『クルマは最高のトモダチ』オッサン3人大興奮! 新型フェアレディZをなめまわしてきた!…山田弘樹連載コラム
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現状、世界で一台しかないフェアレディZ プロトタイプ。残念ながら、みなとみらいにある「ニッサン・パビリオン」での展示は10月4日で終わってしまいました。このあとは世界を巡業する予定とのことでしたが、ボクは1月に開催される東京オートサロンに戻ってくるのではないか? と睨んでます。いや、もしかしたら生産プロトが展示されるか!? なぜならそう思えるほど、Z35の造り込みはリアリティに溢れていたから。
スーパーGT第5戦の現場に向かう前、ボクは「ニッサン・パビリオン」におもむきました。その目的は「フェアレディZ プロトタイプ」を見るためです。前回Zのコラムを書いた後、やっぱり実物が見たくなって、みなとみらいまで足を伸ばしたのでした。
しかも当日は、レーシングYouTuberである大井貴之(おおい・たかし)師匠と、フェアレディZチューニングのエキスパート「Garage4413」(ガレージ・ヨンヨンイチサン)の高村嘉寿さんも同行。開館前の貴重な一時間を頂いて、現物を舐めるように見てきたのです。
その様子は「クルマで遊ぼう! 大井貴之のSports Driving Labo.」をご覧ください。Z大好きな3人の日産ならぬオッサンが、下回りやバンパー開口部を覗きながら、あれこれ真剣に話している姿が見られます。
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「排気管取り回しは……」「サスペンション形状も……」 YouTubeの収録では、大の大人ふたりが、終始この調子ですよ(笑)。でもそれだけ、僕たち3人はZに対する思い入れが深いんです。ちなみに大井さんはスーパー耐久をZ33で闘って、チャンピオンも獲得しているんですよ。 「クルマで遊ぼう! 大井貴之のSports Driving Labo.」より
ちなみに日産の広報部I氏も、「ここまで真剣に見てくれた方たちはいないですよ」と喜んでくれました。そしてホイールベースの長さを測ろうとしたとき「そこまでやっちゃダメです!」と、しっかりツッコミを入れてくれました。
何かとコンプライアンスがうるさい世の中で、ここまで大らかに撮影を許してくれたのは、彼自身がクルマバカというだけでなく、やっぱり日産の中にも、クルマ好きの熱い風潮が残っているからなんですよ。
なんだかんだ言って、そうじゃなきゃZを復活させないよね。I君、そして日産、ありがとう!
さて肝心なニューZですが、実物は素直にカッコ良かったです。
やっぱりプロダクトは、立体で見るとグッときます!
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一周して元に戻る、という感じでしょうか。フロントオーバーハングを切り詰めて現代性を高めたZ33や、その発展型であるZ34に対して、Z35はロングノーズ感を押し出してますね。直線のキャラクターラインがいきなり曲線になるのはちょっと目が慣れないけれど、絞り込まれたウェストからボーン! とヒップが張り出すデザインは迫力ありました。フロントの真四角なグリルをずーっと見ていると、S30に見えてきます(笑)。
現代のクルマは全幅が広いので、正面から見るとちょっと目が離れ過ぎちゃうのが難点。
あと冷却効果と空力性能を高めるためにバンパーが分厚くなってしまうから、どうしてもS30時代のようなスリークさは出し辛いのですが、それでも斜めから見た姿はフェアレディZ。ロングノーズがサイドステップから絞り込まれ、ヒップでドーン! となるシルエットには、S30との血のつながりを強烈に感じます。
だからボクはわりと自然に、「このZでさらっと街を流したいなぁ」とイメージしました。
このままで販売されるのかはわかりませんが、今度のZは素の姿が美しいから、着流しでも大人っぽく決まりそう。
そういう意味では女性にも、とっても似合うスポーツカーになると思います。
ちなみに発表されているスリーサイズは、全長×全幅×全高が4,382×1,850×1,310mm。そしてそのホイールベースは……おっと、それはナイショ。
次期型Zは、現行34型のリソースを多く使って作られるのではないか? と、各メディアによって分析されていますが、自分もそう予想します。インテリアの造形や、細かいパーツの意匠を見ても、そう推測されるのは自然なことでしょう。
でも、自分はそれが悪いことだとは思いません。
むしろZ34型のシャシーは現代でも通用するポテンシャルを持っているし、開発陣がそこから各部を必ず磨き上げてくるはずだから、良くなるに違いない。そうじゃなかったときに、初めて文句を言おうと思います(笑)。
スポーツカーというと、とかく専用プラットフォームや専用エンジンを求められがちですが、素質のある素材を磨き上げ、数世代に渡って使うことはよいことです。
