『クルマは最高のトモダチ』いま一番面白いクルマを作るメーカー、ルノー・スポール…山田弘樹連載コラム

提供:ルノー・ジャポン
提供:ルノー・ジャポン

こんにちは!
モータージャーナリストにしてプロのクルマ好き! の山田弘樹です。
前回までのハチロク話は、おかげさまで大好評でした。トモダチからもわざわざ「読んだよ!」というメールや電話があって驚いています。
みなさん、本当にありがとう!

さて今回は、編集部から「そろそろお仕事で乗ったクルマのことも……」というリクエストをいただいたので(笑)。
最近乗った中で、一番楽しかったクルマの話をしようと思います。
いや正確にいうと、「いま一番面白いクルマをつくるメーカー」のお話をしましょう!

その名は、ルノー・スポール!

……ん? 知らない? あっ、知ってる? 良かったぁ。

ルノー・スポールは、フランス「ルノー社」のスポーツ部門。トヨタで言うと「GAZOO  Racing」。日産で言えば「NISMO」、スバルで言えば「STi」。 BMWだと「M社」で、メルセデスだと「AMG」……。もういいですね。

ニュルブルクリンクで、ホンダ シビック・タイプRと火花を散らすメガーヌRSってありますよね? あの「RS」はいわゆる「レーシング・スポーツ」の意味ではなくて(そのニュアンスも込めていると思いますが)、「ルノー・スポール」を意味しているんです。
だから正確な表記だと「メガーヌR.S.」と、省略記号が入ります。

メガーヌRSトロフィーRの試乗会では、谷口信輝選手がアタックをしました。私の試乗記事も載っているので、その詳細は GENROQweb(https://genroq.jp)をお読み下さい!
メガーヌRSトロフィーRの試乗会では、谷口信輝選手がアタックをしました。私の試乗記事も載っているので、その詳細は GENROQweb(https://genroq.jp)をお読み下さい!

さてさて、そんなルノー・スポールの何が面白いのかというと。
その「RS」のイニシャルに負けないくらい、ルノーベースで熱いクルマをつくるんです。そしてその乗り味は、どちらかというとキレッキレ。
いや、はっきりとキレッキレ(笑)。
普通の自動車メーカーだったらここまで真摯に攻めないよなぁ、というセッティングを市販車に施してきます。

メガーヌRSなんて、すごいですよ。あのクルマには「4コントロール」という後輪操舵が付いているのですが、これを付けた理由は単純明快、「気持ち良くクルマを曲げる」ため。
ノーマル/スポーツモードでは60km/hまでの領域で、ハンドルを切ると後輪が外側(トーアウト)にステアします(最大舵角2.7度まで調整)。レースモードだと、これが100km/hまで高まります。サーキットの領域ですね。
反対に時速60km/h以上(レースモードだと100km/h以上)の領域だと最大で1度、内側に後輪が切れます。これでトーインとなって、高速カーブでもクルマは安定方向に。

こうすることで、一般道では快適な乗り心地を保ちながらも、クルマがクルッと良く曲がり、高速コーナーでは安定するようになります。ちょっとクセはありますけれどね。
そして少しサスペンションをシッカリさせた「トロフィーR」バージョンだと、サーキットでも、笑えるぐらいグイグイ曲がるんです。
いやはやそれは、画期的な乗り味でした。だってFF車でもサーキットで、ドリフトコントロール(正確にはヨー・コントロール)できちゃうんですから!

そもそもルノー・スポールは歴代のメガーヌRSで、FFモデルの回頭性を突き詰めてきました。
FFモデルは前輪で操舵と駆動の両方を担うため、どうしてもカーブの途中からアンダーステアになりやすい。それを解決するためにサスペンションを、自動車メーカーのクルマとは思えないほど大胆にセッティングしてきました。

スプリングやダンパーはガッチリ硬め、最上級モデルでは車高調整機能付きダンパーも装着し、カーブの始め(ターンイン)でリアが巻き込むようにセットするんです。
それって、レーシングカーセッティングの領域です。

鈴鹿サーキットで先代メガーヌRSトロフィーに乗ったとき、開発チーフであるロラン・ウルゴンさんから「スタンダードモデルのセッティングはちょっとアンダーステアかも。2回目に乗るのはニュル仕様だから、すごく曲がるよ!」という(ような)コメントをもらったのですが……ところがどっこい。
ボクが乗ったSTDモデルは、三連S字コーナーの最初でスパーッ! と横を向き、芝生を通り越してS字をクリアして行ったのでした(笑)。

