『クルマは最高のトモダチ』大切なのは、トータルバランス!…山田弘樹連載コラム
いきなりですが、GAZOOレーシングからハチロクの純正部品が復刻されますね!!
ハチロク乗りならわかると思いますが、実はこれって、とってもすごいことなんです。
今までもトヨタは部品共販で一定のパーツを供給し続けています。これだけでも実はありがたいことなんですけど、さらに廃盤となったパーツを復刻してくれるんですからね。
今回復刻されるのは「リヤブレーキキャリパー」「ステアリングナックルアーム」「ドライブシャフト」の3つ。どうしてこの選択になったのかは、そのどれもがメーカーにしか作れないパーツだからだと思います。
そして第一弾(続編、出るんですよね!?)にこのパーツたちを選んだ人は、かなりハチロクに精通している方ですね……むむむむむ。
ボクもドライブシャフトを注文しようと思ったんですが、その販売は12月1日から。アッという間に売り切れちゃいそうな気もしますが、まだバックオーダーも受け付けていないので、今からドキドキしながら楽しみにします。
みなさんくれぐれも、買い占めはしないように。転売とかもダメよ、だめだめ! オーナー同士、みんなで分け合う気持ちで、必要な分だけ買いましょう。
そしてGAZOOレーシングのみなさん、もし即完売なんて状況になったら、様子を見ながら再販お願いしますッ!!
さて今回のコラムは、エキゾーストマニホールド。いわゆる“エキマニ”を、愛機である赤パンのために、久々に作り直すことにしました! というお話です。
作ってもらうのは、茨城県にあるガレージ・トータル。ブランドとしては国産車のメニューなので「パワーハウスGTD」のクレジットですね。以前チューニング・スイフトのときに紹介したショップで、小里さんとはZ33のエキゾーストを作ってもらったときからの長い付き合いです。
完全ワンオフ制作のため、現状は素材のみでバラバラの状態。エアコンホースなどを避けながら、N2仕様をベースにφ45とφ42.7のパイプ径を思案中。「何か4気筒エンジンのマニないの?」と聞いたら出してきてくれたのがNDロードスター用のマニ(写真右)。4-2-1のパイピングや集合部の造り込みが美しい!
ちなみに赤パンに今着いているエキマニも、GTD製なんですよ。これはノーマルの4AG用にエキマニ径を専用設計した、完全等長の逸品。ちなみにプライマリーパイプはφ38mmと細めで、セカンダリーパイプでφ40mm、サードパイプでφ50mmと広がって行く、4-2-1タイプのこだわり設計なんです。
プライマリーがφ38mmなんて聞くとハチロク乗りのみんなは「ちょっと細過ぎない?」と思うでしょうが、これはハチロクが現役のときにラリーでも採用されていた由緒あるサイズで、ノーマルエンジンでも下からモリッ! とトルクが出ます。
実際サーキットでも、輸出用ピストンを組んでバランス取りをした友達のハチロクより、立ち上がり加速が良かった。トップエンドまで回し続けても、じわじわ引き離した実績の持ち主なのでした。
ほんとノーマルエンジンにはバッチリで、自慢のスペシャル・マニホールドでした。
これがノーマルの4AGエンジン用にGTDで作ったオリジナルのワンオフ・EXマニホールド。プライマリーパイプの径をφ38mmと細めに絞り込むことで低中速トルクを確保し、セカンドーサードで徐々に高回転に対応させる設計ですが、これがドンピシャでした。多分、今でも言えば作ってくれるはず。気になる人は「GAZOOのコラムを見た」と言って連絡してみてくださいね。
ただ赤パンはそこから時を経てエンジンをAE111の5バルブに換装し、なおかつ5AGクランクを投入したので、排気量はもちろんパワーも上がってしまった。
かたやエキマニはノーマル4AG用のままだったから、もっとパイプ径を広げた方が抜けがいいんじゃないかなぁ? と、ずーっと思っていたんです。
というわけで足かけ10年、ようやく重い腰を上げてエキマニを作ることにしたわけですが、ここで小里さんとはこれまた面白いやりとりになりました。
小里さんはエンジンも組める腕利きチューナーなので、基本的には今度のマニもパイプ径などはお任せ。でも「やっぱり等長は外せないなぁ」って伝えたら、ニコニコしながら「等長ね~」というのです。
……むむむ? なにその笑みは?
