ファミリーカーとして活躍してきたパンダトレノ。その務めを終えた『余暇』の過ごし方とは?
1985年式トヨタ・スプリンタートレノGT-V(AE86)に乗る圭さんは、東京都江戸川区の在住。
生まれてからずっと江戸川区で育ってきた経緯もあり、25才になるまでは通勤通学から普段の移動まで公共交通機関を利用する生活で、自家用車を持つタイミングがなかったという。
「クルマが必要になったのは、結婚して一番下になる3人目の子供が生まれたのが理由です。2人目までは妻と2人で電車移動もできましたが、3人になると難しいということで、家族で移動するためのクルマを買いました」
そこで購入した初めての愛車は、AE92型のトヨタ・レビン。
「自分のクルマこそ持ってませんでしたが、親父と叔父がバイクやクルマ好きで実家にもマツダ・サバンナRX-3が置いてある風景なんかも見ていて、自然とスポーツカー好きになっていましたね。
だけど当時の自分にとって影響が一番大きかったのは、近所に住んでいた知り合いのお兄さんが新車で購入したAE86のパンダトレノでした。とにかくカッコよくて、免許を取ってからも自分もハチロクに乗りたいと思ってずっと過ごしてきました」
そんな経緯もあってファミリーカーを購入する際にも第一候補に上がったのはAE86のパンダトレノだったという。
「だけど、当時は頭文字Dの3rdシーズンの放送も始まっていたころでハチロクの価格も上がっていました。クルマを駐める車庫も必要になる維持費も考えると予算オーバーで、ちょうど中古で車検付きが安く買えたAE92を選んだんです」
ところが、AE92を買ってから現在のハチロクが愛車になるまでは、わずか半年ほどの期間しかなかったという。
「ファミリーカーとして乗るほかにも、夜にAE92でぷらっとドライブに出かけたりもしていたんですが、やっぱりハチロクに憧れがあったんですよね。
毎日のように中古車雑誌を羨ましそうに見ていたら妻から『そんなにハチロクが欲しいなら買っちゃえば?』と言われたのをキッカケに、あらためてAE86のトレノを探すことになりました」
ちなみに、圭さんの背中を押してくれたという奥さまの『あけみこ』さんは現役のAW11乗りで、この出張撮影会にも仲良く2台で参加されていた。
そこからハチロクの中古車情報をひたすらチェックし、候補にあがった台数は100台にのぼるという。
「3ドアハッチのトレノはほとんど車体が出てこなくて、見つかるのは2ドアクーペで、しかもサビの進行が進んでいるものばかりでした。そんななかから4台ほど試乗したなかで、最終的に選んだのがこのトレノです」
現在の姿を見ると、さぞかしキレイに保管されていた上玉の車体を手に入れたのだろうと想像するが、手に入れた当時のボディは現在とはかけ離れたひどい状態だったという。
「36万円で手に入れた車体は、全体が苔むしていて緑色になっていました。だから、手に入れて半年はずっと洗車を繰り返して白いボディに戻そうと頑張っていましたね(笑)」
とはいえ洗車だけでここまでの美しい状態まで復活できるはずもなく、手に入れてから1年ほどで近所のガソリンスタンドで知り合ったハチロク乗りを通じて鈑金工場にハチロクを入庫し、経年劣化でボディに穴が空いていた部分の補修なども行いつつ、オールペンを施したという。
現在48才の圭さんにとって、20年以上ともに過ごしてきたハチロクはまるで4人目の子供のように家族同然の存在になったわけだが、それだけ愛着を持って長く乗り続けていることにはとある理由が存在するという。
「ちょうどこのハチロクを買うときに、仲の良かった友人が白血病で亡くなったんです。そいつは昔からサーキットもよく走っていたようなヤツで、一時退院していたタイミングでこのクルマの下見も一緒にした思い出もあります。
だから、このハチロクは半分形見のような気がして『ヤツの代わりに自分がこのクルマでサーキットを走ろう』と、少しですが筑波サーキットや日光サーキットでスポーツ走行もするようになりました」
そういった経緯もあり、このハチロクはエンジンに関しても2度の仕様変更が行われてきたという。
1度目は購入して1年後のタイミングで、4A-Gの16バルブのまま、フリクションの少ない輸出用ピストンを組みメタルガスケットへの交換によって高圧縮比化。街乗りでも苦労しないように配慮してIN/EXとも256°のハイカムも組み込んだ。
そして現在の仕様にしたのは3年前のこと。AE111型レビンに積まれている20バルブの4A-Gエンジンへ載せ換えを模索し、ショップに見積もりを取りに行ったらその場でおよそ15年付き添ったエンジンがブロー。そのまま入庫し載せ換えとなったという。
AW11に乗る奥さまの愛車遍歴がターボ車ばかりだったのとは対照的に、圭さんのハチロクはメカチューンにこだわった自然吸気仕様を追求。載せ換え後にECUセッティングを見直したことで、1.6Lながら実測167psを絞り出しつつ、どの回転数からもアクセルを踏めばリニアに立ち上がるようなレスポンスの良さが特徴だそうだ。
また、ファミリーカーとしてもこの長らく活躍してきたこのハチロクには、チャイルドシートを装着して5人乗りでドライブに出かけた思い出も残っているとのことだった。
ボディに貼り付けた『昭和の杜博物館(事務局)』のマグネットプレートは、千葉県松戸市にある変わった乗り物を中心としたコレクションを収集展示している博物館。
圭さんはここで運営ボランティアスタッフとして関わっているというが、そういった関係になるまでのエピソードもこのハチロクと深く関わりがあるので、ご紹介させていただこう。
もともと、夫妻で様々なところにある博物館めぐりを楽しむのが趣味のひとつだったという圭さん。関東近郊の著名な博物館を巡ったあと、さらにニッチな博物館を探して『変な博物館』という検索ワードでヒットしたのが、こちらの『昭和の杜博物館』だったそう。
2人で博物館を訪れて観覧していたところ、アルバイトスタッフが急病により倒れるハプニングに遭遇し、居合わせた2人で救急車が到着するまでの救命措置を行ったことから、後日そのお礼も兼ねて博物館の先代館長と話す機会があり、意気投合したのが事の始まり。
そして、松戸市で毎年開かれる松戸まつり内にて開催される『まつどクラシックカーフェスティバル』の運営にその館長が携わっていたことから「圭さんのハチロクもぜひ展示して欲しい」という話になった。
そういった機会を重ねるうちに現在は博物館のほうでもボランティアスタッフとして関わるようになったというわけだった。
「ずっとコロナの影響で閉館を続けていたんですが、今年5月のGW明けからついに営業が再開したんです。いまでは毎週博物館のほうにボランティアへ行くようになっていて、ある種のライフワークみたいなもんですね(笑)」と圭さん。
「日本ではここにしかないようなマニアックな乗り物もあるので、興味のある方は是非お越しいただきたいです」とのこと。
それに加えて、コロナの影響で中止となっていたクラシックカーフェスティバルも、今年はようやく開催ができそうな状況だという。
ファミリーカーとしての役割が一段落した圭さんのハチロクは、こうしてオーナーとともにボランティアやイベント参加など『余暇』といえそうな幸せな日々を送っている。
取材協力:フェスティバルウォーク蘇我
(文:長谷川実路/ 撮影:堤 晋一)
[GAZOO編集部]
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