『クルマは最高のトモダチ』今年も富士24時間レースを戦い抜きましたッ!…山田弘樹連載コラム

  • チーム・スタディ BMW M2 CS Racing

    最後はハブ周りに蓄積疲労が及んだけれど、その他は故障もなく24時間を走り抜いてくれた「M2 CS Racing」。最高に愛らしいリトルダイナマイトです。

みなさん、ごきげんよう!

さっそくですがワタクシ、今年も「富士24時間」(正式名称は、NAPAC富士SUPER TEC24時間レース)に出場しました!

チームは昨年に引き続き、アジア初のBMWワークスチームである「BMW Team Studie」!! マシンも同じくM2 CS Racingで、出場クラスはまたもや「ST-1」であります。

メンバーも昨年同様、木下隆之/砂子塾長/大井貴之/東風谷高史選手という最高に頼もしい布陣。こんなチームで2年目を迎えられたことが、未だに信じられません(驚。

ちなみに木下アニキはニュル24hにM2CS Racingで出場して、みごとクラス優勝を果たした翌週のFUJI 24hですから、呆れてものも言えません(笑)。
どんだけレース好きなんですかッ! って話です。

  • 今年もスーパー耐久富士24時間レースに参戦した山田弘樹

    昨年よりは緊張してなかったつもりが「無線の声、弱すぎw」と監督に笑われた筆者。そりゃあ、やっぱり、キンチョーしますよッ!

さてさて肝心なレース内容ですが、これが、なっかなかにハードでした。
我らがチーム・スタディの8号車は、今年から始まったワンメイクレースである「BMW M2 CSレーシングシリーズ」(https://www.totobmw.com/motorsport/)の参戦車両。

しかし開幕戦SUGOでは、モータージャーナリストの先輩である河口まなぶ選手が残念ながらクラッシュを喫したため、5月10日のS耐公式練習走行が参加見送りに。

レースにアクシデントはつきものです。ただ今は海外からパーツがすぐに届かない状況なので、プライベートテストもできなかったんですよね。

なおかつ今回はタイヤを、280幅から260幅へとサイズダウン!?
これは単位当たりの荷重を増やして、タイヤの性能を引き出す(というかノーマルサイズに戻しただけともいう)というエンジニアリング上の判断でしたが、昨年使った280幅と比較できなかったのは痛かった。

  • チーム・スタディの鈴木監督と山田弘樹

    昨年はM2 CS Racingのアジアデビューというコンセプトがあったけれど、今年は参戦意義が希薄だなぁ…と感じていたそのとき。鈴木監督が「継続することが大切なんだよ」と教えてくれた。この一言で、がぜんやる気が湧いたのでした。

さらにさらに、今年はST-1クラスが4台に!!
たった4台? なんて言っちゃいけません(笑)。だって今年は、
LMPカーみたいにぺったんこな♯2 シンティアム・アップル KTM(飯田太陽/加藤寛規/吉本大樹/小林崇志/高橋一穂)、♯38 muta Racing GR SUPRA(堤 優威/中山雄一/松井宏太/久保凛太郎)に加えて、オーバー500PSのアストン・マーチンである♯47 D'station Vantage GT8R(浜 健二/織戸 学/近藤 翼/松浦孝亮)まで加わってきたんですよ。

ST-1クラスは改造範囲が広いので、M2CS Racingもそれに準じたチューニングを施せば、戦闘力は上がると思います。

でもチーム・スタディとしてはこれをゴリゴリ改造せず、BMWが用意した純正パッケージングで走りの良さを示したい。
パワーこそ450PSもあるけれど、入門編レーサーとしてコストを抑えるべくM2CS Racingは過度な軽量化を行っておらず、その車重は1500kgもあります。だからST-1だと、ショージキ厳しい。

M2CS Racingは世界のレースで性能調整をするために、USBパワースティックでその出力を絞ることができるので、次があるならパワーを落としてST2クラスとかに編入してくれるといいんだけどな……なんて思っちゃいます。

  • チーム・スタディのラウンジと応援に駆け付けた砂子塾塾生

    スタディはBMWオーナーのためにラウンジも用意。そして観戦エリアでは、「砂子塾」の塾生たちがBBQしながら応援。キャンプを楽しむ人たちも多く、なんと3日間で3万8100人の人が来場した富士24時間。だんだんと、ニュル24hのようになって来ましたね!