帰ってきて「どこがアンダーじゃい!(笑)」とウルゴンさんに言うと、「リアタイヤが暖まっていなければオーバーステアだよ」と笑顔で返された(笑)。
そして「そのためにESC(横滑り防止装置)も付けているよ」と当たり前のように言われました。
つまりそれは、「タイヤがきちんと発熱するまでは、ESCオンで走ってね」ということ。やることやってあるから、きちんとクルマの素性を理解して、自己責任で楽しもうね! という姿勢は実にヨーロッパ流だなと思いました。

さらにウルゴンさんに「ルノーのようなメーカーが、こんなに本格的にセッティングされたクルマをよく市販化したね」と問うと、「ルノー・スポールのユーザーは、こういうクルマじゃないと納得しないんだ」と答えました。

それは一般的に考えると曲がり過ぎるけれど、クローズドエリアでクルマをきちんとコントロールしたい! というユーザーにはドンズバの、本格セッティングだったのです。料理が上手になって、よく切れる包丁が欲しくなる感覚とでも言えばいいかしら?

開発ドライバーのチーフであるロラン・ウルゴンさん(左)と、シャシー開発チーフのフィリップ・メリメさん(右)
開発ドライバーのチーフであるロラン・ウルゴンさん(左)と、シャシー開発チーフのフィリップ・メリメさん(右)

そしてウルゴンさんは最後に、「メガーヌRSにとってニュルのタイムは大事だけど、一番大切なのはオーナーが『運転して楽しい!』と思えるクルマにすることなんだ」と教えてくれました。
日本だとこうしたセットはクラブマンが個々に行う領域ですが、ルノーではそのスポーツ部門であるルノー・スポールが、ひとつの手本を示してくれる。スポーツカー文化の奥が深いなぁ……と感心した記憶が甦ります。

そして新型メガーヌRSの「4コントロール」(後輪操舵ですね)は、こうした難題をスマートにクリアしたんです。サスペンションをガチガチに固めることなく回頭性を高め、FFなのにマシンコントロールまでできるようになった。
ルノーに限らずヨーロッパの大衆車には今、トヨタ86のようなバランスの良い後輪駆動車はないですから、ルノー・スポールはなんとしても、クルマの楽しさをメガーヌRSで表現したかったのでしょう。

さらに驚くことに!
ニュルアタッカーであるメガーヌRS「トロフィーR」では(長い名前ですよね(汗)。動画だと、舌噛みそうになります)、その画期的で、メガーヌRSの代名詞とも言える後輪操舵を、取り去ってしましました。

どっ、どうして!?
それは、軽量化のため。パワーこそ300PSありますが、排気量では1.8リッターしかないメガーヌRSを速く走らせるために、4WSシステムだけでなくリアシートまで取り去って、オマケにカーボンボンネットまで装着して、パワー・ウェイト・レシオを低めたんです。
一周20kmを超えるノルトシュライフェ、長い直線を持つこのコースでは、その取り分の方が有効だったんですね。

そしてトロフィーRの走りは、筑波サーキットのようなコースでも、トロフィーと比べ約1.5~1.7秒のアドバンテージをもたらしました。代わりに後輪操舵のない足回りは先代のようにビシッと仕立てられ、その運転もまったくのビギナーだとかなり手強い。
でもドライビングが大好きなクラブマンが乗れば、きっとそのピュアさがわかるFFスポーツカーに仕上がっていました。

提供:ルノー・ジャポン
提供:ルノー・ジャポン

こうしたピュアな思いは長年の活動から日本のユーザーにも広まり、今では日本がルノー・スポールにとって世界第3位(1位はフランス本国、2位はドイツ)のマーケットに成長しています。
大衆車も製造するメーカーで、ここまでクルマの楽しさを真摯に追求するメーカーって、ないと思います。

ルノー・スポールにはもう一台、ちょっとハイエンドなアルピーヌA110というスポーツカーがあります。これもかなりのこだわりをもって生まれた一台なので、改めてお話したいですね。

クルマが実用品でありオートノマスやEV方向へシフトする一方で、クルマの楽しさを表現するベクトルも、これからはもっと必要になるとボクは思っています。
人は効率だけじゃ生きられませんからね!
ルノー・スポールのような姿勢が、他のメーカーにも感じられると嬉しいなぁ! と思います。

<関連リンク>
「4コントロール」について(ルノージャパン公式サイト)
https://www.renault.jp/car_lineup/megane_rs/features/performance.html

(写真/テキスト:山田弘樹)

自動車雑誌の編集に携わり、2007年よりフリーランスに転身。LOTUS CUPや、スーパー耐久にもスポット参戦するなど、走れるモータージャーナリスト。自称「プロのクルマ好き」として、普段の原稿で書けない本音を綴るコラム。


[ガズー編集部]

MORIZO on the Road