【三重大学自動車部】ゆとりあるスペースと恵まれた練習環境で着実に実績を重ねる

全国の大学や専門学校などの自動車部にお邪魔して、日頃の活動風景や自慢の部員をレポート。今回は三重県津市にある、三重大学自動車部を訪問しました。

三重大学自動車部プロフィール

部員数
17名 ※部員数は2016年12月現在
部員紹介ページ

活動内容
活動日は毎週火曜日。大学院生を含めて全員部室に集合し、部車のマフラーの作成や消耗品のチェック、交換など、点検整備全般を行う。その他、ミーティングでは、大会に向けての話し合いなどを行う。

活動実績
2016年
全中部学生ダートトライアル大会 2位
全中部学生ジムカーナ大会 3位
全日本エコドライブチャンピオンシップ 3位
全中部ジムカーナ新人戦 6位

部車
ジムカーナ……ホンダ・シビック(EG6)
ダートトライアル……トヨタ・スターレット(EP91)

走ることに恵まれた環境

1949年に発足した三重大学。「空のみどり、樹のみどり、波のみどり」すなわち、広い空と、鈴鹿山脈の緑、さらに伊勢湾の波の緑から「三翠キャンパス」と言われるほど、豊かな自然に囲まれた広大な敷地が広がります。地域に根ざし、世界に誇れる独自性豊かな教育と研究成果を生み出すことを目標に掲げ、地域社会との緊密な連携を取っていることが特徴です。中でも隣接する鈴鹿市には、世界的にも名の知れた鈴鹿サーキットがあることから、産学連携による研究交流なども行われています。

1960年創部の自動車部は今年で57年目を迎えます。これまで多くの大会での実績を残し、OBやOGとの連携が強いのも大きな特徴です。広い自動車部の敷地内には、部車や個人のクルマがずらりと並ぶスペースをはじめ、大きなガレージと、その奥には別棟の部室まで揃っています。「この部室は建築科専攻の自動車部の先輩の手作りと聞いています」とは、前部長の鈴木さん。通常はガレージの一角にミーティングスペースがありますが、ここは完全に別棟。扉を開けると畳の小上がりがあり、そこには何とこたつまでスタンバイされていました。「ここに入ってしまうと出られなくなるんですよ(笑)」と2016年9月から新たに部長となった照喜名さん。その居心地のよさに、自分の部屋のように寛ぐ部員も多いとか。

入るとついつい出られなくなるこたつで語ってくれた現部長の照喜名祐希さん(左)と、前部長の鈴木智弘さん
愛車がずらりと並ぶ部室前。部員たちが自然と集まり、それぞれのクルマを見たり、触ったりと、楽しそうな声があちこちから響いてくる
OB手作りの部室。設計も施工もすべて自分たちで行ったもの。冬場には2台のこたつも設置され、みんなでゴロゴロ。ふらりとOBが訪れることもよくあるそう

自動車部としての活動は火曜日のみですが、構内にクルマで入れるのは、火曜日以外にも、土・日・祝日と、平日の7時~8時、17時~22時は許可されており、部員の皆さんは、比較的自由に自分のクルマを持ってきて整備しています。ほぼすべての整備ができるように工具や設備も揃っていることが自慢とのことですが、その他には?「やはり4台納まるガレージの広さと、全員が自分のクルマを持ってきても余裕で駐車できるだけの敷地の広さでしょうかね」と照喜名さん。

4台納まる専用ガレージ。週末は自由にクルマを持ち込めるため、愛車を持ち込んで1日中整備をする部員もいる。行けば誰かがいて、クルマの話ができるのが楽しいと、自然に集まってくる

「恵まれた環境といえば、大学から自転車で行ける距離にミニサーキットが二ヶ所あるのも、三重県ならではかもしれません」と前部長の鈴木さん。鈴鹿サーキットが近いのはもちろんですが、普段練習にも利用できる「モーターランド鈴鹿」と「鈴鹿ツインサーキット」があり、毎日のように授業の合間に走りに行くそうです。午前中の授業が終わったら、通学で使う原付で急いで下宿に帰り、そこからは自分のクルマでミニサーキットへ。1時間ほど走って再び大学に戻って授業を受ける部員が多いとか。2016年にはさらにもう一ヶ所ダート用のコースも近くに完成し、ますます練習環境がよくなり、部員の皆さんテンションも上がっているようです。

