『クルマは最高のトモダチ』GRヤリスで元F1ドライバーに挑戦!? …山田弘樹連載コラム
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イベントでは6台のGRヤリスが用意され、先導走行からのフリー走行を体験。GRヤリスをもっと良く理解するためのプレゼンテーションも行われ、一日たっぷりGRヤリスの魅力を味わえるイベントでした。コロナ禍の動向はまだまだ余談を許さないけれど、こうした走行会が、もっと沢山開催されたらいいなぁ。
先月仕事で、生まれて初めて愛知県額田郡幸田町にある、その名も「幸田サーキット」に行きました。カービュー主催の「GRヤリス試乗会」が開催され、そこで谷口信輝選手(!!)と一緒に、イベント講師を務めたのです。
イベントの前日に幸田サーキットへと入り、コースの下見がてらGRヤリスに試乗。その目的は、当日の先導車&サーキットタクシーに要する時間を計るためでした。
そうはいっても現場はサーキット。初めてのコースなら、ちょっと走ってみたくなるじゃないですか。
そこで「デモ走行もあることですし」というのを言い訳に、カービュースタッフの手計測で、計測2周だけ走ってみることにしました。
幸田サーキットは“こうたサーキット”と読みます。全長1kmと少しのテクニカルなコースで、1コーナーからの折り返しと、最終セクションのAコーナーが難しかった。ヘアピンが連続する後半セクションはコースレイアウトも多彩で、カート用のコースとしても使われるそうです。前日入りしたときは、バイクも沢山走ってましたよ。
前半と後半にツイスティなセクションを持ち、これを下りながらのバックストレートで結ぶ幸田サーキットは、全長1km強のテクニカルコース。回り込んだコーナーが多いから、きちんと入り口でクルマを曲げて、僅かなターボラグを見越して少し早めにアクセル入れて……4WDのトラクションで全開ッ!!
なんてやりながら走ると、スタッフのSさんが「48秒でーす」と無線をくれて、「ふーん」なんて思いながら、その日は業務を終了しました。
しかしこれが、運命の分かれ道だったのです!
というのも谷口選手いわく、かの元F1ドライバーであり、現在スーパーGTで♯39 DENSO KOBELCO SARD GRスープラをドライブするヘイキ・コバライネン選手が、このコースをGRヤリスで走ったというのです。
そしてそのタイムは、なんと48秒3(正確には48秒34らしいです)だというではないですか!
おぉーっとぉ!?
「下見で走ったら、48秒出たよ」と言うと谷口選手が「明日アタックしなよ!」とひとこと。(元だけど)F1ドライバーにチャレンジだ! ということになったわけです。
ちなみに谷口選手は翌日の朝一番でアタックして、タイヤこそADVAN A052でしたがノーマルのGRヤリスで47秒44を記録!! そして「HKS Racing Performer GR YARIS」ではコースレコードを狙い、43秒20というトンデモタイムをマークしています(その後42秒671まで更新)。
日本が誇るチューニングメーカーHKSが、谷口選手と共に作り上げている「HKS Racing Performer GR YARIS」。コクピットはドンガラで、ワイドボディに295/35-18サイズのADVAN A050と、見た目はずいぶんコワモテですが、なんとエンジンと6速ミッションはノーマル! HKSタービンとオイルクーラー、インタークーラーと排気系(全てプロトタイプ)で450馬力を発揮して、筑波を58秒456で走っちゃうというのだから驚きです。テンロクターボで450馬力、夢があるなぁ!
イベントが始まる前の1時間を使って、谷口選手がコースレコードに挑戦。記録はランエボⅨが持っていた43秒256で、これをHKS GRヤリスが43秒20と、わずかながらも更新。そのときギャラリーからは、「おぉ~」と低い歓声があがりました。そして夕方にもう一度アタックした谷口選手は、42秒671までタイムを更新。あぁ、大人げない!(笑)。
ちなみに、彼がこのサングラスをかけて「ターミネーター谷口」になったときは、本気モードの証(笑)。一見大門風ですが、実はプラダというのがお洒落ですw GRヤリスによる一連のアタックの様子は、youtube「NOBチャンネル」と「HKS CO.,Ltd」で観ることがができますよ。
そしてフリー走行がつつがなく終了した最後のアトラクションを前に、谷口選手がアナウンスを始めました。
「この幸田サーキットでは、あのヘイキ・コバライネン選手が~」カクカク、シカジカ。
「そして今回山田くんが、そのタイムにチャレンジします!」
会場のみなさん、ぽかーんとしながらも一応パチパチと微妙に盛り上がって、ワタクシがアタックをしたのでありました。
果たしてそのタイムは……。
2回のアタックが共に50秒フラットという、まっこと恐ろしい結果になったのでした。
まさに放送事故レベルの、赤面ラップ!!
