『クルマは最高のトモダチ』赤パン86で自己ベスト!そのタイヤの実力は!?ライフは!?…山田弘樹連載コラム
ついにトヨタGR86(そう、今回からGRが付いたんですよ)とスバルBRZが実写でボクたちの目の前に現れました!
もちろんボクも、袖ケ浦フォレストレースウェイでプロトタイプに試乗してきましたよ。その感想は? いやー、新型はかなり面白いことになってました。
これについては次回以降にきちんとご紹介しますので、少々お待ちくださいね。
というわけで今回は、「RE-71RSインプレッション」の後編です。
前回は5月初旬のアタックにもかかわらず、42秒359というタイムを出してみごと赤パンと私の自己ベストを記録してくれたRE-71RS!
より条件が厳しくなった6月(9日の午前中に走行。気温は28℃)は、果たしてどれくらいのタイムが出たのでしょうか?
はい! なーんとそのベストタイムは、42秒510でした!
おぉぉ。
タイヤの理解度が深まったこともあるんですが、この落ち幅の少なさ、すごくないですか!?
5月との気温差は多分10度近くありますし、10周程度しか走ってない状態とはいえタイヤはユーズド。
一度熱が入った状態から丸々1ヶ月放置して走ったらベストの0.151秒落ちって……!! さすがにコンスタントラップは、0.3~0.4秒くらい落ちましたけどね。
そして肝心な「ピックアップ」(※)ですが、これは走る前に取りました!
電動スクレーパーで、取ってみたんですよ~。
でですね、これが、なかなかに楽しい。“ブーン”と振動させたスクレーパーをタイヤかすに当ててやると、“むにょむにょむにょ~”っとこそげ落ちて行きます。力を入れすぎるとタイヤ削っちゃいそうで、ドキドキします。
きっとこれ、ハマる人いると思う。
※ピックアップ:タイヤのトレッド面にタイヤかすが付くこと。これによって接地面がデコボコになって振動が出たり、グリップダウンする場合がある。タイヤかすは他車のゴムを拾う場合と、自分のタイヤのゴムが付く場合がある。消しゴムをこすったときに出るかすを想像するとわかりやすいかも。普通レコードラインを走っているときは付きにくく、ラインを外すと拾いやすい傾向があります。
ただですね、フロントの2本をきれいにしたところで、ワタクシ息絶えました(笑)。
コース1000の駐車場は照り返しでめっちゃ暑いし、きれいにしようと思うと、これが意外に時間が掛かる。
正直に言います。面倒くさくなっちゃいましたッ!
レースの現場でこれやってるメカさんたち、ほんと偉いなぁ。
トレッド面とタイヤかすの間にスクレーパーを当てて、“ブイーン”とやると、スルスルとかすが取れて行きます。フロント2本のタイヤかすを取った量はこんな感じ。
そして色々考えました。
リアタイヤもきれいにしていたら、もっとタイム出たかな? いや、リアが適度にピックアップしてたおかげで、却って旋回性が上がったのかな?
でもこれ、走るたびに毎回やるのぉ?(汗 とか。
作業自体は、何度もいうけど楽しいですよ。そしてやるなら、走らない日に余裕をもって作業した方がよいと思います。それも涼しい時間に。
実際ピックアップを取った効果はあったの? と問われると、実はそれがよくわかりません。だってピックアップした状態との比較はしてないですからね。
ただ前回走ったときの後半は多少なりともピックアップしていたと思うので、AE86に195/50R15の組み合わせだと、体感できるほどではないんじゃないかなぁ? なんとなくタイムは落ちるかもしれないけど、それより内圧変化の影響の方が大きいように思います。
少なくともスリックタイヤでピックアップしたときのような「うひゃー! グリップしないー!!」というフィーリングではありませんでした。
もっと重たいクルマだと、はっきりわかるのかもしれないな。
じゃあなぜ今回、まずピックアップしたままの状態で走ってみなかったのかというと……。
まずは「タイヤかす取り」をやってみたかったから!(笑)
あとやっぱりそのトレッド面を見ていたら、取りたくなっちゃいますよね~。理論的に考えれば、ピックアップしたままだと絶対接地面形状が悪くなるんだし。大切な走行フィー、そしてタイヤを、無駄にしたくはないですからね。
そういう意味でいうとRE-71RSは、“勝負タイヤ”かな。
シンプルに考えて、まずは「タイムが出したい!」「毎回タイヤかすを取ってでも、速く走りたい!」という人が選べばいいと思います。
だから「とにかく沢山周回して、ドライビングを磨きたい!」という人は、同じPOTENZAでもRE-004を履いた方が効率的です。
もう少し高いグリップで練習したいならADVAN NEOVA AD08Rは未だにいいタイヤだし(登場した当時は、ものすごいグリップ力でみんな驚いたんですよ)、DIREZZA ZⅢなんかは速さとアベレージバランスが素晴らしい。
そしてどれも、タイヤのかす取りはしないで済むと思います(笑)。
RE71-RSがピックアップするのはスポーツラジアルとしては異例にゴムが柔らかいからで、これもうモータースポーツでも、レースの領域に入ってますよね。
でも速いだけだったら、Sタイヤ履けばいいんじゃないの?
って思いますよね。ただSタイヤはもう少し高い荷重領域までカバーしているし、このキャパシティに併せてクルマを作り込むと、普段使いづらくなっちゃうんじゃないかな?
その点RE-71RSだと、むしろキャンバーなんか沢山付けなくても曲がるようにラウンドショルダー化されているし、ゴムが柔らかいからこそ、バネを固くしなくてもグリップしてくれる。
やっぱりストリートを走るクルマのために、考えられたスペックなんだと思います。
でも走るたんびに、毎回タイヤかすを取るのは面倒だなぁ。
いくら勝負タイヤと言ったって、Qタイヤ(※レースで予選用に使われる1周を速く走ることが目的のタイヤ)じゃないんだから、最後まできっちり使いきりたいしなぁ。
RE-71RSを耐久レースで使ったら、どうなるんだろう?
今度はピックアップを取らずに走り続けてみようかな。
とにかくまだまだ疑問は尽きません。1シーズンしっかり使い切って、理解をしてみようと思います。
でもね、一方でこのタイヤ、実はオジサンには合ってるのかな? とも思うんです。
朝一番の涼しいときに走って、暑い時間はタイヤかす取って、最後にまた気温が下がってきて走る。そのくらいのペースって現実的かもな、と思うんです。
前日からタイヤとクルマの準備をして、焦らず余裕を持って走るのもいいことです。
モータースポーツは準備こそ全て。
今回わかったのは、RE-71RSが扱いやすくて、グリップ力が高いこと。そしてピックアップもするということ。
あとはそれを、どう使いこなすかだと思います。
(テキスト:山田弘樹)
自動車雑誌の編集に携わり、2007年よりフリーランスに転身。LOTUS CUPや、スーパー耐久にもスポット参戦するなど、走れるモータージャーナリスト。自称「プロのクルマ好き」として、普段の原稿で書けない本音を綴るコラム。
[ガズー編集部]
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