『クルマは最高のトモダチ』“ガイシャ”のチューニングカーも刺激的…山田弘樹連載コラム
こんにちは!
アルピーヌA110のコラムでは、コメントから読者の方の色々な意見が読めて楽しかったです。
そう、コメントはいつも楽しく読んでますよ!
ボクも全てのことは言い切れないけれど、まずみなさんに伝えたいのはクルマの楽しさ。ボクが投げかけた小石の波紋で、みんながクルマについて気軽に話せたら嬉しいなって思いました。
緊急事態宣言で外出もはばかられる今ですが、ここはグッと耐えて、みんなでまた楽しくクルマを走らせましょう!
そのためにもこのコラムで、クルマの楽しさを感じてもらえたら幸いです。
話は戻って。
そもそも“ガイシャ”って高価だし、誰もが買えるわけじゃないですよね?
かくいうボクも、就職してティーポ編集部に入ったのは「仕事でガイシャに乗れるから!」という、とっても単純なものでした。
そんなんで仕事選んでいいの!? と今さらながらに思いますが、若かりしボクは真剣でした(笑)。
96年当時はですね、初代ロータス・エリーゼが登場したばかりの時期。一度でいいからエリーゼみたいなスポーツカーに、乗ってみたかったんです。
さてなぜ“ガイシャ”って、高価なものばかりなんでしょう?
これはシンプルに言うと日本に入って来るガイシャが、我々の所得に対して高価なモデルばかりだからです。
日本には現実的な価格で、耐久性や性能の高い大衆車が沢山あります。ここで輸入のエキストラコストをかけてまで大衆車で勝負しても、沢山売るのは大変。
だから「日本にないものを輸入しよう!」とインポーターが考えるのは自然で、日本にはない価格帯の、速かったりカッコよかったりするクルマが多くなるのだと、ボクは考えています。
外国にだって、ガイシャじゃなくて、素敵な大衆車は沢山あるのです。
日本市場から撤退してしまったオペルやフォード、フィアットやルノーの輸入されない大衆車には、日本車にはない味わいがあります。
文化の違いがもたらす面白さ。
これを味わえると、輸入車に対する気持ちは大きく変わると思います。
昔はチェッカーモータースやジャックス、フランス・モータースといったインポーターが、こうした大衆車を輸入してくれていました。
そういう意味でフォルクスワーゲンは、ドイツのスタンダードを日本に紹介してくれる貴重なメーカーだと言えますよね。
さて「ガイシャは高い」に話を戻すと、でも、だからこそ、そのハードルを飛び越えた後の楽しさは格別です。
台数が少ないことはすなわち、希少性の高さとも言えます。
やっぱりクルマ好きにとって、「特別なクルマに乗っている感じ」って原点ですよね。
マイナーだからこそ、同じクルマに乗るトモダチができると、とっても嬉しかったり。
シンプルに言っても、カッコよくて速いクルマたち、操作感の上質なクルマたちが多い。
そんな中から運命の一台に出会えると、カーライフはとっても楽しくなります。
そして今月は、そんなガイシャをチューニングしちゃうお話です。
ボクはオートファッションimpという雑誌で、チューニングカーを試乗する連載をやっています。
imp誌に登場するショップやインポーターがチューニングしたクルマを、富士スピードウェイで走らせて記事を書くのが仕事です。
- 撮影はコンディションのよい午前中に行われることがほとんど。朝早く集合するので、ちょっと寝ぼけてます。
imp誌といえばスタイルアップ。車高をビシッと決めたりエアロを“巻く”のはもちろん、インテリアにまで手を入れちゃうヘビーユーザーが登場する雑誌なので、富士で走らせるなんて意外に思うかもしれません。
でもここ数年は、パーツインポーターやショップが、「チューニングパーツは機能部品である」ということを、強く訴求し始めているんです。
これって国産チューニングだと、割と当然の話。
ただ国産チューニングはどうしてもその価値を表す指針として、“速さ”や“タイム”に偏りがち。
最近はストリートとのバランスを考えた現実的なチューニングもスタンダード化していますが、その傾向はもともとインポートカーの方が強かったわけです。
そして今ではその両者のベクトルが、近づいてきた。
- 富士スピードウェイのピットにて。ローアングルを狙うカメラマン氏はお腹冷えないか心配です(笑)。
素材となるクルマは、やはり走りの素性からドイツ車が多いですね。
その中でもBMWは、テッパンです。ツーリングカーとして普段使いもできて、ハンドリングが良くて、速い。
そして、未だにFR! を作り続けていてくれますから。
特にM2クーペは人気が高く、チューニングカーにはよく試乗します。
M2クーペの魅力はやはり、その全長4475 ×全幅1855×全高1410mm というサイズですよね。これってE46時代のM3(全長4490mm)よりも、短いんです。
そこに3リッターの直列6気筒ターボを積んで、スタンダードモデルで370PS、コンペティションで410PS、さらに台数限定モデルの「CS」だと450PS!
……こんなにパワーあって、いいんですかね(汗。
- TECHーMのM2クーペ。敢えてコンペティションではなくクーペを選び、エンジンチューンと軽さをバランスさせたクラブレーサーです。これは乗りやすかった!
さらにこれがチューニングカーになると、500馬力オーバーのマシンも登場します。
500馬力ですよ? 全日本GT選手権時代の、GT500クラスと同じパワーですよ!?(タイヤのグリップや、車重が違うことは置いといて)。
そんなマシンで走ると、富士スピードウェイのストレートでは260km/hオーバーの最高速が出ます。それはもう、思わず笑っちゃうほど刺激的。
もし自分が手に入れるなら……完成度の高さでM2コンペティションかなぁ? いやいや、フットワークを磨き上げるなら、エンジンの単体重量が軽いM2クーペのユーズドカーベースがいいなぁ。セッティング、難しそうだなぁ。
なんて、試乗後は妄想しちゃいます。
DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)だけじゃなくて6速MTもラインナップしているM2クーペは、そんなわけでとても人気なのです。こんなマシンをリトル・モンスターに仕上げるのは、クルマ好きにとってひとつの夢であります。
- AS SPORTのアウディS1。彼らはスーパー耐久シリーズに当初このS1で参戦することを考えていたのですが、TCR S3にスイッチしたのでチューンドカーとなりました。
とはいえ実はボクは恐がりなので、仕事じゃなければクルマにあまり速さは求めません(笑)。それより適度なパワーを目一杯使い切って走る方が好きなのですが……。
世の中にはおそろしく速くて、怖くなくて、走りがすごく気持ちいいチューンドカーがあるのです。しかもメーカー製の……!!
次回はそんなお話をしたいと思います。
(写真/テキスト:山田弘樹)
自動車雑誌の編集に携わり、2007年よりフリーランスに転身。LOTUS CUPや、スーパー耐久にもスポット参戦するなど、走れるモータージャーナリスト。自称「プロのクルマ好き」として、普段の原稿で書けない本音を綴るコラム。
[ガズー編集部]
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