『クルマは最高のトモダチ』赤パンAE86のスターターモーター交換! だけのはずが……山田弘樹連載コラム
みなさん、ごきげんよう!
さて今回は、愛機・赤パンの続報です。
念願のエキマニ交換を果たし、今シーズンも開幕だ!? と喜んだのもつかの間、走らせるほどにエンジンの調子が悪くなっていった我がハチロク。
ゲストとして参加しました「GAZOO愛車広場 出張撮影会 in 千葉市」からは無事に帰宅したものの、ともかく原因は突き止めないといけません。
というわけで主治医であるコシミズ・モータースポーツに持ち込もうと、エンジンを掛けてみたわけですが……。
キーを“クイッ”とひねると、“カチッ!”と音がしたあとは
“シーン”。
そうです、あの、いや~な感じ。
もう一回ひねってもやっぱり、“シーン”。
こっちも“シーン”。
まぁ、何かあるとは予想していましたよ。古いクルマとは、付き合い長いですから。むしろ途中で止まるといけないので、今回はS13シルビア乗りの友達(こっちも旧車かいッ!)を、助っ人に呼んでおりました。
スターターはミッションに14mmのボル2本で止まってる。あとは12mmで配線のボルトを外せば取れるが、ご覧の通りクリアランスが狭いので作業は少し面倒。セルが回らない場合断線トラブルの可能性も多々あるが、今回は平気だった。
しかし、これは予想外だったなぁ。
原因はスターターモーター。コイツが突然、ご臨終したようです。もちろんキーをひねりながら、コツコツ叩いてみましたよ? それでもエンジンは掛かりませんでした。
赤パンのエンジンはそれなりにハイコンプなピストンを使っているので、エンジンがストールする度にかけ直していたことも、少なからず負担を掛けてしまったのでしょう。
うーん、どうしよう。積載車を持ってくるにしても駐車場の間取りが悪く、なおかつエンジン掛からないから、かなり面倒。
そこで閃いたのは、神奈川県の名門ハチロク専門店「ガレージアネックス」でした。
助けて、斉藤さーん!
今回お世話になったのは、神奈川県横浜市磯子区にあるガレージアネックス。古いクルマに乗っていて何より助かるのは、不安なときに優しく、きちんと対応してくれるショップの存在なのです。 ちなみに斉藤さん、富士フレッシュマン黄金期の'96年に、並み居る名選手たちと争い、8戦6勝でチャンピオンに輝いた伝説のAE86マイスターです。
カクカク・シカジカ状況を話すと、さすがはアネックス。こうしたトラブルを見越してスターターとオルタネーターは、常時ストックしているといいます。
というわけで早速、クーラーなしのS13に乗って(笑)、これを引き取りに行きました。再び駐車場へ戻ってスターターを交換すると、エンジンは“ブーン!”。
みごとに息を吹き返し……あっ……あれ?
ストン。
エンジンは掛かっても当然燃調は濃いままなので、アクセルを閉じてしまうと、エンジンが止まっちゃう。
よってエンジンをストールさせないようにアクセルを少し開けながら、クラッチをつないで走り出したワケですが。
今度は前にも増してエンジンの吹け上がりが悪く、とっても走りにくい。
-
赤パンに付いていたのは、ノーマルのセルモーター(右)。ハイコンプな5.5AGを初動するにはちょっとキャパが小さい面もあったので、今回リダクションセル(左)に交換したのは良かったかもしれない。
「こりゃダメだ。今度こそローダーだな」と早々に諦めた矢先(こういうのは見切りが肝心です)、今度は室内から、うっすらと煙が。
……って、ケムリッ!?
一瞬のことでしたが、古いイタリア車にも慣れ親しんだワタシ、見逃しませんでした。
すぐさまクルマを路肩に止めて下回りをのぞき込むと、なんと触媒が真っ赤っか!! あぶなーッ! あぶなーい!!
