『クルマは最高のトモダチ』実体験-ドラテク磨きに大切なコト…山田弘樹連載コラム
学生時代に紆余曲折を経て手に入れた、ユーノス・ロードスター Sスペシャル!
これで運転うまくなるぞ! とはりきったはずなのに、そのドライビングテクニックはまったく磨かれなかった……。
いったいどうしてッ!? というのが今回のお話です。
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- 残念ながらSスペの写真は残っていません。ドナドナされてしまった当時の記憶がよみがえらないから、いっか。写真は赤パンでピストン西沢さんの走行会に行ったとき。お隣はcarview!宇田川編集長の愛車で、NCを購入した理由はまさにコスパ! 自動車メディア業界でロードスター率は、かなり高いんですよ。
自動車メディアの記事で「小さなスポーツカーはドラテク磨きに最適!」とはよく言われること。
駆動方式がFR(フロントエンジン・リアドライブ)だと、なおよし! というのは定説ですよね。
必ずFRじゃなきゃだめなの? FFだとうまくならないの? という話はひとまず置いといて、そんな条件を見事に備えたロードスターを手に入れたボクが、なぜうまくなれなかったのか?
ヘタッピだったから? まぁそれは……あるでしょう(汗)。
でも一番の理由は、ロードスターが高級車だったからなのです。
お宝であるのはもちろん、学生でローンを支払っていたので、まったく余裕がありませんでした。
ご存じのとおりロードスターは、とても素性のよいスポーツカー。特にボクが選んだSスペは、ビルシュタインダンパーも付いていたし、当時としては珍しかったストラットタワーバーも標準装備だった。キビキビ走れる、とってもよいクルマでした。
でもスポーツドライビングをする上では、まだちょっとばかり仕上げなくてはいけない部分がありました。
バケットシート、4点式シートベルト、そしてリミテッド・スリップ・ディファレンシャル。当時風にいうと“ノンスリ”!(笑)。
それが何ひとつ買えないくらい若い頃のボクは、ギリギリでロードスターを手に入れたんです。
今考えると、リミテッド・スリップ・デフだけでも手に入れるべきだった。M2 1001に焦がれて、先にマツダスピードの4点ロールケージを買っちゃったんだよなぁ。そこで力尽きました。
そんな状況でしたから、サーキットに行くなんて夢のまた夢。
たまたまタイヤを新調せざるを得なくなって(前回参照)、ダンロップ主催の走行会へ行きましたが、友達に誘われてもジムカーナコースを走る5,000円が払えませんでした。ガソリン代や交通費、食費も掛かりますからね。
当時はまだ夜中の峠を走る、なんてことも行われていた時代でしたが、お宝ロードスターは絶対に壊したくないから、野蛮なところには行かない(笑)。
そうなんです。いくらいい道具を持っていても、練習しなければうまくならない。それは他のスポーツと同じなのです。
それでも若さとは罪なもので、クルマを手に入れたらなぜか「自分が一番速い!」と思ってる(笑)。初めて走ったサーキットであまりに自分が遅くて、ものすごくショックを受けたことは今でも覚えています。
そういう意味でいうとボクは、最初から走る装備がある程度付いているチューコ車を選ぶべきだったんです。
でもそんなこと、デフと同じで、最初はわからないですよね。クルマが大好きなんだから、自分が買える範囲でカッコいいクルマに乗りたくなるのは当たり前。
ちなみにそんな溺愛ロードスターは、満足にチューニングもできないまま手放すことになってしまいました。当時はバブルが完全にはじけ、自分で家賃や学費を払わなくてはならなくなってしまったのです。学費が払えなくて辞めていく友達もいたなぁ……。厳しい時代でした。
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- 大井師範(大井貴之さん)も、ロードスターフリーク。なんとお友達から譲り受けたNB(シルバー)を合わせて、現在2台体勢と大変なことになってます(笑)。その模様はYoutube「クルマで遊ぼう! 大井貴之のSports Driving Labo.」をチェック!