プロの溶接姿って、やっぱり堂に入ってますよね。ワタシも「せっかくだからやってみなよ」と言われて溶接を体験しましたが、完全に腰が引けてます(笑)。小里さんの真似して腕まくりしながらやってみましたが、バチバチ火花が飛んできて、これが結構熱い! そんな状態で溶接棒をきれいに盛るのはとっても大変で、改めてハンドメイドのありがたみがよくわかりました。
小里さんは「一番大事なのはバランス」だといいます。
各気筒の排気干渉を防いで、効率を上げることが等長マニホールドの狙い。ただ各気筒から出るパイプの長さを合わせることばかりに捕らわれすぎて、それによって失われる性能があることにも気付かないとダメだよ、というのです。
当然排気はスムーズに流してあげるのが、一番効率がいい。でも長さを合わせることばかりに気を取られ、パイプを沢山曲げてしまえば、排気がぶつかる部分も増えてしまう。なおかつ重量も、重たくなります。パイプ径、パイプ長、曲げをトータルで考えてバランスを取り、きれいに抜いてあげるのがベストというわけ。
これまさに、“トータル”のポリシーなんですよね。
なるほど~。じゃあなぜ赤パンの4AG用マニは等長にしてくれたの?
それはハチロクのエンジンルームに、パイプをうねらせる余裕があったからだそうです(笑)。ただそうじゃないクルマの場合は、無理にパイプ長を増やしてまでは等長にしない。
「もちろん見た目を優先したり、どうしても等長がいい! という場合は別。お客さんの夢を叶えるのがワンオフマフラーだからね」というわけです。
左がワタシの溶接で(笑)、右が小里プロの溶接。「初めてなのに結構うまいよ」なんておだてられましたが、その違いは一目瞭然ですね。4本溶接したら「自分で最後まで作れば?」なんて言われましたが、即却下。そんなことしたらむしろパワーダウンしちゃうよ!
小里さんは、この道30年のベテラン。エンジンの排気量や素性を見れば、大体パイプ径の幅も予想が付くといいます。そして走るステージに合わせて、それを絞り込んだり広げたりします。
そしてボクが「ストリートメインで、たまに走るサーキットを気持ちよく走りたい」というリクエストを出したら「φ45かなぁ……。ヨンニーナナ(φ42.7mm)でもいいかもなぁ」とつぶやいてました。
小里さんは穏やかな職人さんなので、技術的なことに対しては口数少ないんですよ。ここまで聞き出すのも、結構大変でした(笑)。
しかし、久しぶりにこういうチューニングの空気感を味わうと、やっぱいいですね!
若い頃はお金がなくて、エキマニ着けるの夢だったなぁ! とか、ハチロクは小排気量NAエンジンだからエキマニ換えても大してパワーアップしないんだけど、その“ちょこっと”がオーナーにとっては大事なんだよね! なんて忘れてた感じが戻ってきます。
あとチューニングが全盛期だった頃は、とにかくパワーを出すことばかり考えていたけれど、いまは自分の狙い通りに仕上げて行くことがとても楽しい。時間がかかってもマイペースに、こつこつカスタムして行くことが、ようやくできるようになった気がしました。
エキマニが完成したら、もちろん詳しくレポートします。パワーチェックもしてみたいなぁ。
なにより、赤パンが気持ちよくなったら最高だな!
取材協力:ガレージトータル
(テキスト:山田弘樹)

自動車雑誌の編集に携わり、2007年よりフリーランスに転身。LOTUS CUPや、スーパー耐久にもスポット参戦するなど、走れるモータージャーナリスト。自称「プロのクルマ好き」として、普段の原稿で書けない本音を綴るコラム。
[ガズー編集部]
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