生ガスを含んだ排気が集合した直後の触媒に溜まって燃焼しそうになっていました。とにもかくにも今度こそ専門医にということで、ローダーを手配して、本日二度目のアネックスへ。
斉藤さーん!
すると嫌な顔もせずに斉藤さん、ササッとクルマを見回してくれました。そして笑顔でひと言
「プラグ、いつ交換しました?」
うーん、いつですか、ね……(汗。
どうやらプラグそのものが寿命で、火花がきちんと飛んでいなかったようです。そしてこれを交換すると、今度こそ“バーン!”とエンジンは息を吹き返し、アイドリングもこれまでにないくらい安定しました。
そっ、そんだけ~ッ!?
-
赤パンのアイドリングを聞きながら、各部を素早くチェックしてくれた斉藤さん。外したプラグはかぶりながらも先端が白く焼けきっており、たぶん寿命。プラグを替えただけでエンジンが掛かりアイドリングも安定したが、すぐに外してチェックすると、既に真っ黒。やっぱり燃調をきちんと取り直さないと。
実際プラグを観て見ると、根元は黒くかぶり気味なものの、先端は白く焼けきっていました。いやはや、基本的なところを見逃してました。
それでも少しのアイドリングで新しいプラグは黒くなっていましたから、やっぱり最終的に燃調は、取り直さないといけません。
というわけでアネックスを後にして、ちょっと試運転。
するとこれが、すごくいーんです。アクセルの踏み始めは前より少しツキが落ちた感じがしたけれど、逆に中間域ではトルクがドーン! そして8000rpmまで、力強く回って行きます。
おおぉ、これが、プライマリー径φ42.7mm、集合パイプ径φ60mm、4-1マニの威力かぁ!
こうなるとエンドも換えて、もっと高回転でスカーン! と抜きたくなるよなぁ。でもフジツボのデフ上マフラー、静かでいいんだよな。その前にコンピューターだよな。
なんてコッチも、盛り上がっちゃいます。
ちなみに排気効率が上がったせいか、4連スロットルも野太く空気を吸い込むようになりました。
やっぱりいいよね、4AG! いや、5.5AG!!
なーんて喜んでいたワタクシですが、ふと電圧計を見ると、その数値が10Vを指しているのが目に入りました。
じゅっ、10ボルト!?
慌ててエアコンを切ると11V台に復活しましたが、その数値は9.9、9.8、9.7……と着実に下がって行きます。
そんなカウントダウン、いらない!
そうです、オルタネーターですよ(汗。
スターター、プラグと来て、電気系のラスボスが現れたわけですよ。
バッテリー、換えたばかりなのにぃ!!
-
アネックスに常時在庫されているセルモーターとリビルトオルタ。このときはまさか、オルタネーターまで必要になるとは……いや、そんな気もしてました(苦笑。
こんなのヒストリックカーでは、“あるある”です。
でも古いクルマに乗るのって、やっぱり簡単じゃないところも、ある。
それでも乗り続けるのは、自分のクルマが好きだからですよね。
愛着があるから、長く乗り続けたい。
もっと赤パン、普段から気に掛けてやらないとなぁ。
そしてまた、叫ばないとなぁ。
斉藤さーん!
-
ちなみにこれが、いまAE86の世界でも話題の「LINK」(リンク)コンピューター。アネックスは早くからこれに対応していて、20バルブエンジン用のコネクターもきちんとラインナップしている。斉藤さんいわくきめ細かい制御が可能で、緊急時のリタードにも対応できる優れものとのこと。やっぱり、リンクか。
ガレージアネックス
http://www.garage-annex.com
(テキスト:山田弘樹)

自動車雑誌の編集に携わり、2007年よりフリーランスに転身。LOTUS CUPや、スーパー耐久にもスポット参戦するなど、走れるモータージャーナリスト。自称「プロのクルマ好き」として、普段の原稿で書けない本音を綴るコラム。
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