また、部員全員が自分のクルマを持っているのも、駐車場が安いという地の利のよさと、卒業生からクルマを安く譲ってもらえるという、自動車部の伝統によるものだとか。「1年生で入部したら、まず免許を取って、夏休み頃に免許が取れると、先輩からクルマを譲ってもらえるしきたりになっています。最近では、免許を取る前からクルマが選べるほどで、ありがたい話ですよね」と照喜名さん。「クルマはまず乗って、壊して、自分で直してみないと知識も技術も身につきません。壊れたら先輩に聞いて教えてもらいながらいじってみることが大事ですから」と。ほとんどの部員は先輩からヒトケタ万円で譲ってもらい、練習でぶつかって壊し、直してまた壊し、最後は廃車になるまで乗り潰すそうです。照喜名さんも、鈴木さんも、1台目を乗り潰し、現在2台目に乗っています。

先輩と一緒に自分のクルマを整備する。中でも大学院生の先輩は技術も知識も豊富な人が多く、頼りがいがあるとか。どんなものでも直してしまう先輩を後輩たちは一目置いている

輝かしい記録とチームを支えるスーパー助っ人

長い部活の歴史の中で、数々の大会で入賞してきましたが、最近、眼をみはる結果を出しているのが全日本エコドライブチャンピオンシップです。これは鈴鹿サーキットの本コースを走る大会で、燃費とタイムのバランスにより勝敗が決まるもので、複雑で戦略性のある競技として知られています。一昨年は全国55校中、堂々の2位。昨年は3位でした。この大会には1年生しか出られないのですが、新入生が入賞し、高価な競技用タイヤを賞品にもらったことから、上級生らも気合いが入り、今年は3年連続の入賞を狙って1年生を指導していくそうです。

2016年の全日本エコドライブチャンピオンシップで3位となった時の記念写真。どこにいてもすぐにわかるというピンクのウェアがひときわ目立っていた

その他、2016年はジムカーナもダートトライアルも公式戦で入賞するなど、安定した強さを誇っています。そんな数々の大会で、チームの要となっているのが、「スーパー助っ人」ジョンさん。本国フランスで、風力発電の設計を学び、同分野の研究のために三重大学に留学。クルマに関しても造詣が深く、知識も技術も桁違いに素晴らしいと部員全員が口をそろえます。クルマそのものをCADで設計し、自分でパーツも作ってしまうとか。またジョンさんが作ったオリジナルの工具もあり、部員も便利に使っているそうです。「フランスでは研究に忙しくて、大好きなクルマを触ることができませんでした。日本に来て自分の時間が持てるようになって、こうしてクルマを触れる毎日がとても楽しいです。また自動車部の人がみんな優しく、自動車部のおかげで日本語を覚えることができました」とジョンさん。新入生もジョンさんから多くのことを学んでいます。

三重大学自動車部の中で一番クルマに詳しい留学生ジョンさん。日本語も堪能で部員の頼れる存在だ
2016年5月に行われた全中部学生ジムカーナ大会で3位に入賞。みんなで整備した部車が活躍。チームカラーのピンクのネームが風を切る

新たに始動した「チーム照喜名」

歴史を受け継ぎ、新たに始動した「チーム照喜名」。「全体的におとなしい印象です。もう少し積極的にクルマをいじって、自分で課題を見つけて、その課題解決に邁進してほしいですね。昔から技術力のある自動車部と言われていましたので、その伝統を作ってきた先輩たちに恥じないよう、頑張ってほしいですね」と前部長の鈴木さんからのエールを受け、「個性的なメンバーが集まっている部です。いい意味で個性を伸ばし、お互いの短所を補い合いながらも、やはりみんながクルマに乗ることもいじることも楽しめる環境を作りたいと思います。やるべきことはきちんとやって、あとは楽しくやっていきたいと思っています」と照喜名さん。さらなる飛躍を目指して一致団結していきたいと笑顔で語ってくれました。

上下関係の規律はありながらも、和気藹々とした雰囲気の「チーム照喜名」。クルマの話をすると盛り上がりすぎてしまい、講義にあわてていくこともしばしば

(ライター:真下智子)

[ガズー編集部]