幸か不幸か参加者のみなさんはビギナーの方が多かったので、そんなタイムでもブーイングされることもなく、イベントは無事に終了しました。
いやー、今思い出しても恥ずかしい。いくらなんでもミニサーキットを市販車で走って、こんなにタイム差が付くとは……。
そしてあまりに昨日のタイムが気になって、改めてSさんに聞いてみると、
「昨日は速かったですよ。48秒1出てましたもん」
というじゃ、ありませんか。それって手押しの間違いじゃない!? と詰め寄るとSさんはデータを見せてくれて、翌周も48秒40が出ていました。
考えてみると前日に走ったのは夕方。タイヤもまだまっさらのド新品! という好条件でした。
対して二度目のアタックは、参加者のみなさんが試乗した後のクルマで、気温も午後の一番暑い時間帯。
タイムを出しに行った谷口選手だって、朝一番を狙ってたじゃん。そんなの、タイムアタックする方々にとっては常識! なんですが、ジブン、完全に舞い上がってました。
そういう意味ではGRヤリスで夏場のサーキットを走るなら、きちんとクーリングしてあげるのは必須です。こんなときのためにインタークーラーウォータースプレーだって着いてるのに……あとから気がついた!!
さらに連続走行ができるタフな仕様にするなら、インタークーラーやラジエターといった冷却系も強化したいところ。1.6リッターしかない排気量で272馬力ものハイパワーを引き出す高性能エンジンなんだから、ガッツリ冷やしてあげたいわけです。
温度が上がってもリタードするから壊れることはないとは思うけど、肝心なパワーが出なくなっちゃうしね。なんだかGRヤリス欲しくなってきた……。
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これ、一度でいいからやってみたかったんです。スーパーGTで、レース前のグリッドで、こうやってドライバーが折りたたみチェアに座るんです。そしていつもね、グッドスマイル初音ミクAMGの前で、谷口選手と片岡選手が座っている姿がカッコいいんですよ。でも谷口選手の隣にいるのって、リスク大きいですよね。足の長さが違いすぎるわ。
ともかくこうしてワタクシの「コバライネン・チャレンジ」は、幻に終わりました(いや、失敗でしょ笑)。
でも、タイムアタックってやっぱり楽しいですよね。
コースインするまでの緊張感、走っているときの集中している感じ。コントロールラインを超えて「どうだッ!?」とタイムボードを見るときのワクワク感は、普段の運転では味わえません。
そしてタイムが出ても出なくても、一喜一憂して楽しめれば、それでいいんだとボクは思います。クルマは楽しむことが、一番ダイジ!
もちろんGRヤリスでのアタックは、とてもエキサイティングでした。クルマがシッカリしているから、“狙いに”行ってる感じがとっても強い。
ちなみにトヨタはこの幸田サーキットを始めとした4カ所で、「GR YARIS CIRCUIT CHALLENGE」を開催しています。詳細はTOYOTA GAZOO Racingのホームページに掲載されていますが、そこには「夏頃終了予定」とあるので、気になる方は早めにチェックしてみてください。
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幸田サーキットに常設されているサーキットチャレンジ用のGRヤリス。詳細はホームページにもありますが、参加費用は4000円からで、グレードやタイヤによって価格が変わるようです。GRヤリスの性能と楽しさを味わうには、またとないチャンスだと思いますよ。
今回の反省を踏まえるとタイムアタックのシーズンは寒い時期だから(笑)、本当は冬まで延長して欲しいところですが、サーキットでGRヤリスを体験できる! というだけでもすごく、意味があるイベントだと思います。
みんなで、コバライネン選手と、谷口信輝選手に挑戦ですよッ!
さてワタクシは、もっと運転うまくなるために、愛車赤パンで修行しなおしです。タイヤを新調し、アライメントも取り直したので、次回はそんなレポートをしたいと思います。
■HKS Racing Performer GR YARIS サーキットチャレンジ
(テキスト:山田弘樹)

自動車雑誌の編集に携わり、2007年よりフリーランスに転身。LOTUS CUPや、スーパー耐久にもスポット参戦するなど、走れるモータージャーナリスト。自称「プロのクルマ好き」として、普段の原稿で書けない本音を綴るコラム。
[ガズー編集部]
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