日産はGT-Rが既にそれを証明してますし、フェラーリだってポルシェ911だって、実績のある素材を長く使い続け、次の技術が蓄積したターニングポイントで、全てを刷新します。
インテリアはセンターコンソールやメーター周りに、ドアノブやシート形状にもZ34の面影が。アルカンターラやレザーを、イエローステッチで彩り、フル液晶パネルにするだけで、グッと新しさが演出されています。そしてトランスミッションは、6速MT!でもボクは、実は2ペダル派だったりします(笑)。
そもそもフェアレディZの出発点は、アフォーダブル・スポーツカー。走りの良さと美しさを備えながらも、高級スポーツカーに対して圧倒的に現実味のある価格を実現することに、意義があるわけです。
日産はGT-Rをフラグシップに置いたことで、それができる。
2002年にZ33が登場したとき、最もベーシックなモデルで300万円~というプライスを実現したことには、若かった自分も驚いた記憶があります。
ちなみに現行Z34型のベースグレードは398万円(2008年発売当時は362万円)。こうなると「プロパイロット」の搭載などでZ35型はもうちょっと高くなるでしょう。
スカイライン400Rの価格(562.5万円~)を考えると、V6ツインターボ搭載車は600万円近い価格になってしまいそうですが(恐)、400馬力オーバーのスペックを持つスポーツカーとして考えると妥当な値段。
つまり世界の水準に比べわれわれ日本人の所得が、20年前からちーっとも増えていないことこそが、全ての不満の根源なのです。
まったくこのデフレには、怒りを感じますよ。クルマ好きの心だって、この環境じゃ折れますがな。
ちなみにフェアレディZは3.5~3.8リッターの排気量が原因なのか、中古車市場では低値安定。70/80スープラやS15シルビア、RX-7(FD3S)やS2000よりは、ずっと割安感があります。
それもこれも、新車時の価格の安さと、販売台数の多さがもたらしたもの。
とはいえZ35型が出るとアナウンスされたことで、じわっと相場が上がり始めている感じなので、気になっていた人は早めに愛車探しをはじめましょう。
なんか中古車バイヤーズガイドみたいになってきたな(汗。
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日本では2by2の方が受け入れられるのではないか? と昔は思いましたが、スカイラインクーペとの棲み分けを考えてか完全2シーターとなったフェアレディZ。Z33から始まったこのスタイルも、すっかり定着しましたね。ということはスカイラインクーペも復活するのかな? ちなみにトランクは開閉させてもらえませんでしたが、インテリアの撮影はOKだったので、開閉機構の細部がまだ煮詰まっていないのかもしれません。
話を戻して。
そう、このZ35型にはV6ツインターボが搭載されます。
そして世界に一台しかないというこのプロトタイプにも、エンジンルームこそ見られませんでしたが、ターボを搭載している様子が、車体下の排気管から見て取れました(笑)。
ただボクは、もっとローパワーなエンジンも搭載して、ベースグレードの価格を可能な限り下げて欲しい。スカイラインのラインナップから見ても、それは可能でしょう。
メルセデス製の2リッター・ターボはスポーツカーとしての個性を引き立たせるようなユニットではないけれど、2リッター・ターボを搭載してもよいと思う。
「Zに直列4気筒とは何事じゃ!」と怒られそうですが、シルビア復活が難しいなら、ぜひZでそれを受け継いで欲しい。
あとはどれだけ“新しさ”を注入できるか。
プロパイロットの搭載や、液晶パネルのメーターで未来感を示すのは当然。GT-R譲りのデジタル計器やロガーシステムなどを盛り込むことだってできるでしょう。
でも、もう一押し、「おぉ!?」と思わず買いたくなってしまうような楽しさを、盛り込んで欲しい。
“この手があったか!”という方法で、ボクたちを驚かせ、笑顔にして欲しいんです。
できればお金に物を言わせないアイデア勝負で。
ボクとしては、そろそろクルマにも、ナイト2000ばりにしゃべって欲しいな。
「おはよう、コウキ! 今日はどこへ?」「うまい手作りハンバーガーが食べられる所まで連れてって」「OK! でも最近食べ過ぎだよ? またジムさぼるの?」
みたいな会話ができたら、楽しいと思う。スポーツカーが走りだけじゃない部分でも、真の相棒になる気がする。
いまでも各社が音声認識システムを始めているけれど、悲しいときには歌を歌ってくれる、アレクサのレベルにまでは到達してません。
ここは日産にがんばってもらって、ぜひそのレベルでしゃべってくれるZを作って欲しいな。
やっちゃえ、日産!
(テキスト:山田弘樹)

自動車雑誌の編集に携わり、2007年よりフリーランスに転身。LOTUS CUPや、スーパー耐久にもスポット参戦するなど、走れるモータージャーナリスト。自称「プロのクルマ好き」として、普段の原稿で書けない本音を綴るコラム。
[ガズー編集部]
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