹介ページ

部車
日産・マーチ
スズキ・アルト

活動内容
特に活動日は定めていませんが、毎週土曜日の夜9時から今後の活動予定などについて話し合う部会をガレージ内で実施。北陸地区の国立大学と戦う体育大会の他、北陸地方を含む関東甲信越の大学と戦うジムカーナにも参加しています。

活動実績
北陸地区国立大学体育大会 総合優勝
関東甲信越学生自動車連盟競技会 優勝(アンダー1600cccクラス)

金沢大学は北陸新幹線開業で沸く、金沢にある国立大学。1862年(文久2年)に加賀藩によって設置された種痘所をルーツに持ち、1949年(昭和24年)に総合大学へと発展し2012年(平成24年)には創基150年を迎えた。現在は金沢市内を見下ろす山の上にある角間キャンパスを中心に、多くの学生が学んでいます。

毎週土曜日の夜に行われる部会か活動のベース

金沢大学自動車部は広大な角間キャンパス(なんと東京ドーム約57個分)内にあるガレージを本拠に活動中。ガレージはテニスコートや陸上競技場などの運動施設が集まったエリアの一画にあります。

ガレージを正面から見たところ。右奥に見えるのがミーティングルーム
部員による整備の様子。部員の所属学部は工学部が半数を占めますが、学年毎の割合は年によってバラバラだそう

応対していただいたのは部長(取材当時)の3年生・斉藤立矢さん。なぜ取材当時かというと、自動車部では年末に新しい部長が発表されるのが慣例で、取材日の週末(昨年の12月中旬)に新部長の発表を控えていたからです。新主将については後ほど紹介しますが、ここでは部を代表して斉藤さんに自動車部のことを伺ってみました。

「活動日は決めていませんが、毎週土曜日の夜9時に集合して今後のことを話し合う『部会』を開催しています。時間は1時間くらい。みんなアルバイトがあるので昼間はできません。自動車部にいるからには何かしら競技に参加するのがモットーで、クルマを持っている人がタイヤ置きや部品置きのためにガレージを使うことのないよう、厳しくやっています」

率先して部車の雪落としを行う斉藤さん。自動車部の日常的な光景です

部会で決めた予定に基づき、部車(マーチ)もしくは個人車をガレージで整備し、競技に参加。ダート耐久やフィギュア、JAF戦のジムカーナなどの他、自動車部主催のジムカーナ練習会なども開催しています。

部車・アルトでレースに参加した時の写真。場所は福井にあるタカスサーキット
自動車部でジムカーナ練習会を主催した時の写真。ピンクのシャツは自動車部で作りました

北陸地区国立大学体育大会(フィギュア)は部をあげての大一番

競技の中で最も力を入れていると言っても過言ではないのが北陸の国立大学3校(福井・金沢・富山)による「北陸地区国立大学体育大会」。他の運動部も同時期(夏季)に同名の大会を行っている恒例行事で、自動車部の種目はフィギュア。福井大学に自動車部がないため、事実上、富山大学自動車部との対抗戦となっています。

教習所の敷地を借り、缶などを使い特設コースを設営。事前に借りたレンタカー(大型車と小型車各1台)を両学の選手が運転し、特設コースをいかに速く走り抜けるか競います。富山大学に対して特別対抗心があるわけではありませんが、自動車部では伝統的にフィギュアを重視。大会前は自動車部の敷地内に線を引き、毎晩遅くまで練習しています。そのかいあってか、3年連続で金沢大学が優勝しています。

「試合に出られるのは13人中4人。なるべく下の学年から出られるようにしているので、3年までにみんな1回は出ていますが、メンバー争いは白熱します。みんな表には出さないけどあいつには負けないと内心思っていると思います」と斉藤さん。

2015年のフィギュアの様子。車幅+10mmぐらいの極めて狭い道を切り返しながらクリアしていきます

また、関東甲信越の大学が集まって競う「関東甲信越学生自動車連盟競技会」(ジムカーナ)にも参加。テクニカルグラウンドR-SPEC柿崎で行われた2016年の競技会では大学院1年の早坂怜(ホンダ・CR-X)さんがクラス優勝という成績を残しています。

歴史を感じさせるガレージ内部。謎の部員日誌も

ガレージの中はクルマ2台が入る広々とした作業スペースと、部員たちのミーティングルームがあります。雪国で活動する自動車部らしく、機能的なタイヤラックが目を引きますが、さらに目を引くのがミーティングルームの壁に貼られたOBたちの写真。歴史を重んじる自動車部の姿勢を感じます。

タイヤラックにはすり減ったモータースポーツ用タイヤが沢山
なんとも居心地の良いミーティングルーム。左上には歴代OBたちの写真が見えます

ミーティングルームに腰を下ろし、お話しを伺っていると、目の前に「茶夢(ちゃむ)」と書かれた分厚いノートが。なんとこのノートは自動車部の日誌で、大量のバックナンバーが残っています。中には部員が生まれる前の日付が記されたノートも。

「名前の由来も、いつ始まったのかも分からないのです」と斉藤さん。

内容は自動車部の活動、個々のカーライフに関することが主ですが、中にはここに書けないような“青春の叫び”もいっぱい。部員が刻んできた1日1日の重みを感じることができます。みな、口には出さなかったものの、先輩たちが残してきた伝統を大切に受け継いでいくのでしょう。

自動車部の歴史が詰まっていると言っても過言ではない茶夢。ミーティングルームでお茶を飲みながら、語った夢が記されているのでしょうか?

年の瀬に行われた幹部交代の結果は?

さて、取材後の週末に行われた自動車部の忘年会。斉藤さんを含む3年生は、2年生の関根研太さんを新部長に指名。2017年1月から関根さんが自動車部のリーダーとして舵を取ることになりました。

固い握手を交わす斉藤さんと新部長・関根(右)さん。自動車部の未来を託した瞬間です

斉藤さんは「私が部長になった時、汚れていたガレージの中をとにかくきれいにしようと頑張りました。常にきれいにしていないと何かしら事故につながると思ったからです。次の部長についてですか? 好きなようにやってもらえればと思いますね」とコメント。

関根新部長の下、新たなスタートをきった金沢大学自動車部。忙しい学業の合間を縫っての活動には困難も待ち受けますが、チームワークはますます強固に。今年もさまざまなモータースポーツの現場で活躍する姿が見られそうですね。

(フリーライター:ゴリ奥野)

[ガズー編集部]