『クルマは最高のトモダチ』ミシュランの「雪も走れる夏タイヤ」!?…山田弘樹連載コラム
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奥さんの愛車であり、我が家のファミリーカーであるシトロエンDS3。その足下には夏から、クロスクライメート2が履かされています。関東近郊は冬になっても雪より雨の方が多く、さらに気温はそれなりに寒い。こうした環境にCC2はベストマッチです。
みなさん、ゴキゲンよう!
さて前回はスポーツラジアル「ADVAN NEOVA AD09」だったので、今回はウインタータイヤについて少しお話しましょう。
私は毎年、だいたい10月半ばくらいに、夏タイヤからスタッドレスタイヤへと履き替えます。
えっ、そんな早い時期から履き替えるの?
関東圏や非降雪地域の人たちであれば、そう思うかもしれませんね。特にここ数年は11月に入っても気温20度以上の日があったりと、なんとなく冬支度の必要性を忘れてしまいそうになります。
でも、雪が降ってからでは遅いわけです。
12月ごろになって天気予報で「明日は降雪の可能性が…」なんてしゃべっているのを聞いて、慌ててタイヤ屋さんに連絡。しかし
「予約でいっぱいです」とか、
「5時間待ちですね~」
なんて言われて、ゲッソリすることになるわけです。
だから私は毎年ちょっと早めにスタッドレスタイヤへ交換して、余裕をもって冬を迎えていました。そして大体、3月いっぱいまでこれを履き続ます。
ウインタータイヤへの交換時期は「気温7度が目安」といわれていますが、現代のスタッドレスタイヤであればもう少し高い気温でもマッチングしてくれるから、少し早めに履きかえることで、タイヤ屋さんの繁忙期をずらしているわけです。
だがしかし。
今年はタイヤ、履き替えません! なぜなら我が家のファミリーカーである“セブ”('11年式のシトロエン DS3)の足下には、夏からミシュラン「クロスクライメート2」(以下CC2)を履かせているからです。
ちなみにスタッドレスタイヤ(ミシュラン X ICE)は持っているのですが、これが18年製造と古くなってきたこと(山はまだ沢山残っているのですが)と、夏タイヤ(エナジーセイバー プラス)の溝がそろそろなくなってきたのとが重なって、今回思い切ってクロスクライメート2に替えてみました。何より「早くスタッドレスに交換しなきゃ」と、焦る必要がなくなったのが、嬉しいですね。
それって、オールシーズンタイヤでしょ?
いやこれは、「雪も走れる夏タイヤ」なんですよ。
たしかに使う期間は一年中で一緒なのですが、そのキャラクターがちょっと違うんですね。
オールシーズンタイヤはざっくり言うと、一年を平均的なグリップでまんべんなくカバーするタイヤです。
ちなみにJAFの「クルマ 何でも質問箱」ではこれを「晴天・雨天時ではノーマルタイヤ(夏タイヤ)に近いグリップ力を、雪上においてはノーマルタイヤよりも強いグリップ力を持っています」と表現していました。
※参考
https://jaf.or.jp/common/kuruma-qa/category-construction/subcategory-supplies/faq090
対してCC2は、同じ言い方をするなら「完全に夏タイヤで、しかも雪上においてはスタッドレス並のグリップ力を持っています」となるんです。特にCC2は、前作「クロスクライメート プラス」より、雪上性能がグンと上がりました。
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数値的には先代の「クロスクライメート プラス」に対して7%雪上ブレーキング性能が上がったというCC2。私も昨年北海道のテストコースでこれを雪上体験しましたが、体感的にはもっとスノーグリップが上がったように感じます。コンパウンドがさらに柔らかくなった印象で、雪上路面での安心感が段違いでした。
さてさてそのメリットは、まずスタッドレスタイヤよりドライ&ウェット性能が高いことです。
スタッドレスタイヤを10月半ばくらいから履き始めて感じるのは、「剛性」と「排水性」の低さ。
氷点下でもしなやかさを保つてるように、スタッドレスタイヤはゴムが柔らかく作られています。そしてゴツゴツとした氷上路面に密着し、氷上の水膜を吸収・排出するために、トレッド面には細かいサイプが刻まれています。
これがドライ路面だと、よれるわけです。また主溝の比率も小さいため、ゲリラ豪雨などでは夏タイヤより、どうしてもウェットグリップが低くなる。
そして関東圏や非降雪地域では、雪が降るよりも晴れの日の方が、そして雨の日の方が圧倒的に多いんですよね。
こうした状況でもCC2は夏タイヤとして使えますし、雨にも強い。そして気温が7度以下になっても、柔らかいコンパウンドが路面をしなやかに捉えてくれます。さらに、雪も走れてしまうわけです。
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ここ数年流行の「Vシェイプ トレッドパターン」。これが主溝の面積を確保すると同時に、雪を剪断(せんだん)してくれます。またそのエッジ部分が面取り加工されていて、ドライ路面ではブロックの倒れ込みを防止してくれます。
とはいえ、魔法のタイヤはありません。
CC2も氷だけは、苦手です。そしてココ、とても重要。
ちなみにミシュランではCC2の凍結路面での使用を、「×」判定しています。
スタッドレスタイヤほどはコンパウンドも柔らかくないし、サイプも切られていませんから、氷上路面にはグリップしにくいんですね。
だから雪のように剪断(せんだん)できないアイスバーンや、降った雪が溶けてできたミラーバーンでは、トラクションを掛けることができません。そういう意味でも、夏タイヤ。
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この「スリーピークマウンテンスノーフレークマーク」(長い!)と「M+S」の刻印が、国際基準で定められたシビアスノータイヤであることを証明しています。これだと冬用タイヤ規制時でもチェーン装着は不要。でも凍結路面は苦手なので、そこだけは注意して。
じゃあクロスクライメート2って、冬はどういうシチュエーションで役に立つの?
それは、雪の降り始めです。まだアイスバーンになっていない状況なら、出先から家へと安全にたどり着けるわけです。
冬場はもちろん、春先でも突然雪が降る場合はあります。つまり雪が降るかどうかわからない、降っても積もらないような地域であれば、CC2のメリットはとても多くなるわけです。
しかしくれぐれも、凍結路面は走らないように。
夏場はもちろん気温の低い冬場でも、高速域でタイヤがよれず、雨でも高い排水性を確保できるのがCC2最大のメリット。スタッドレスタイヤも年々この性能は上がってきていますが、やっぱり夏タイヤには敵わない。でも夏タイヤだと氷上性能は期待できないので、どんな環境で使うのか? が重要なのです。
つまりタイヤって、「どの温度域を想定しているか?」 がとても大切なんです。モータースポーツに限らず、夏タイヤや冬タイヤであっても、これは同じなんですね。
というわけで今年は、スタッドレスタイヤに履き替える必要がなくなりました。うーん、はっきり言って楽チン! このまま冬を過ごせるなんて、ちょっと不思議な感じです。
(テキスト:山田弘樹)

自動車雑誌の編集に携わり、2007年よりフリーランスに転身。LOTUS CUPや、スーパー耐久にもスポット参戦するなど、走れるモータージャーナリスト。自称「プロのクルマ好き」として、普段の原稿で書けない本音を綴るコラム。
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