初めての愛車としてMR-S(ZZW30)と10年間ともに過ごしたオーナーが、サーキットを走る理由
「もともと見た目がカッコよくて憧れていたインプレッサに乗りたいと思っていたんですけど、大学を卒業したばかりでお金がなかったので、まずはスポーツカーのなかでも壊れにくいクルマを選ぼうと考えました。
そして“壊れにくい”というイメージだったトヨタ車のなかで、見た目もスポーツカーという感じで、エンジンが後ろにあることや周りにあまり乗っている人がいなかったこと、それに維持もしやすそうだなと思って、このクルマに決めました」
こうして茨城県在住の太田光哉さん(32才)がはじめての愛車としてMR-Sを買ったのは、大学卒業してすぐの22才の頃。免許取得後初の愛車だったこともあり、当時は初心者マークをつけて乗っていたそうだ。
トヨタ・MR-2の後継車として1999年に登場した2シーターオープンタイプのスポーツカー、MR-S(ZZW30)。太田さんが買ったのは2006年式のSエディションで、目論み通り(!?)購入から10年がたった現在まで、一度事故をしたものの故障とはほぼ無縁だったという。
セカンドカーを持つこともなくこの1台を相棒として乗り続けるうちに、同じMR-S仲間との交流を深め、一緒にサーキットやツーリングに行くなど、愛車を通じて自身のコミュニティを広げてきたそうだ。
そんな太田さんにこのクルマのお気に入り部分を聞いたところ、その返答は彼の仲間との関係性や優しさがよく伝わるものだった。
「一番気に入っているのはウイングです。これはおなじボディカラーのMR-S乗りで仲の良かった友人から譲り受けたものです。僕はもともと違うウイングをつけていたのですが、彼がまたいつかMR-Sを買ったらこのウイングを返すつもりで装着し続けています。
ちなみに純正のサイドステップも、僕が事故した時に友達がストックしていたのを譲ってもらったものです」
そんなウイングも含めて外装については「『頭文字D』に登場したMR-SがC-ONEのデモカーをモデルにしていたということで、それに憧れてパーツをコツコツ集めました。周りの友達もC-ONEパーツをつけている人が多いですよ」とのこと。
ちなみに普段は純正ホイールに純正タイヤを愛用しているが、この日はサーキット走行前日ということでハイグリップタイヤを履かせたTRD Sports T3ホイールを装着していた。
「ハイグリップはタイヤの減りが早いので、それを温存させるためにも普段は純正タイヤを履いています。あと普段はオープンにして走っていることのほうが多いのですが、ガチガチのロールケージを入れていないぶん、サーキットを走る時はハードトップを付けるようにしています」と、サーキット仕様と普段乗り仕様をきっちり使い分けているようだ。
一方、車内のカラーリングは太田さんが好きなボディカラーと同様のブルー系で統一されている。
「レカロシートはブルーとブラックを選びました。ステアリングやフロアマットもメーカーは違うけれど青系で統一しています。実はレカロシートはシートヒーターが入っている限定モデルで、シートヒーターをONして、オープンカーにして寒い日に走ると、まるで温泉に入っているみたいなんですよ(笑)」
外からだと寒そうに見える真冬のオープンカーも、シートヒーターの効能で快適なツーリングが楽しめるというわけだ。
そしてリアにあるエンジンルームにはツーリングで仲間たちと行った場所のステッカーが記念に貼られている。
「僕がツーリングを主催するときは、ツーリングルートを決めて漫画に出てくる場所と美味しいご飯を食べて聖地巡礼して、漫画に出てくるスポットで写真を撮って帰るというようなプランを立てています。
ただ、このクルマはミッドシップの特性上か、調子に乗って走るとスピンやクラッシュをする子が結構いまして…。もう中古車だって希少だし、そうやって廃車になってしまうのは悲しいので、みんなが運転上手になればと思って、月に2回くらいドライビングパレット那須を借り切ってドラテクを向上させるための走行会を主催したり、僕自身もつくばサーキット1000で年3回くらい走ったりしているわけです」
つまり太田さんがサーキットやジムカーナ場を走る目的は、仲間と事故なく楽しくツーリングができるようにするためであり、残存する大好きなモデルが少しでも多く世に残ってほしいという理由からなのだ。
「最近はSNSを通じてMR-Sだけでなくて、初代や2代目のMR2のオーナーさんとも交流が広がりました。こんな状況なので他のクルマへの乗り換えは考えられないですね!」
22才で初めてMR-Sを愛車にしてからこの1台に乗り続けて早10年。今ではその愛情が自身の愛車へだけでなく、同じようにMR-Sというクルマが大好きな仲間やMR-Sというモデル全体へ向いている太田さん。
大好きなモデルを愛するがゆえの地道な活動は、少しずつ、着実に確かな形として成果が現れていくに違いない。
取材協力:フェスティバルウォーク蘇我
(⽂: 西本尚恵/ 撮影: 古宮こうき)
[GAZOO編集部]
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