再びクルマ浪人となってしまったヤマダ青年。しかしクルマへの情熱は冷めやらず、今度は自動車雑誌の出版社でアルバイトをするようになります。
クルマに触れてお金がもらえるなんて、夢のようだ!
そう思いながら時給720円のバイト代を必死に貯めて(笑)、やっとの思いで手に入れたのはAE86(トレノ GT)でした。そう、ここからボクのハチロク人生が始まったのであります。
そのトレノは2オーナー車で、今で言うと極上車でした。
価格は確か40万円くらいして、完全に予算オーバー。でも極上2オーナー車がどんなものか見てみたくて、冷やかしに行ったつもりがオーナーさんに口説き落とされた。
「キミのようなクルマ好きに乗って欲しいんだぁ!」と熱く押し切られてしまったんですよね(汗)。それは以前コラムでも少しお話ししたと思います。
でもこのとき、ハチロクを選んで本当に良かった!
大げさにいうと、ハチロクがボクの人生を変えてくれました。
ダンパーはすでに抜けていたけど、TRDのサスが入ったハンドリングは、とってもクイックで面白かった。LSDは4ピニオン!タイヤは13インチだったけど、それがかえって勉強になりました。
国内ラリーで活躍した「GT」グレードはリアブレーキがドラム式だから、サイドを引くと簡単にリアが出て、楽しかったなぁ。
不思議なもので走れるクルマに乗ると、そういう友達が増えます(笑)。
「ハチロク乗ってんの?」なんて話になると、格安の走行会を教えてくれたり、ジムカーナに誘ってくれるようになる。ロードスターに乗っているときも友達はできたのですが、みんなもうちょっと上品だった(笑)。
もうその頃はローンもなかったので、気分もスッキリ!走りに誘われたら積極的に行きました。下道使って、みんなでツーリングしながら延々と。
仲良くなるとお古の車高調ゆずってくれたり(それもダンパー抜けてました 笑)、14インチのワタナベホイールをもらったり。一緒に付け替えてもらって、構造をおぼえたりしましたよ。当時はR32 GT-RやS13シルビア、180SXが全盛期で、ハチロク乗ってる子たちは庶民派。その連帯感もあったのかなぁ? ちょっとガサツで荒っぽいけど、みんな優しかったですねぇ。
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- これは一昨年ロードスターのメディア4耐にREV SPEEDチームで参加したとき。NDはカッコいいし走りもいいし、まさに現代版NAと言える存在。でも、もし自分がいま買うとしたら……NC欲しいけど、NBかなぁ
何よりいいたいのは、うまくなりたいならたくさん走れるようにすることが重要だった!ということです。とても当たり前のことなんですけれど、本当に大切。
いまどきそうまでしてクルマに乗りたい!という若者がどれほどいるのかはわからないですが(オジさんの方が多いんじゃないかしら?)、そのためにはイニシャルコストが低くて、乗り続けるのが楽しいクルマを手に入れることが第一歩だというのがボクの実体験です。
ハチロクはクラシック・プレミアが付いて高いクルマになってしまったけれど、ロードスターは逆にまだ探せば安い個体が見つかります。その逆転現象は何とも皮肉ですが、これが高騰しないうちに手に入れておくのは絶対アリ!
もしボクが買うならNCの安さは魅力だなぁ。いや、やっぱり軽さとのバランスでNB後期かなぁ……。
そのときはぜひ、トルセンLSD装備モデルを選んでくださいね(笑)。
(写真/テキスト:山田弘樹)
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自動車雑誌の編集に携わり、2007年よりフリーランスに転身。LOTUS CUPや、スーパー耐久にもスポット参戦するなど、走れるモータージャーナリスト。自称「プロのクルマ好き」として、普段の原稿で書けない本音を綴るコラム。
[ガズー編集部]
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