ともかく簡単に言うと、スピードでは絶対に敵わない。
上位3台のどれかが落ちてくるのを待ちながら、ミスなく淡々と走ることが、唯一の作戦だったわけです。

でも走っているときは、もちろん可能な限りプッシュです。亀さん走法、苦しいわ~。

そんなこんなで始まった水曜日からのレースウィークは、260幅タイヤでのセット出しに費やされました。

そして予選では最終的に、砂子選手が1分50秒118のチームベストをマーク。一発の速さでは、気温が高いにもかかわらず、去年と同等のところまでこぎつけました。

かたや満タンからのロングスティントは、53~54秒台を想定。これは昨年より1秒以上遅いタイムですが、ブレーキパッド交換をメンテナンスタイム(編集部注:決勝中に10分間のピットインが義務付けられています。)の1回で済ませるための策でした。
なおかつタイヤ交換は、最大で片側のみのとして、ピット滞在時間を削る作戦が敷かれました。

  • チーム・スタディ BMW M2 CS Racingの走行シーン

    今年最大の変更ポイントは、タイヤ幅を280から260幅にしたこと。コンスタントラップは昨年の1秒落ちだったけど、そこにはコンディションも影響していて、どちらがよいかは判断できませんでした。でも、操縦性は断然良くなった。少しずつ、データを貯めて行こう。

そんな我らが亀さん号は、序盤から淡々と走行。
かたやライバルたちは、トップの♯2 KTMを♯47 アストンが2周ほどのビハインドで追いかける展開。
そこから少し開いて♯38 スープラ、ずっと開いてM2 CS Racingという順番で、夜が明けるまで予想通りの展開をしていたのですが……。
なんと私が早朝のWスティントを終えて戻ってくると、M2 CS Racingの順位が、3番手になっているじゃありませんかッ!?
やっぱりボクの走り、キレッキレって感じ?
いえいえ、どうやら♯38 スープラに、トラブルが出てしまったようなのでした。

アドバンテージはおよそ7周。相手はプロが乗ると、ラップタイムが4秒以上速い状況。
とはいえレース中のFCY(フル・コース・イエロー)やセーフティカー導入、タイヤ片側交換によるピットロスの軽減などを駆使して、M2CS Racingは、等間隔で逃げ続けました。
がんばれー!

しかしドラマは、終盤に起こりました。
交代した大井選手から「左のハブからバイブレーションかも」という、不吉な無線が。このときは、ホント生きた心地がしなかったです。

  • チーム・スタディ BMW M2 CS Racingの高木エンジニアとチームスタッフ

    24時間を共に戦ってくれたチーフエンジニアの高木さんと、スタディの面々。スーパーGT 鈴鹿ラウンドの直後だったから、ものすごく疲れていたと思う(優勝おめでとう!)。そしてだからこそ、表彰台に乗ることができてよかった。

その後木下選手のスティントでは症状が出なかったので安心していたのですが、アンカーである東風谷選手が走り出して、残り90分となったところでトラブルが発生!

いわく100R走行中にフロントから“ガタン!”とバイブレーションが出て「怖くて走れない!」という状況に陥ってしまったのです。

そこでチームはマシンを急遽呼び戻し、ハブ周りをチェック。
できうる応急処置をして再び送り出しましたが、ここでドラマは終わりませんでした。

この後に東風谷選手が、混戦のなか、まさかの黄旗追い越し判定に。そしてほどなくして、ドライブスルーペナルティの裁定がッ!

このままだと、最後の給油をしたら確実に抜かれる。
そこで東風谷選手はラストまで、燃料とハブ周りをもたせながら走る決断をしました。

ショートシフトしながらのラップタイムは、2分フラットまで落ちました。かたや後ろからは、あの若手イケメン・激速ドライバーである堤 優威選手が猛チャージ。どんどんとその差は縮まり、遂にはラスト数周で同一周回に。

それでも最後は、亀さんが先にゴールしましたッ!
同じ3位でも、今年は戦い抜いて勝ち取った3位でした。

  • チーム・スタディ BMW M2 CS Racingは3位フィニッシュで表彰台に登壇

    ST-1クラスは♯2 シンティアム・アップルKTMが2連覇。♯47 D'station Vantage GT8Rは初出場で2位に。そしてチーム・スタディも、2年連続で3位表彰台を獲得しました!

このレースで色々学べたことはとても多く、まだまだ語り足りないのですが、とりあえず今回はここまでにしておきます。
シビれる24時間耐久レースでした。

(テキスト:山田弘樹)

自動車雑誌の編集に携わり、2007年よりフリーランスに転身。LOTUS CUPや、スーパー耐久にもスポット参戦するなど、走れるモータージャーナリスト。自称「プロのクルマ好き」として、普段の原稿で書けない本音を綴るコラム。


あわせて読みたい!『クルマは最高のトモダチ!』山田弘樹コラム

MORIZO on the Road